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ペレアスとメリザンド(セミステージ形式)・・オペラシティ コンサートホール・・2018/8/1 [オペラ]

マルク・ミンコフスキ 指揮
フィリップ・ベジア 演出
フローレン・シオー 演出

スタニスラス・ドゥ・バルベラック ペレアス(テノール)
キアラ・スケラート メリザンド(ソプラノ)
アレクサンドル・ドゥハメル ゴロー(バリトン)
ジェローム・ヴァルニエ アルケル(バス)
シルヴィ・ブルネ=グルッポーソ ジュヌヴィエーヴ(メゾソプラノ)
マエリ・ケレ イニョルド(アキテーヌ声楽アカデミー)
ジャン=ヴァンサン・ブロ 医師、牧童
ドビュッシー特別合唱団 合唱

オーケストラ・アンサンブル金沢
  
 オケの前に廊下状に舞台を作り、背後のスクリーンに映像を映し出すという手法で行われた公演はセミステージ形式とはいえ、ミンコフスキとフランスの歌手の人達にとっては観客をドビュッシーの『ペレアスとメリサンド』の世界へ誘うには充分でした。

 アルモンド王国という架空の国の話は曖昧模糊として美しく、しかし暗く、背筋が冷たくなるような御伽噺でした。メリサンドは泉の精霊なのか?かつて泉に身を投げた王女の霊なのか?泉に沈んだのは王冠や指輪だけでなく、全てがメリサンドの魔力とも言ってよいような魅力によって泉の底に沈んでいくようであり、同時に観客は『ペレアスとメリサンド』の世界に深く引きずり込まれていったのでした。

 ミンコフスキは終演時に譜面を高々と掲げ、作曲家と作品への愛情と敬意を表していたかのようでしたが、『ペレアスとメリサンド』は初鑑賞ながら、その真髄に触れることができたような満足感が残りました。



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ジュリオ・チェーザレ・・Glyndebourne Festival ・・・2018/7/15 [オペラ]

 バーデンバーデンからグラインドボーンまでの移動はやはり少々無理がありました。バーゼルからのフライトが遅延のため指定の列車には乗れず。ただ1時間後の列車でも劇場までの連絡バスはあると書いてあったので、余裕かと思っていたところがその列車がキャンセル。慌てて駅係員に尋ねたところ直通はさらに1時間後とのこと。結局ブライトン経由で行ってタクシーでグラインドボーンへ行くことに。それでもなんとか間に合ったということで、結果オーライではありましたが、さすがにもうあちこちと行く旅程は避けたくなり、自らを欧州引きずり回しの刑に処すのもいい加減にしないといけないと自覚するにいたりました。
Conductor Jonathan Cohen
Director David McVicar
Orchestra of the Age of Enlightenment
The Glyndebourne Chorus

Giulio Cesare Sarah Connolly
Curio Harry Thatcher
Cornelia Patricia Bardon
Sesto Anna Stéphany
Cleopatra Joélle Harvey
Nireno Kangmin Justin Kim
Tolomeo Christophe Dumaux
Achilla John Moore

 クレオパトラとシーザーの話をイギリスがエジプトを支配していた時代に置き換えた演出は楽しい趣向満載のコメディ仕立て。2005年初演なので10年以上経っているのですが、人気グループのパフュームのように歌手がダンサーと一緒になって踊りながら歌う場面など、まだまだ新鮮な面白さを保っているプロダクションでした。
 ヘンデルは古楽の中でも歌手の歌唱技術を堪能できるのが醍醐味ですが、それもダンサーと3人で同じ振付で踊りながら小気味よく聴かせてくれたのがクレオパトラ役のハーヴェイ。声質、声量共にアジリタを要するところでもそうでないときと全く変わらずスムーズに歌いこなし、キュートで活き活きとした様が好印象でした。
 同様にダンサーと3人組になって振付つきで歌ったのがCTのキム。いままで聴いたのは凛とした男性の役で、歌も非常に男性的で男前歌唱と表現したくらいですが、今回はオネエ系の設定で歌もソフトでほんわか。今までとは全く異なる印象だったのが好感度アップ。歌うところが少なくて残念に思えたほど。
 もう一人のCTデュモーは聴くたびに声の密度が高くなっていて6年前に初めて聴いたときのことを思い起こせば今や全く別人といってよいくらい。演出上、プッツン系悪役だったのがハマリすぎで、常日頃鍛えているらしく開脚ジャンプに側転と身体能力の高さでも観客を楽しませてくれました。
 タイトルロールのコノリーは初演時からこの役を歌っているということで完全にものにしている感があり、見た目は完璧に男性。ただアジリタになると声量が落ちるのが若干気になったところ。今まで聴いたことが多いわけではないので何とも言えないところですが、最近はワーグナーも歌っているので過渡期なのかもしれません。
 セスト役のステファニーも見た目は青年そのもの。母親役のバードンと二人、コメディ風演出の中でも悲劇的部分の味わいを担って好演。
 指揮はクリスティーが執る公演もあったのですが、この日はコーエン。イギリスの古楽界で活躍している若手のようですが、チームワーク良く公演の要の役割をしっかりと果たしてました。

 この日はワールドカップの決勝の日。バーデンバーデンからの移動であたふたとそれどころではなかったのですが、カーテンコールでデュモーが国旗を片手にはしゃぐように現れたことでフランスの優勝を知ることとなったのでした。

 初めてのグラインドボーン行きは難儀しながらも、タクシーの人も劇場の係りの人も親切で助かりました。ちなみにルイス駅からグラインドボーンは定額15ポンド。帰りはバスで帰ることができました。



 

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魔笛(コンサート形式)・・・Festspielhaus Baden-Baden・・・2018/7/14 [オペラ]

 本当は11日に鑑賞予定にしていたところが、何故かフォークトが11日だけ降板。その前にベルリンーパリのフライトを取ってしまったため、パリにはいかないわけにもいかず、この次の日15日にはグラインドボーンまで行ったのですから、とんでもない旅程になってしまいました。バーデン・バーデンからグラインドボーンまで行く手段がなければこの公演はパスだったのですが、バーゼルからガトウィックへ飛ぶフライトを見つけてしまったのが運が良かったのか悪かったのか?。詳細は次回。
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Yannick Nézet-Séguin DIRIGENT
Rolando Villazón PAPAGENO
Regula Mühlemann PAPAGENA
Franz-Josef Selig SARASTRO
Albina Shagimuratova KÖNIGIN DER NACHT
Christiane Karg PAMINA
Klaus Florian Vogt TAMINO
Tareq Nazmi SPRECHER
André Eisermann ERZÄHLER
RIAS Kammerchor
Chamber Orchestra of Europe
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 コンサート形式ですが、通常の上演と違って途中カットがあり、それを補うように俳優さんによる語りが入るという上演でした。

 フォークトがタミーノを歌うことなどもうないかもしれないと思って聴きに来た公演ですが、キャスト表を見ての通り、この二人が同じ演目で歌うことがあるのかというキャスティングです。
 不思議くん、ユニコーン、超サイヤ人など数々の名声をほしいままに・・・もとい・・・[猫]が勝手にそう呼ばせてもらっているフォークトが、もし超サイヤ人までパワー全開するとミスター豆は吹っ飛ぶか潰れてしまうか。それでなくてもこの劇場、ワーグナー歌いとそうでない人では声の通り方の違いが歴然としてしまうところ。結局、フォークトとゼーリッヒ、それにワーグナー歌いではありませんがシャギムラトヴァの三人のソロは明らかに他の人達と違ってサイヤ人。それに今回の席が上から覗き込むような席だったこともあり、フォークトの長い金髪が目立って、歌は超サイヤ人とまではいかないまでも、見た目は超サイヤ人だなーと思って見てました。それでも重唱では三人共他の人達に合わせて、調和の取れた重唱を聴かせてくれたので、ミスター豆は吹っ飛ぶことも潰れることもなかったのは言うまでもありません。
 バイエルンの『カリスト』で豊かな声を聴かせてくれたカルクでさえ、今回は普通のソプラノに思えてしまいましたが、前半はパパゲーノとの重唱が多かったせいもあるかもしれません。それでも丁寧にコントロールされた歌唱で、フォークトとの重唱は若々しい清々しさで理想的なパミーナ&タミーノでした。
 シャギムラトヴァの夜の女王は前半のアリアこそ若干ピッチコントロールに苦労していた感がありましたが、後半のアリアは完璧!聴きに来た甲斐があったというほどお見事。
 パパゲーノはコミカルな演技が見せどころ。その辺を狙ってのミスター豆の起用としか思えませんでしたが、ロールデビューのようで譜面は手放せない様子。大御所を見習ってバリトン役に挑戦というのもいかがなものかとしか書きようがありません。
 この日は収録があったようでマイクが並べてあり、3人の少年達がマイクの高さに合わせるために踏み台持参で登場していたのが微笑ましく、歌も最高でした。

 ネゼ=セガンの指揮の演奏はミステリアスでファンタジックな柔らかさと活き活きとした躍動感が場面ごとに変容するさまが面白く、さまざまな面で普通とは異なる『魔笛』は新鮮に楽しめた公演でした。
 
 



 
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