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ドン・パスクワーレ [METライブビューイング]

Don Pasquale / Gaetano Donizetti

Production: Otto Schenk
Conductor: James Levine
Norina: Anna Netrebko
Ernesto: Matthew Polenzani
Malatesta: Mariusz Kwiecien
Don Pasquale: John Del Carlo

おもしろいです。
でも途中なんだか年寄りを虐めてるみたいで胸が痛くなってしまいました^^;
これは喜劇ですが、教訓でもあります。
今の世の中にもずるがしこい連中はウヨウヨ・・・騙されないように気をつけましょう・・・・特にご年配の方々。

まぁ、この話はなんとかノリーナとエルネストを結びつけようというマラテスタの策略で、悪気のないハッピーエンドの喜劇ですが・・・。

聴き所はなんと言ってもデル・カルロとキーちゃん(キフィエチェン)の早口2重唱。
ライブビューイングでアンコールまで聴けるなんて最高!

デル・カルロは巨体をオロオロ、オタオタさせて汗だくの熱唱、熱演。
モサっと不器用そうなのですが、それがイイ味をだしていて、タイトル・ロールとして存在感タップリです。
すごく人が良さそうなので、こういう人を虐めちゃだめだよ・・・って思ってしまうんです。

ドタバタの仕掛け人、マラテスタ役のキーちゃん・・・最高にトボケまくってます。
キーちゃんを好きな理由はキャラ、と書いたことがありますが、いつも地に足がついて堂々と・・・ふてぶてしいと思う時もあるほど^^;・・・クールなのですが、サラッとさりげなく役にハマっているのです。
地でやっているのじゃないかと思うくらい・・・。
ドンジョの時にはキーちゃんは昔番を張っていたに違いない・・・と、
今回は今回でキーちゃんはトボケたヤツに違いない・・・と思ってしまうわけです^^;
根っからの役者なのでしょう。
ベルカントの歌唱技術も聴かせてくれてますが、来シーズンはダムラウ、フローレスと一緒に「愛の妙薬」の予定とか・・・[猫]としてはかな~~~り悩ましいことに・・・・そりゃ行きたいにきまってますが・・・。

ノリーナのネトレプコ、やはりコメディはめちゃイケ。
天真爛漫というか自由奔放というか・・・こちらも地でやっているようです^^。
そのおおらかな演技や歌声は魅力にあふれます。
しかし、このまま年取ると肝っ玉かあさんみたいになっちゃいそう・・・。
もう少しシェイプしたほうが良いかも^^;2月にMETで同じメンバーで再演が予定されてます。
キーちゃんは事も無げにヒョイッとネトレプコを振り回してましたが、ギックリ腰になるといけないし・・・・。

ポレンザーニはトリノの来日時の舞台姿よりポッチャリ、丸く見えます。
エルネストという役柄自体、ドタバタの蚊帳の外といったところで、ちょっとオマケのようになりそうですが、柔らかく、優しい声で熱唱・・・とっても良いオマケ・・・・いえいえ、オマケなんて言ったら失礼です。
ポワっとした感じのエルネストでネトレプコのノリーナとはお似合いのカップルです。

演出がちょっと派手に虐めすぎじゃない?というところはありますが、4人の登場人物の息もピッタリ、重唱も素晴らしく、楽しめました。

そしてレヴァインが杖をつきながらもお元気そうだったのがなにより嬉しいことです。
序曲の楽しそうな指揮ぶりがとっても印象的。
日本でもお元気な姿を見せてくれますように・・・。

ボリス・ゴドノフ [METライブビューイング]

ボリス・ゴドノフ / ムソルグスキー

Production: Stephen Wadsworth
Conductor: Valery Gergiev
Marina: Ekaterina Semenchuk
Dimitri: Aleksandrs Antonenko
Shuisky: Oleg Balashov
Rangoni: Evgeny Nikitin
Boris Godunov: René Pape
Pimen: Mikhail Petrenko
Varlaam: Vladimir Ognovenko

観てから随分経ってしまい、今更の感想になってしまいました・・・^^;

上演が終わると前列にお座りの方が
「なんじゃこりゃ!・・・ダメだよ、こんなの・・・オペラはフィガロのように楽しくなくちゃ~~~。」

ん~~~~・・・・・その気持ち分からないでもない・・・・・・・・
今回はライブビューイングの限界を強く感じる結果となりました。

初めての映画館で鑑賞したのですが、いつにも増して音楽がペッタンコに聴こえました。
これは映画館の違いというより、さんざん実演鑑賞して帰国した次の日に観にいったからかと・・・。
音楽の力強さが皆無、塗り壁のように表情なく聴こえてしまいました^^;
[猫]はドレスデンで初稿版「ボリス・ゴドノフ」を鑑賞したことがあります。
戴冠の場での音楽と重なった民衆のコーラスは天まで届くような力強さと輝きがありましたが、ライブビューイングではその感動を味わうのは残念ながら無理・・・・。

初稿版はボリスの死で終わるのでボリスに焦点があてられます。
今回の公演は歴史絵巻の醍醐味、壮大さはありますが、音楽に表情のない映像では、初稿版にはない最後の民衆の暴力シーンがアップになるだけ実演鑑賞より生々しく、視覚的に嫌な印象だけが残ります。

それでも出演者達は素晴らしく、見応え聴き応えがありました。
タイトル・ロールのパーペ、聖愚者のポポフが特に良い!
パーペはこの収録時はまだ消耗しきってないようで、ミラノでヴォータンを歌うつもりだったようですね。

一番気になった、というか疑問が残ったのはグリゴリー、偽ディミトリー役のアントネンコ。
テノールとして魅力ある安定した歌声に思いましたが、五月人形のように硬い表情・・・妙なカリスマ性が・・・・それが良いのか悪いのか?
インタビューでグリゴリーはクレイジーだといいながら、そのクレイジーさを表現していたのか?
まるで最後は本物のディミトリーのようでアントネンコが主役の公演とさえ思えてきました。
確かにカリスマ性がなければ民衆を扇動するほどの力は持てないでしょう。
そういった意味では素晴らしいグリゴリーだったと言えるのですが、公演を観ている観客にまで彼は本当のディミトリーと思わせてしまっているようで、これでいいのか?と思ったのです。
これもアップになるライブビューイングだから出てくる疑問かもしれませんね。

シュイスキー役のバラショフもちょっと物足りない・・・・。
でもこの役は黒幕のような存在で一番難しい役どころですね。

指揮者から出演者までパーペ以外ロシア人キャスト、実演で観たい公演です。

ラインの黄金 [METライブビューイング]

Production: Robert Lepage
Set Designer: Carl Fillion
Costume Designer: François St-Aubin

Conductor: James Levine
Freia: Wendy Bryn Harmer
Fricka: Stephanie Blythe
Erda: Patricia Bardon
Loge: Richard Croft
Mime: Gerhard Siegel
Wotan: Bryn Terfel
Alberich: Eric Owens
Fasolt: Franz-Josef Selig
Fafner: Hans-Peter König

45トンのセット・・・舞台まで補強の必要があったとか・・・・。
この巨大南京玉簾・・・・これは構造が違いますね^^;・・・巨大電動スノコみたいなのはなんと言ったら良いか・・・・微妙・・・。

確かにラインの乙女達が水の中で戯れている様子、階段状に変化する不思議な空間、最後の虹の橋も印象的で、METでしか味わえないであろうスケールの大きさがあります。
でも臆病者、心配性の[猫]はあれが壊れて落ちてきたらどーするの・・・あの下で演技したり歌ったりなんて嫌だなーなんて要らぬことを考えてしまいました^^;もちろん安全性はしっかり確保されているのでしょうが・・・。
今後リングを通して使用されるそうなので他の作品でどんな変化を見せるか?期待しましょう。
ある意味エコなセットかもしれませんが、元が取れるのか?
これを保管しておく場所があるというのアメリカMETならではです。

レヴァイン指揮の演奏は緊張感を保ち、さすがという面はあったのですが、歌手の人達が全体的にお行儀良い、真面目な印象・・・。

そんな中、ミーメ役のジーゲルとファーゾルト役のゼーリヒは一味も二味も違った表現力です。
観る前にどの役をドイツ人が歌っているか確認しませんでしたが、この二人は明らかに違うのですぐわかります。
やはり母国語がドイツ語というのは、言葉一つ一つに自然に感情がこもり、説得力のある歌い方になり、演技も細かなニュアンスまで伝えることができるのでしょう。
二人とも上手に歌っているということ以上に、ファーゾルト、ミーメがいると思わせてくれるのです。

この二人が登場したことで、他の人達が歌の内容に沿った演技、表情をしていても物足りなさがあることをはっきりと意識してしまいました。
歌全体の意味は理解して感情を込めて歌っているのですが、ワグナーの楽劇というより、他の歌劇のよう・・・。

これは主要登場人物がドイツ人で固められたスカラの「ラインの黄金」と大きく異なるところで・・・実演とライブビューイングでは印象が違うのは当たり前で安易に比較することはできないのですが、ライブビューイングのようにアップが多いとその物足りなさがより鮮明にわかってしまいます。

ただ一人、ドイツ人じゃなくてはダメということは決してないということを証明したのはブライズです。
[猫]が5月に観たスカラのゾッフェルのフリッカよりずっと表現力があり、ゾッフェルがスカラでブーイングをもらってしまったのも仕方ないかも・・・と思えてしまいました。

他3人の主要登場人物アルベリヒ、ローゲ、ヴォータンはワーグナーの楽劇の雰囲気ではなかった。

アルブレヒのオーウェンズはまだ若いようなので、ベテランのクレンツルのような姑息で凄みのあるアルブレヒを要求するのは酷というものですが、今後ワグナーを歌っていくとすれば、その辺が課題となるのでしょう。

ローゲ役のクロフトは上から吊られて体を斜めにしながら長い間歌わなくてはいけないので、かなり消耗するのではないでしょうか?汗だくの表情ですごく頑張っていたと思います。
しかしカーテンコールでのブーイングは厳しい・・・ライブビューイングでは歌手の声を良くひろいますから、実際の劇場でどう響くかというのは分かりませんが・・・・。

ヴォータンのターフェルはもっと剛胆なヴォータンかな?と勝手に想像していたのですが、意外と大人しい・・・・威厳を出したかったのか?
「ワルキューレ」を楽しみにしましょう。

ヴォイトがブリュンヒルデのロールデビューだそうですし・・・。
でも「ワルキューレ」のライブビューングは5,000円て・・・[猫]はちょっと値段の下がるアンコール上映にしようかなーんて考えちゃってるわけ・・・セコイ^^;


アイーダ [METライブビューイング]

Aida / Giuseppe Verdi

Conductor:Daniele Gatti
Production: Sonja Frisell

Aida:Violeta Urmana
Amneris: Dolora Zajick
Radamès: Johan Botha
Amonasro: Carlo Guelfi
Ramfis: Roberto Scandiuzzi
The King: Stefan Kocán

ガッティ指揮の「アイーダ」はミュンヘンで、ウルマーナ、ボータの「アイーダ」はスカラ来日公演で聴いてます。
このライブビューイングは見なくてもいいかな?とも思ったのですが、演出が豪華そうなのと、スカラ来日公演では「ドン・カルロ」のエボリを演じたザージックのアムネリスを聴いてみようと行ってきました。

スカラの演出も華やかでしたが、さらに一回り豪華にした演出で本物の馬も登場します。
劇場で見たらもっと感動することでしょう。

豪華な衣装を身に付けて歌うだけでも体力勝負でしょうが、主要登場人物3人がそれはそれは立派な体格でその姿だけで迫力!!!
3人とも立派なのでバランスがとれてました。

ボータは日本公演では最初の「清きアイーダ」でやや不安定さがありましたが、今回は最初から最後まで好調。ライブビューイング収録ということで気合の入れ方が違ったかもしれません。

ウルマーナは日本公演で実際に聴いた声と少し違う印象でした。実際に聴いた時の方がリリックで憂いがある印象でしたが・・・・?これで実際に聴いた声と違うと思った人は3人目です。
今回もきれいな歌唱でしたが、実際に聴いた時の方が胸に沁みるものがあったように思います。

ザージックは20年間この役を歌い続けているそうでうが、高音に伸びのある迫力の歌唱で嫉妬と苦悩の表現力はさすがです。特に4幕審判の場面は聴き応えがありました。

アモナスロ役グェルフィも品格のある声で、無念の情と雪辱を期す内面が伝わる歌唱でなかなか良かったと思います。

ガッティ指揮の演奏の印象は実際に聴いた時と同じく、「凱旋の場」は華やかで誇らしい演奏です。それがその後の悲劇を対比的に強調しているように思え、メリハリのあるドラマチックなものだったと思います。

早い話が演奏も歌も素晴らしく、場面ごとに引き込まれることは多かったのですが・・・・終わってみると何故か満足感がそれ程残りませんでした。

それが実演とライブビューイングとの違い・・・実演ほどの感動は味わえないということなのかもしれませんが・・・・・
自分自身の聴く姿勢という方がもっと問題なのだと思います。

ご近所ルックで気軽にフラッと映画館に行くのと、それなりにオシャレして劇場に行くのでは聴こうという意欲に差があります。
最近たいして働いてないのでお疲れモードじゃないはずなのに、ダラーッとして途中眠気に襲われました^^;

演出が違うとはいえ既に鑑賞したことがある演目、出演者だったので期待値も低く、実際新しい発見が少なかったせいかもしれません。

[猫]はただの新しいもの好きか?・・・・後でゆっくり考えるとしよう。
もしかすると「アイーダ」はあまり好きな演目ではないかも?・・・・・これも後で考えるとしよう。

ところでライブビューイングを見ていて時々思うのですが、カット割りが煩わしいときがあります。
今回特にそれを感じたのはダンスシーン。
新しい振り付けにしたということで、振付師にインタビューまでしているのに、カット割りが早すぎて全体の振り付けの流れの美しさがわかりません。踊りのダイナミックさを強調したくてカットを頻繁に変えてるのかもしれませんが、落ち着きなくイラッとしてしまいました。

その為ダンスシーンはスカラ日本公演での子供達とスカラ座バレー団の踊りの方がずっと素敵に思えました。


トスカ [METライブビューイング]

Tosca / Giacomo Puccini

Conductor Joseph Colaneri
Production Luc Bondy

Tosca Karita Mattila
Cavaradossi Marcelo Álvarez
Scarpia George Gagnidze

オペラ旅行する時はパーペ、フローレス、グルベローヴァの公演を一番の目的に、その前後の公演をいくつか見ることにしてますが、やたら縁のある人と全く縁のない人がいます。
やたら縁があるのがダムラウとフィリアノーティ。追っかけているパーペが3回、フローレス、グルベローヴァは2回しか聴けてないのに、この2人は3回も聴いてます。
聴いてみたくても全く縁のない人はテノールではマルセロ・アルバレス、アラーニャ、クーラ。クーラは昨年1月にお父上の逝去でキャンセルとなってしまってから機会なし・・・残念。

最近オコモリに徹して灯台下暗ししてるので、METライブビューイングもどうでもイイかってな感じになりかけてたのですが、マルちゃんは聴かなくちゃ!と行ってきました。

さて本題・・・
演出が不評で初日はブーイングだったそうですが、セットも衣装も普通じゃない?それ程ひどくないんじゃない?と最初は思いました・・・・が・・・・舞台が進むにつれ・・・・この演出・・・問題はそういうことではなく、トスカの人物像と信仰心の欠落にあるのでは?というのが見終わっての感想です。

悪人スカルピアは確かに悪いヤツだったけど、トスカってその上を行ってない?と思ってしまいました・・・^^;
まず嫉妬心からマグダラのマリアの絵を切り裂いてしまうヒステリックさが強調されたところからして!?!
「歌に生き、愛に生き」を歌いながらナイフを手に取る?!?
スカルピアを殺した後ソファーに横たわり、してやったり・・・とばかりに扇子であおぐ!?!
サンタンジェロ城の場面では、こうして殺してしまったというポーズの執り方・・・もしかして昔番張ってた?
最後に兵士に追われて塔に追い詰められるのに手招きしてから蹴りをいれる!?!これって追い詰められた悪党が開き直りながら自殺する場面と一緒!!!
この歌姫トスカは番を張っていたのに違いない!!!
マッティラの歌唱の方は1幕はちょっと不安定。2幕以降は安定してきたようですが、演技、演出もあってちょいと強すぎるトスカでありました。

スカルピアのガグニーゼはウーシタロ降板で代役とのことですが、頑張ってました。歌唱もしっかり、充分に嫌なヤツでしたが、トスカのほうが上行ってしまった?・・・^^;
演出ではマリア像へのキス・・・信仰心の欠落を感じる象徴的場面・・・いかがなものか・・・?
トスカの演技、演出にも感じられた、この信仰心の欠落が同時に品格を失っているように思いました。

お目当てのマルちゃんは終始絶好調!「星はきらめき」も美声で情熱的!!!ブラボー!!!
カーテンコールでマルちゃんが出てきたら場内からも拍手が聞こえました。
来年7月のトリノ来日公演が楽しみ!!!であります。

こちらもレバインの代役となったコラネリ指揮の演奏は緊張感があり引き寄せられました・・・が・・・・トスカの昔番張ってました疑惑の演技、演出のたびにアレ?!?という公演でした。

トスカの演技、演出を変えるだけでも随分違った公演になると思うのですが、今後リバイバルされていく中で変わっていくかな?変えた方がいいんじゃないかな?でした。

セビリアの理髪師 [METライブビューイング]

IL BARBIERE DI SIVIGLIA / Gioachino Rossini

conductor: Maurizio Benini
Production: Bartlett Sher
Figaro: Peter Mattei
Almaviva: Juan Diego Flórez
Rosina: Joyce DiDonato
Bartolo: John Del Carlo
Basilio: John Relyea

METライブビューイングのアンコール上映ももうすぐ終わり。
4演目セット券を購入したのですが、最後に選んだのはMET PLAYERで既に見た「セビリアの理髪師」。
どうしても大画面で見たかったのです。

「セビリアの理髪師」は今年7月にロンドンで素晴らしい公演http://kametaro07.blog.so-net.ne.jp/2009-07-13を鑑賞することができましたが、こちらは3年前の公演。

演出はさすがに大きなMET使用、オーケストラボックスの前方周囲にも舞台を作り、動きのある楽しいものです。
登場人物の個性もより強調され、ロンドンの演出より出演者達の演技も大振りです。

その為、全体の印象として比較するとロンドンはかわいらしく軽快、METはおおらかで大袈裟なおもしろさがあります。

フローレスはロンドンの演出に比べるとずっと楽しそうに演技をしているように見え、カツラがはずれるというアクシデントもさりげなく笑いに変えてます。
ただ動きが少ない分、歌唱はロンドンの方がゆるぎないものだったような気がします。これは3年たってさらに歌唱に磨きがかかったということもあるかもしれません。
最後のアリアの後のブラボーと拍手はこのMETでも長いものですが、ロンドンではこの倍ぐらい続いたような?
もしかするとこのライブビューイングは短く編集してるかもしれませんが・・・・?

ディドナートの歌唱技術はこのライブビューイングでも素晴らしさが伝わりますが、ロンドンで聴いた時の方がまろやかでこちらも更に磨きがかかったという印象が残っています。
それにロンドンの黄緑色のワンピースとリボンがついたショッキングピンクのハイヒール姿の方が似合っていてカワイイ!!!
でもこのハイヒールのせいで転んで骨折するというアクシデントになってしまったので、衣装さんには今後ハイヒールには滑り止めを靴裏にしっかり張っておくようお願いしたいものです。

フィガロはロンドンのスパニョーリが自然な軽快さでスマートな印象だったのに比べると、マッちゃん(マッテイ)はライブビューイングの中でも司会者が言ってましたが、強くセクシー、豪快でおおらかです。
やっぱりマッちゃんは実際に聴きたい!!!
全体のおおらかな印象もマッちゃんとバルトロ役のデル・カルロ、この2人の大柄な登場人物の印象から来るということもあると思います。
「マクベス」で大柄だと思っていたルチッチよりレリエーの方が大きくて驚いたのですが、マッちゃんとデル・カルロはさらに大きい!!!こうなるとフローレスって相当小柄なの?ということになってしまいますが、それでも170cm以上はあるという記憶がありますが・・・・?

バルトロ役のデル・カルロ、大きな体で汗だくの名演です。
歌唱がもしかして一杯一杯?と思った部分もありましたが、それもご愛嬌。
ロンドンの小柄でちょっと姑息な感じがしたコルベリのバルトロも味がありましたが、大柄でどこかマヌケな感じのバルトロも憎めず、イイ味があります。

バジリオ役のレリエー、METライブビューイングの常連ですね。
ロンドンのフルラネットはその恐おもしろさ!最高!のバジリオ・フランケンシュタイン・ヴァージョンでしたから、この大御所と比べてはいけないでしょう。
レリエーも充分に存在感のある歌唱で、怪しく、トボケていてイイカゲンなバジリオです。

無言の召使いの演技もこの演出のスパイスです。

ベニーニ指揮の演奏、このおおらかさを感じる演出に合っていて、なおかつロッシーニの軽快さを損なうものではなく良かったと思います。
同じMETライブビューイングのチェネレントラもベニーニ指揮でしたが、このちょっとおおらかさを感じるようなロッシーニはベニーニお得意でしょうか?

またまた比べながらの感想となってしまいましたが、どっちも素晴らしい公演に間違いはありません。
ただ演出は劇場の規模もあって、METの方が見ごたえあるものだと思いました。


三部作 [METライブビューイング]

IL TRITTICO / Giacomo Puccini

Conductor: James Levine
Director: Jack O'Brien

外套 Il tabarro
Giorgetta: Maria Guleghina
Luigi: Salvatore Licitra
Michele: Juan Pons
Frugola: Stephanie Blythe

修道女アンジェリカ Suor Angelica
Suor Angelica: Barbara Frittoli
La Principessa: Stephanie Blythe
Genovieffa: Heidi Grant Murphy

ジャンニ・スキッキ Gianni Schicchi
Gianni Schicchi: Alessandro Corbelli
Rinuccio: Massimo Giordano
Lauretta: Olga Mykytenko
Zita: Stephanie Blythe

三部作とは何ぞや?
と思って鑑賞前にWikiで調べてみました。
この3つの作品が何に由来しているか諸説あるそうですが、そのひとつがダンテの「神曲」。
・・・・・・・
3つの作品が地獄篇、煉獄篇、天国篇にそれぞれ対応する、との分析がある。もっとも、『ジャンニ・スキッキ』は天上の哲学的な歓喜とは無縁の人間臭いユーモアであり、ダンテまで持ち出すのは穿ち過ぎではないか、との批判もある。
・・・・・・・
それでも何故か「神曲」が頭にすり込まれての鑑賞となりました。

さて「外套」から・・・・
「マクベス」で見たばかりのグレギーナ、頭の中にこびりつきそうに思えた程のインパクトでありましたが、今回は全く別人。意外に演技上手なんだなーと思ってしまって・・・これって失礼ですね。
子供をなくし、夫婦関係に疲れてしまった空しさ、心の隙間を埋めるように新しい恋に落ちていくとまどい・・・表現されていると思いました。
リチートラも情熱的な一途な青年で歌唱もせつなさがにじみでてます。
何より圧巻なのはポンスのやるせなさと怒り・・・・来日公演の「アイーダ」でも一際光っていましたが、この作品でもゾクっとする演技と歌唱です。
ブライスは良く響く声で存在感タップリ、一人3作品通しで出演ですが、他の2作品でも全く違うキャラを演じ分けながら、素晴らしい歌唱を披露してます。
演出はパリ、運搬船の停泊するセーヌ河畔、夕暮れ時から深夜のシーンですが、うらぶれた空気が漂い、・・・・とっても暗い雰囲気の中の悲劇。重すぎる・・・・まさに「地獄篇」でした。

「修道女アンジェリカ」
こちらはフリットリの名演で涙・涙
来日公演「ドン・カルロ」のエリザベッタでこの上なく美しい歌唱を披露してくれましたが、エリザベッタ役では凛としすぎて淡々と感じてしまった部分もありました。
しかし、表情まで映し出されるライブビューイングでその迫真の演技にも魅せられました。
舞台セットの美しさがこの作品の見所のひとつでもあります。
特に最後の救済の場面、神聖な透明感のある美しさには心洗わされます・・・「煉獄篇」です。
Wikによるとこの作品、プッチーニは一番気に入っていたにもかかわらず、三部作の中では一番評判が悪く、他の2作品に比べて上演の機会が少ないということですが、この作品は出演するソプラノに寄るところが大きいのでしょう。
今回はフリットリの名演と演出によって、3作品の中で一番印象に残るものになっていたと思います。

「ジャンニ・スキッキ」
「天国篇」というより「天国へ逝ってしまったジイサン!どうしてくれるのよ!!!篇」
ドタバタ喜劇でありながら、どことなくほんわかとオットリ感があったのはレバインの指揮のせいか?それともこれがプッチーニの喜劇なのか?
今回のコルベリはなんだか頭の良い、スマートさを感じるオヤジ・・・・もちろん歌唱、演技とも文句なしでこの喜劇の要です。
テノールの青年がイイ歌唱してるじゃない・・・誰?と思ったらマッシモ・ジョルダーノ?!以前見た写真とぜんぜん違う人に見えて気がつきませんでした。
「私のお父さん」を歌ったソプラノはどーってことないような?このくらい歌える人他にもいるでしょうと思ってしまいましたが・・・。
他の出演者達のキャラがそれぞれ濃く、歌唱もなかなかで楽しめるものになっています。
演出はいかにもイタリアの名家の一室という趣があるセットですが、最後にセットが下に動き、フィレンツェの街の背景が現れます。
そう場所は華の都フィレンツェ!!!ダンテじゃありませんか!!
しかも劇中で罪を犯したものはフィレンツェ追放の罰と言ってますが、ダンテは政争でフィレンツェを追放され、2度とフィレンツェに足を踏み入れることなく没しています。
それが何か???・・・・穿ち過ぎ???・・・・でしょうかね?

でも[猫]のように連想ゲームしちゃう輩ってこれからもいるに違いないと思うので、Wikiから「神曲」説が消えることはない気がします。

[猫]はなんだかフリットリとベアトリーチェが重なってきちゃったりして・・・・・・・・この想像力、イケテル?イカレテル?

ところでレバイン指揮のオケの演奏ですが、「ジャンニ・スキッキ」だけでなく「外套」でもちょっとマッテリと感じる時があって、あやうくお疲れ居眠りモードにはいってしまいそうな部分がありました。
そこがちょっと気になったところではありましたが、とても素晴らしい公演に思いました。

ライブビューイングでも言及してましたが、これだけ素晴らしい演出、歌手陣で三部作ができるのはMETしかないでしょう。

今シーズンはブライスが再度3演目出演する他、あの「蝶々夫人」のラセットがソプラノ役を3演目出演、ポンスに代わってルチッチで三部作となります。
こちらもすごく良さそう!!!です。


マクベス [METライブビューイング]

Macbeth / Giuseppe Verdi

Conductor: James Levine
Director: Adrian Noble

Macbeth: Željko Lucic
Lady Macbeth: Maria Guleghina
Banquo: John Relyea
Macduff: Dimitri Pittas
Malcolm: Russell Thomas

ドレスデンで聴いて以来、ルチッチを聴いてません。

ルチッチを聴きたくてこのライブビューイングを見に来たのですが、ルチッチの声が実際に聴いた時より一回りコンパクトに聴こえました。
これはオペラハウスの音響の違いなのか、ルチッチ自身のコンディションなのか、HD制作時の音声の問題なのか???
今までHDで聴いた声と実際に聴いた声と違うという印象を持ったのはネトレブコ・・・実際に聴いた声の方が籠もっているように感じました・・・・この時は彼女のコンディションのせいかと思ったのですが・・・?

ルチッチはHDでも充分イイ声ではありますが、実際に聴いた声はもっと深く響いていた印象が残ってます。

もうひとつ、ドレスデンではルチッチ一人大柄に見えたのが、今回は普通・・・・レリエーってどれだけ背が高いのでしょう???グレギーナも大柄、他の出演者も大柄な人が多いのにはちょっとビックリ。

ルチッチにはマクベスはハマリ役と思ってましたが、正にその通りでした。
妻に振りまわされ、悪の連鎖から抜け出せなくなってしまった焦燥感、限りなく湧き出る不安、狂気と正気の狭間を行き交う精神状態を表現する歌唱、演技は見事です。

マクベス夫人のグレギーナもハマリ役。
ちょっと息継ぎが気になる部分はありましたが、そんなことはどうでも良いという迫力の演技と歌唱。
マクベス夫人の野望と最後に陥る狂気は迫るものがあります。
マクベスより目立っている感がありますが、原作でもマクベス夫人のキャラの方がインパクトが強いので、原作のマクベス夫妻がそのまま舞台で表現されているように思いました。

レリエーはHDでしか聴いたことがないのですが、今回も安定した歌唱、演技も上手。

今回の発見はマクダフのピッタス。涙をみせる演技力でまず驚いたのですが、涙が出るほど気持を入れたら歌唱に影響すると思うのですが、とっても胸にしみる美しいアリア「ああ父の手は」でした。

演出は20世紀に置き換えても全く違和感なく、かつスコットランドの暗く寒々とした雰囲気はこの物語に相応しいものに思えました。

美しくも緊張感のあるレバイン指揮のオケの演奏はよどみなく流れ、素晴らしいものです。


ヘンゼルとグレーテル [METライブビューイング]

Hansel and Gretel / Engelbert Humperdinck

Conductor: Vladimir Jurowski
Director: Richard Jones
Hansel: Alice Coote,
Gretel: Christine Schäfer
Witch: Philip Langridge
Peter: Alan Held
Gertrude: Rosalind Plowright

METライブビューイングのアンコール上映が始まり、今月はオコモリ状態でもいられません。

ところで「ヘンゼルとグレーテル」ってどんな話だったっけ????
「青い鳥」は?・・・チルチル、ミチルか?・・・これもどんな話だったっけ???
「ヘンゼルとグレーテル」はお菓子の家!!!・・・・でもどんな話だったっけ???

普通それでも見ればあーそうそう!と思い出すのが普通ですが、見終わって・・・こんな残酷な話だったっけ???
全くスッカラコッキリ病は進行の一途で困ったものです。

作曲家エンゲルベルト・フンパーディンクってプレスリーと同時期に活躍していたポップスターの名前だけど・・・まさか同一人物とは思えません。
Wikiで調べたら歌手のフンパーディンクは作曲家フンパーディンクの名前をパクッたとのこと・・・・そりゃ同一人物のわけありませんね^^;
聴いてみると馴染みのあるメロディーが流れ・・・・これってフンパーディンクの曲だったんだ・・・知りませんでした。

演出のリチャード・ジョーンズはミュンヘンの新作「ローエングリン」大工ヴァージョンの演出をした人だと思いますが・・・・この「ヘンゼルとグレーテル」は開いた口が真ん中にある赤い幕と血を連想させる赤いソースがついたお皿の幕はちょいと気色悪いのですが、森のシーンはなかなかファンタジック。
特に声と姿の合わない眠りの精、思いっきり頭でっかち太っちょシェフ軍団はイケテル。
しかし魔女の家の中のシーンは食べ物をグチャグチャにしすぎ・・・教育上よろしくない。

シェーファーは清々しさを感じる声で伸びやかな癖のない歌唱、演技も雰囲気も少女です。
クーテもミュンヘンでオルシーニ役だった時とはガラリと雰囲気を変え・・・少し落ち着きのない男の子。
この二人のハーモニーがきれいに心地よく響きます。

両親役の二人は演技も歌唱も納得、それに二人とも大柄でシェーファー、クーテが本当に子供のように見え、適役です。

魔女はテノールのラングリッジ・・・なんだか普通のオバチャンでそんな悪そうに見えないんですけど・・・・・歌唱と演技、演出で不気味さが出てきます。
それでもオーブンで焼かれちゃうなんて!!!・・・ひどい・・・ひどすぎる!!・・・そういう話だから仕方ないけど・・・ブツブツ。

子供もたくさん会場で見受けられましたが、残酷なイメージは持たないのでしょうか??
子供の頃はヘンゼルとグレーテルが助かって、他の子供達も帰ってきて良かった・・・・としか思わなかったかなぁーー?


チェネレントラ [METライブビューイング]

La Cenerentola / Gioachino Rossini

Conductor ・・・・・・・Maurizio Benini
Production・・・・・・・ Cesare Lievi

Angelina・・・・・・・・・ Elina Garanca
Clorinda・・・・・・・・・・ Rachelie Durkin
Tisbe・・・・・・・・・・・・ Patricia Risley
Don Ramiro・・・・・・・ Lawrence Brownlee
Dandini ・・・・・・・・・・Simone Alberghini
Don Magnifico・・・・・Alessandro Corbelli
Alidoro ・・・・・・・・・・・John Relyee

 ガランチャは聴いてみたいと思いながら、今まで機会がありませんでした。このライブビューイングももっと早く見たかったのですが、最終日ようやく見に行くことができました。

 出演者一人一人の個性が輝く、素敵なファンタジックコメディーで、今シーズン見たMETライブビューイング4作品の中で一番バランスのとれた秀作に思えました。

 演出はシンプルですが、まるでポップアップ絵本のような舞台背景とセットだと感じる場面もあって、出演者が全員、お互い絶妙に絡み合いながら、ディズニーアニメをイメージさせる夢のある作品になっています。

 なんといってもキラキラと輝いていたのはガランチャ。その姿はまさにディズニーアニメのシンデレラ!!!
装飾歌唱は少しマッタリとしたおおらかさを感じるものでしたが、このお話の主人公の心の広さと重なって、美しく、心地よく響きました。
 しかしインタビューで「チェネレントラ」は歌わないことになるとのこと、自分自身をクールに分析していて、ガランチャってカッコイイ!!

 王子様のブラウンリーは、時々コメントをいただく蘭丸さんから上手な人だと伺ってましたが、納得です。来シーズン、スカラ座の「セビリアの理髪師」でフローレスとダブルキャストですが、理解できる実力だと思いました。
 歌唱はまさに王子です。背はガランチャより低いのですが、そんなアンバランスなところも二人が見つめ合っていると微笑ましく、ファンタジーなのです。
 
 シンデレラの魔法使いの役割りは「チェネレントラ」ではアリドーロ。 なんじゃこりゃ??の天使姿もファンタジック!!ちょっと怪しい?雰囲気のレリエーは魅力的な声で、他のキャラクターとは距離をおき事の成り行きを楽しんでいるような?とっても不思議な存在です。

 意地悪父さんのコルベリは「連隊の娘」にも出演してましたが、今回も見事な職人技とも言える演技と歌唱。

 二人の意地悪姉さん達もハマリすぎのキャラで笑いのツボをおさえてます。
 
 この作品のキーパーソンとも思えたのが「チェネレントラ」オリジナルの登場人物ダンディーニ役のアルベルギーニです。汗だくの熱演でしたが、実にイイ味を出しているのです。この役はロッシーニ自身だと思って演技しているとコメントしてましたが、なるほど!!・・・・深イイーーー!!

 ベニーニですが、昨年1月に見たROHの「椿姫」で指揮を執っていた人です。この時の印象はあまり残っていません。今回、ちょっと部分的にマッタリ?と感じたところもありましたが、これだけ出演者達がそれぞれの魅力を発揮して、全体的にもバランスのとれた作品となっているのはベニーニ指揮の演奏が良かったからかな?と思うのです。

 
 しかしガランチャ、この役を歌わないって、フローレスのマントヴァ公みたい・・・。歌わないって言われるとすごく生で聴きたくなってしまいます。[猫]は限定品に弱いのであります。
 おそらく来年1月2月、パリのシャンゼリゼ劇場で歌うのを最後としているのでしょう。

 どうする?[猫]どうする?
 この次期、ヨーロッパでは[猫]注目作品がめじろ押し・・・・考えたって、休みが取れなきゃ行かれないのですが・・・・仕事ヤメタル!?!?・・・・夢・・夢であります・・・・。


夢遊病の娘 [METライブビューイング]

La Sonnambula /Vincenzo Bellini

Conductor ・・・・・Evelino Pido
Production ・・・・・Mary Zimmerman

Amina・・・・・・・・・ Natalie Dessay
Elvino ・・・・・・・・・Juan Diego Florez
Rodolfo ・・・・・・・・Michele Pertusi
Lisa ・・・・・・・・・・・Jennifer Black
 
  夢遊病の娘を鑑賞するのは初めてです。
 演出が不評であるとは聞いていましたが、初めて見るので違和感なく見れるのでは?と思っていました。しかしベリーニの美しい旋律を聴いていると、スイスの村の光景が頭に浮かんできます。ニューヨークのスタジオで劇中劇の設定は無理があるというか、どこからどこまでが劇中劇?訳分からないし,辻褄が合わない感じ。本当にリハーサルを見せられているようです。

 演出以外はとても素晴らしかったので、なおさら惜しく感じてしまいます。

 デセイは少し乾いた感じの声を発する時があり、絶好調ではなかったかもしれませんが、それでも尚、演技と繊細な歌唱はさすがです。

 フローレスは言うことナシ、高音の伸びも相変わらず素晴らしく、エルヴィーノの心情を表現しながら、惚れ惚れするほど美しい歌唱を披露していました。

 ピド指揮の演奏は以前パリで同じベリーニのカプレティ家とモンテッキ家で聴いたことがありますが、今回もゆったりと美しい旋律を奏でながらデセイ、フローレスの歌唱を際立たせるものでした。

 他の出演者もなかなかの歌唱だったので常にスイスの村の美しい光景が浮かび、実際に見ている光景とのギャップがあることが、つくづく残念に感じてしまうのでした。

 それでも[猫]はフローレスを聴けただけで大満足!!!

 やっぱりベルカントものはデセイ、フローレスが最高!?
 来シーズンから3年間METではダムラウ、フローレスのコンビになります。ダムラウ好きなのでこの2人もいいなと思いますが、デセイを実際に聴いてないのでデセイ、フローレスのコンビを聴いてみたい!
 来シーズンはウィーンで夢遊病の娘をこの2人でやる予定。演出もMETとは違うし・・・・しかし来シーズンはフローレスがらみでダムラウとの連隊の娘も見たいし、メッリ、ディドナートとの湖上の美女も見たいでしょ!!・・・・全部は無理!?・・・・贅沢な悩みは尽きない・・・。

蝶々夫人 [METライブビューイング]

Madama Butterfly / Giacomo Puccini

Conductor・・・・・・ Patrick Summers
Production・・・・・・ Anthony Minghella

Chou-chou-san・・・ Patricia Racette
Pinkerton・・・・・・・・ ・Marcello Giordani
Sharpless・・・・・・・・・Dwayne Croft
Suzuki・・・・・・・・・・・・Maria Zifchak
Goro・・・・・・・・・・・・・ Greg Fedderly
Yamadori・・・・・・・・・ David Won
Bonze・・・・・・・・・・・・ Keith Miller 

 単純[猫]泣きっぱなし・・・・。

 このライブビューイング、日本の舞台中継で時々やるように、カメラを引いた位置で固定した画像で見たいと思いました。つまり実際に歌劇場で見たほうがずっと素晴らしいだろうということですが・・・。

 ラセットの演技には魅了されました。ソプラノ殺しといわれる出ずっぱり、歌いっぱなしのこの役で見事な歌唱を披露しながらの感情表現に、涙なしでは見ていられませんでした。
 登場した時は思ったよりガッチリした人でアレ?と思ったのですが・・・蝶々さんそのものという演技に、そんな違和感はすぐに吹き飛んでしまいました。
 蝶々さんそのもの・・・というのは日本的な雰囲気がラセットの演技に感じられたのです。歌舞伎の女形からヒントを得たのではないかと思われるような仕草、姿勢で、少女の恥じらいのあるあどけなさ、一途さ、武士の娘という誇りまで表現していたように思えました。
 でも迫真の演技に引き込まれすぎてしまうので、少し引き気味で見たほうが良いのでは・・・とも感じてしまったのです。

 スズキ役のジフチャック、シャープレス役のクロフトの蝶々さんを何とかしてあげたいという思いと何もできないもどかしさの現れた演技、歌唱も心に響くものでした。

 一人蚊帳の外・・・といった感じですっかり卑怯者の悪人役になってしまうピンカートンのジョルダーニですが、ひとつだけエライ!!と思ったことが・・・・けっして軽くはないだろうラセットをお姫様抱っこしたことです。

 カメラを引いたほうが良いというのは、ミンゲラの演出にもっとも感じたことです。幕が上がってすぐ、夕焼けのように真っ赤に染まった背景に扇を持った女性のシルエット、上下に反射鏡があって、とても美しい映像です。女性が前に出て踊りだすとアップの映像になってしまうのですが、舞台全体を見ていたいという思いが残ります。それはこの部分に限らず、何枚かの障子に黒子の人たちが立っているシーン、大勢の黒子の人たちが提灯を持って舞台全体を動き回るシーン、花吹雪のシーン等、全体を見ていたらさぞ美しいだろうという演出になっているからです。
 衣装についても絶対に引いて見たほうが良いと思いました。というより根本的に変えてほしい気もするのですが・・・・外国で制作される日本ものですから、何か変ということはしばしば・・・はじめから期待はしてません。でも奇妙な烏帽子をかぶったゴローやヤマドリ、蝶々さんと一緒に登場してくる女性達の着物や髪飾り、日本だったら、ギャグ・・・山田花子ちゃんの衣装です。
 子役として使われている人形も近くだと怖い感じがしてしまうような・・・・?
 演出で余分だと思ったのは2幕2場冒頭、蝶々さん人形とピンカートンダンサーとの踊りのシーン。蝶々さんの運命を暗示したものか?蝶々さんの不安な思いを表したかったのか?分かりませんが、それはラセットの演技だけで充分です。

 正直、ラセットの演技だけで胸いっぱい、お腹いっぱい、歌唱、演奏について等何も書けない[猫]でありますが、心に残る蝶々夫人でした。

ランメルモールのルチア [METライブビューイング]

Lucia di Lammermoor/Gaetano Donizetti

Conductor・・・・・・ Marco Armiliato
Production・・・・・・Mary Zimmerman

Lucia ・・・・・・・・・・・Anna Netrebko
Enrico・・・・・・・・・・ Mariusz Kwiecien
Edgardo ・・・・・・・・Piotr Beczala
Arturo ・・・・・・・・・・Colin Lee
Raimondo・・・・・・・・Ildar Abdrazakov

 初日酷評されたネトコちゃんのルチア、この収録日は頑張ったみたいで上出来。それにしてもまるまるとして、ますますかわいくなった。
 これだけかわいかったら、歌唱のテクニックなんてどーでもいいじゃん・・・というオヤジ風意見も納得。
 美人は得ね!・・・ただのブスのひがみ風意見もあり。
 個人的にはネトコちゃんの良さがでる役を選んで、堅実にレパートリーを増やしていって欲しい感じがするけど、なんてったってオペラ界のアイドル、引く手あまたでそんなこと言ってられないのだろう。

 ヴィリャゾンは今年も調子悪くなって残念だし心配。

 代役のベチャラは歌唱も演技もとても良く、情熱と純粋さにあふれたエドガルドだった。

 演出家がスコットランドまで実際行って、視察後に制作したという背景、セットも素晴らしく、アルミリアート指揮のオケも滑らかにこの悲劇を盛り上げていた。

 カーテンコールはネトコちゃんもベチャラも大ブラボー!

 しかし、このオバカ[猫]は帰ってからMET PLAYERでサザランドとクラウスのルチアを聞いてしまった。やっぱりぜんぜん違う・・・・当たり前!!・・この極上と比べるクセ、なんとかならない?
 良いものを追求する好奇心こそが[猫]のパワーの源となっているから・・・許して^^:

 そんな中、[猫]が一番注目したのはエンリコ役のKwiecien。調べたら、ポーランド語でクヴィエチェン?花の月、4月という意味だけど、名前の読み方って難しい。キーチェンと呼んでいる方が多いみたい。
 歌唱も堂々と迫力あるし、演技も鋭い視線で冷たいルチアのお兄さんを演じていた。ぜひ実際に聞いてみたい。
 またスケジュールチェックしなくちゃいけない人が増えたと思って調べたら、今度ベルリンで見に行く予定のルチアに出演する!!!!ラッキー!
  

 今月はたくさん休日をもらえることになったので、旅行もゆっくりいける。不況のせいで仕事が減ったせいだ。当然無給。キツイけど、このところ仕事嫌々病が慢性化してるから休めるのがありがたい。
 でもこれで間違いなく8月ぐらいにはオケラの予定。
 これからヨーロッパのオペラハウスの2009・10シーズンプログラム発表があるけど、今年後半はじっと我慢の[猫]になるしかないな。


 
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