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ローエングリン・・・新国立劇場・・・2012/6/10 [オペラ]

【指 揮】ペーター・シュナイダー
【演 出】マティアス・フォン・シュテークマン
【美術・衣裳】ロザリエ
【照 明】グイド・ペツォルト

【ハインリヒ国王】ギュンター・グロイスベック
【ローエングリン】クラウス・フロリアン・フォークト
【エルザ・フォン・ブラバント】リカルダ・メルベート
【フリードリヒ・フォン・テルラムント】ゲルト・グロホフスキー
【オルトルート】スサネ・レースマーク
【王の伝令】萩原 潤
【4人のブラバントの貴族】大槻孝志/羽山晃生/小林由樹/長谷川 顯

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

オペラなんてどうでも良いという状態は半ば続いてましたが、序曲が始まってすぐ、引き込まれ、緊張が途切れることはなく、長い作品という意識することもなく、「ローエングリン」の世界に浸ることができました。
そういえば、いつもお尻が痛くなる椅子のことも全く気にならず・・・
ン?これは肉付きがよくなったのかも^^;

キャストはこれ以上望めないほど、そして合唱も定評がある。
唯一不安材料があるとしたら、オケ・・・でしたが・・・・
それもベテランのシュナイダーの手にかかれば、ここまで違うものかと感心させられました。
音をはずすことがなかったわけではありませんが、そんなことは些細なこと。
歌手との息もピッタリで、日本ではなく、本場ドイツにいるような感覚になる時もあったほどでした。


タイトルロールのフォークトについて、以前は一部のワグネリアンの方々には不評も散見されましたが・・・・
そのような評価は今や影をひそめ、ほとんど賛辞しか目にしません。

[猫]としては、
だーかーらー!!!
言ったっしょ[exclamation]
もう3回も聴いているのヨ!
自分の性格の悪さをまたまた思いっきり露呈しますが、他に自慢することもないので、自分が偉いわけではないのに、聴いているというだけで自慢したいし、その魅力を語っていたことも自慢したい・・・
もっと以前からその魅力に気づいていらっしゃる諸先輩方、どんどん自慢しちゃいましょう!エッヘン
<(`^´)>

ここで今までフォークトさまご出演で鑑賞した作品の感想をリンクしておきます。
ジュネーヴ「パルジファル」
リセウ「パルジファル」
バイエルン「ワルキューレ」

フォークトをヘナチョコだと思っていた皆様方、
いくら[猫]がフォークトさまはヘナチョコではない!力強い!と訴えても、何ら影響力もなし・・・・
信じていただけなくても無理はないというところあります。

なぜなら、フォークトの神聖な声の力ですが、録音では伝わりきれないものかもしれません。
また演出によってもイメージを変えます。
リセウのパルジファルは音源が配信されましたが、カタルーニャの少年が成長する話で、ヘナチョコさが必要でした。
演出がわからず、音源だけ聴いた人達はヘナチョコ感を持ったかもしれません。
あえて力は抑えて、ヘナチョコ少年であったからこそ、立派な青年へと成長する物語として感動する作品です。
実演鑑賞しても、このように力強さを抑えた公演では真の魅力の半分くらいしかわからないでしょう。
ドイツ語圏で活躍する多くの歌手の人達に共通するプロ意識は、フィークトさまも当然お持ちです。
演出、指揮者の意向を理解して、自分自身がどう評価されるかという以前に、良い作品を作り上げようという姿勢がある方だと思います。

[猫]は既にその声の神聖な力は知ってます・・・エッヘン<(`^´)>
鑑賞の興味はインタビューで言及していた今回の作品は普通と違う解釈があるということ。

さて、
気になったのは「Ich liebe dich」で恥ずかしそうにエルザから目をそむけたところ。
そしてエルザへの説得は、声の神聖な響きが、柔らかな癒しや純粋さ、さらには畏敬という域を超え、恐ろしさまでいたる時もあったこと。

見終わった後、善とは?悪とは?その区別をすること自体が意味がないと思わされるにいたります。

ローエングリンはあくまで善、エルザへの愛も真実
ひたすら純粋な神々しさで、恐ろしいほど強く信じろとエルザを説得するローエングリン・・・
その圧倒的な神々しさに、最後はエルザも民も我を忘れてローエングリンを追い求めてしまう。
テルラムントが言ったように、魔法に操られているよう・・・
古い神々を信仰するオルトルートが言うように、神々を捨てたバチがあたったかのようにも・・・
悲劇は善によってもたらされたとも言えるのです。

公演はフォークトの神々しい声の響きに支配され、
白く長いコートのような衣装を身につけた横向きの姿は、メトのペーター・ホフマンのローエングリンに重なる時もありました。

もちろん他の出演者の人達も演出の意図するところを納得し、好演したからこそ満足度の高い公演になったのでしょう。

最初は演出がエルザに焦点をあてているように思えました。
一幕、姫の様子がおかしい・・・
メルベートはテルラムントに近づいて睨みつけるという強さを見せながらもその様子は心ここにあらず・・・
最初だけ歌も音程が少々不安定で、それが不思議な雰囲気に繋がっていて、これも計算づくかとさえ思えました。
本当に力があるのはローエングリンを呼んだエルザ。
しかし、2幕の結婚式でレッドカーペットを歩くのはエルザ一人。
ローエングリンへの疑念を抱き始めたエルザがフラフラと倒れても、ローエングリンは傍観者です。
何をしているのローエングリン????
全てはエルザの想像の世界のことのようにも見えました。
メルベートは歌でも演技でも揺らぐ内面を見事に表現してました。

テルラムント役のグロホスキーも良く、
誠実さと真面目さが感じ取れ、オルトルートに操られる悲劇の人でした。
オルトルートも納得の出来で、2幕の前半の二人のやり取りも緊張感があり、聴きごたえがありました。

グロイズベックは大柄な上に、トルコ帽のような帽子で一段と大きく威厳をかもしだし、歌もしっかり。
伝令の萩原さんも立派でした。
合唱の迫力も見事。

音楽的に、日本でこれだけの水準の公演を観れることはそうそう望めないでしょう。

舞台セットは無機質なオブジェが時空を限定せず、良いとも思えましたが、ひとつだけ気になったことが・・・
2幕、上からループが重なったような檻のようなものが降りてきて、その中で豹変したオルトルートとエルザが対峙するわけですが、プロレスを思い出して/(-_-)\
こんな連想しちゃったの[猫]だけかしら?
以上

以前からカリスマという言葉で感想を書く事はありますが、フォークトこそカリスマの中のカリスマ。
今まで不思議くんとか呼んでいましたが、そんな呼び方もオチャラケ半分で申しわけなく、さま付けで書くにいたってます^^;

以前テノールをサラブレッドに例えて、フローレスだけ違う次元を走っているペガサスのようだと書いたことがありますが、フォークトも明らかに違う次元を走ってます。
ユニコーン!
(メ・ん・)?時々角を隠して普通になりたいと・・・・・カヴァラドッシまでお歌いになる。
さらなる進化を目指してらっしゃるということでしょうか。

来年また来日予定!楽しみにしましょう!



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Ree

本当に、新国で、あのキャストでこれほど素晴らしいローエングリンが聴けるなんて、幸福感でいっぱいです。
初日聴いて以来、ずっと幸せで何だかふわふわした気分です(笑)。

以前からフォークトさんの素晴らしさを認識なさっており、パルジファルもジークムントも実演でご鑑賞済とは、kametaroさま、本当に羨ましい。

私は今回初めて実演に接しましたが、フォークトさんの声質にはカヴァラドッシは合わないように思えるのですがいかがでしょう?
パリオペラ座の皇帝ティトもいま一つの評判だったみたいですし。

ルサルカの王子はかなり雰囲気合いそうですが、それ以外はドイツもの中心に、無理せずに、これからもずっとあの素晴らしい声をキープして頂きたいと切に願います。

by Ree (2012-06-12 08:21) 

kametaro07

Ree さま
>カヴァラドッシ
合わなそうですよねー。
でも一度聴いてみたい気もします。
パリのティトは行きたかったのですが、行けませんでした。
モーツァルトは合いそうですが、どうもイタリア語、特にレチタティーヴォが苦手らしいです。
特にこの前のパリはバイロイトの後で消耗しちゃったのかもしれませんね。

>無理せずに、これからもずっとあの素晴らしい声をキープして頂きたいと切に願います。
私も願ってます。

by kametaro07 (2012-06-12 22:29) 

Shevaibra

おはようございます。kametaro さまの記事、すごく面白かったです。日本の劇場の公演を褒めたことは殆どないと思われるkametaroさんが大絶賛とは!Vogt自慢も可愛くて良いです。勉強になります。あとでお願いがあるのでメールさせていただきます。
by Shevaibra (2012-06-13 08:11) 

kametaro07

Shevaibra さま
>日本の劇場の公演を褒めたことは殆どない
え~~~!そんなことないでーす。
ほとんどいつも褒めてまーす。
正しい褒め言葉を使ってないのでしょうか?(´Д`;)ヾ ドウモスミマセン
メールOKです。
by kametaro07 (2012-06-13 22:08) 

euridice

kametaroさん、行ってきました!
よかったです!
新国こけら落としローエングリンとは別の演目の感ありでしょうか。
まあ、私も変わったかも・・ですが。

そして、フォークト・ローエングリン、美しかったです。もちろん、声も美しくて力強く男らしかった。

「ホフマン物語」のときのフォークト・ホフマンは、声も姿もそれなりにかっこいいホフマンだったけど、なぜか「よかった」とまでは思えませんでしたが、今回のローエングリンはほんとに良かった。

>へなちょこ
kametaroさんの実演鑑賞感想で、生で聞くのは録音と違うのだろうと思っていましたが、まさにそういう面があったわけでしょう。このローエングリンの録音を是非聴きたいと思います。テレビ放送はなさそうですよね? 舞台おっかけのできない私としては、録音も実演体験のようであって欲しいです。

>横向きの姿は、メトのペーター・ホフマンのローエングリンに重なる時もありました。
おっしゃる通りでした。横顔はとても似た雰囲気がありました。メトのと言わず、動きというか動線は、バイロイトのフリードリッヒ演出を思い出させられました。

1幕の決闘シーン、ポーズをとる彼が照明に照らされた瞬間、神々しいばかりに美しかったですね。

P.ホフマンに匹敵する、そして今現在実際に舞台で、見ながら聴いて感動できるローエングリンの登場ですね。


by euridice (2012-06-14 07:21) 

kametaro07

euridiceさま
今回の演出がフォークトの力を発揮できる演出でよかったです。
私は最初の鑑賞でその力を実感できたので、次のリセウでもヘナチョコとは思わなかったのですが、初鑑賞がリセウのパルジファルのように力を抑えることで表現するものだったら、もしかするとヘナチョコと思ったかも?
と、ふと考えたのです。

>テレビ放送はなさそうですよね?
残念ながら聞きませんね。
仰るように録音、録画でも実演体験のようであってほしいです。

今回はこれだけの出演者を招聘してくれた新国関係者の方々に感謝すると共に、来日してくれた出演者の方々に感謝!です。

フォークトは一年待たずして再来日予定。
楽しみは続きます!


by kametaro07 (2012-06-14 23:33) 

チャッピー

通りすがりで失礼します。

4日の公演でカメラは入ってました。
「記録の為、録画」とのことでしたが。
by チャッピー (2012-06-16 06:22) 

kametaro07

チャッピー さま
録画の情報ありがとうございます。
放送してほしい公演ではありますが、記録用だと難しそうですね。
契約上の問題もありそうです。

今日も知り合いが行けなくなって、思いがけず見に行けましたが、
更に完成度があがっていたと思いました。
もー満腹^^。
by kametaro07 (2012-06-16 23:04) 

Yuhko

突然、失礼いたします。
新国では、多分全ての公演の記録を撮っています。
そのうちに、5階のブースで、
鑑賞出来る様になります。
今回の公演のZ席 get 後に
フォークトのホフマン物語を、鑑賞していました。
約3回位、
by Yuhko (2012-06-17 09:53) 

hbrmrs

こんにちは。
いやー、素晴らしかったですね。
私は、kametaroさんが付けたあだ名の不思議くん、「そうそう、そうだよ。ナイスなあだ名!ホント不思議だよねーあの声」なんて思っていたのです。そして、「個人的に、甘っとろくてあまり好きじゃないよなー」とも。

もう、本当に自らを恥じております。私もこれから「様」付けさせていただこうと思います(笑)。


by hbrmrs (2012-06-17 13:05) 

kametaro07

Yuhkoさま
嬉しい情報をありがとうございます。
一部プロモに使用されることはあるだろうとは思ってましたが、鑑賞できるブースがあるとは・・・
新国はサービスよいですね。

>今回の公演のZ席 get 後に
さぞかし早朝からお並びになったことと思いますが、並んだ甲斐があったのではないでしょうか?
by kametaro07 (2012-06-17 19:38) 

kametaro07

hbrmrsさま
私は最初のパルジファルがア~~ッと驚く大変身だったので、声の力を実感しましたが、役柄や演出、指揮者の意向などで、ツメは隠したまま、甘っトロイ印象が残ってしまうであろうことも理解に難くありません。
この前のジークムントも強すぎてフンディングを負かしそうになっては話になりませんし^^;
ローエングリンが一番声の力を堪能させてもらえるでしょうね。

by kametaro07 (2012-06-17 20:16) 

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