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湖上の美人・・・Theater an der Wien ・・・2012/8/10 [オペラ]

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マレーナさまと指揮者のフセイン
Musikalische Leitung Leo Hussain
Inszenierung Christof Loy

Elena Malena Ernman
Giacomo Luciano Botelho
Rodrigo di Dhu Gregory Kunde
Malcom Groeme Varduhi Abrahamyan
Douglas d’Angus Maurizio Muraro
Albina Bénédicte Tauran
Serano Erik Årman
Orchester ORF Radio-Symphonieorchester Wien

レイネさんご贔屓マレーナさま初鑑賞です。

ロイの演出ということで読み替え演出は覚悟していましたが、コメディ仕立てで内容がかなり違うものになってました。
ざっと内容を書きますが、読みたくない方は読まないでください_(._.)_ 

現代の小さな村の劇場の内部、
舞台の上に舞台があり、そのセットはずっと変わらず
エレナは劇場のオーナーの娘
劇場の合唱団の稽古の後片付けをしていると
ひょっこり現れたジャコモに心惹かれる
マルコムはエレナの分身のように全く同じ格好で登場
すごく仲の良い双子?友人?
離れたくないくらい仲の良い思春期の女の子同士
お父さんは王の反対派のロドリーゴを支持
エレナと結婚させたい
でもエレナの心の中には・・・
1幕終了時はジャコモが現れてエレナの前に座り、二人は見つめ合う
これはエレナの想像で心の中にいるジャコモ
演奏終了後も10秒はあったであろうという長い沈黙・・・
その間二人はずーーーっと見つめあったままフリーズ

舞台上の舞台は
ジャコモ登場の時には居間のようなセットが置かれたり、
ロドリーゴを迎えた場面ではバンダが演奏したり、
2幕最初は白鳥の湖のようなバレエを踊ったり、
ジャコモとロドリーゴの決闘も舞台上に・・・
一旦幕が閉じた舞台から傷だらけの白鳥ダンサーが一人、二人とバタバタと倒れてきたり・・・
場面ごとに工夫がこらされます。

最後はジャコモが王だと分かってビックリ仰天
反対派だったお父さんは許され、
エレナとジャコモは結ばれる

ということでマルコムが女の子で、エレナはジャコモと結ばれるということが大きく通常とは大きく異なるところです。
オリジナルの話ではコメディの要素があるとは思えない話をコメディ仕立てにしているので、賛否両論あるのは否めないところですが、大変心温まるものに仕上がっているので、個人的には良い演出に思えました。
しかし、古典的な美しさを期待した人達にとっては求めたものと違う公演だったでしょう。

コメディ仕立てということで、音楽には演出、演技を伴った微妙な間合いがあったり、歌も少々大袈裟にアクセントを強くしたりという部分もあります。
ベルカントものはあまりテンポやアクセントなど、大きく変化するものは好みではありませんが、
全く違和感のない程度で、今回のように演出が大きく読み替えられたものは話が別のように思えました。
パリで観たパスカル演出の公演ではアリアをゆっくり丁寧に歌い、演技はほとんどなし、重唱もほとんど横一列といった歌中心の音楽の流れが少々わざとらしい印象もなきにしもあらず、だったのですが、
物語にそった音楽の流れという意味では今回の方が自然だったと思います。
ただ歌手の人達は演出の意図にそって演技も伴いますし、歌い方もコメディらしい味わいを求められる部分もあるので、歌いなれている歌い方だけで通せる公演ではないと思いました。

エレナ役のマレーナさまが目鼻立ちがはっきりして表情豊か
ちょっとした仕草も愛嬌があってコメディの味わいを出しながらのアジリタ三昧
背が高いので、少女の姿をしていても、ズボン役は抜群だろうと想像できました。
無邪気にコメディ調に歌う部分では、音源だけで聴いた場合、アクセントが不自然に強すぎ、アジリタも少々雑な印象を持ってしまう人もいるかも?とも思われたのですが、舞台で実際に演技を伴って観ていると大変魅力的なので、オペラは丁寧にきれいに歌うことだけを考えたリサイタルとは別ものと改めて納得できるものでした。
それに初日なので、今後さらに磨きがかかっていくことでしょう。
最後のアリア「胸の思いは満ち溢れ」は王と知った驚きと結婚できることへの溢れんばかりの嬉しさに無邪気な表情を歌の合間に交え歌うのが本当にキュート。
まろやかなアジリタも素晴らしかったです。
この最後のアリアで演奏が音量を抑えて優しく寄り添い、大変心温まる雰囲気を作り出していたのも印象的でした。

マルコム役のアブラミヤンはしっとりとマレーナさまより声が太いメゾでエレナといつまでも一緒にいたいという思いが現れてました。
マルコムの場合、読み替えなしの演出の場合とほとんど変わらず、比較的いつもゆっくりと情感を出して歌えたこともあって、歌い慣れている様子で非常にまろやかなアジリタを堪能させてくれました。
女の子で最初は戸惑いましたが、歌の内容を考えても(ドイツ語の字幕なので曖昧な部分も多いのですが^^;)不自然さはそれほどなく、納得できてしまったのは意外でした。

かなり目立っていたのがロドリーゴ役クンデ
高音が素晴らしく力があり、声量もたっぷり
この小さな劇場では響きすぎと思ってしまうくらい・・・
演出的にひたすら傲慢で立派というところを強調しているのでしょう。
姿も恰幅が良く、こちらの方が王様にしか見えないくらい^^;

一方どう見てもただの普通の人にしか見えないウベルト(ジャコモ)役のボテーリョ
力強すぎるロドリーゴに比べると高音では分が悪いことは否めませんが、この読み替え演出にはピッタリ、話に信憑性をもたらすキャラでした。
誠実で人柄の良さを感じる容姿、声も柔らか、アジリタも納得の出来
このジャコモ役もコメディ調に歌わなくてはいけない部分もあるのですが、何よりキャラで納得させてくれたというところ。
ジャコモとロドリーゴ、エレナの3重唱「どうか分別を持って」は全く声質もタイプも違う二人、ロドリーゴとジャコモの二人のかけ合いの部分があります。
この部分、パリではフローレスとリーというタイプの似た主役級二人で、見事な聴かせどころとなっていました。
ロドリーゴがあまりに立派な声なのでジャコモ危うし・・・と心配しましたが、それもただの杞憂、
ジャコモの柔らかで優しい声は潔く、堂々と渡り合ってました。

生き生きとして、微笑ましい暖かさに満ちた公演で楽しめました。

カーテンコールは賞賛に溢れてましたが、
マレーナさまにブーする人が一人・・・
だーかーらー演出もあるんだって!
近くに座っていた人だったのですが、演出にもブーしていたので、情感タップリの歌を期待していたのでしょう。
そういえば、パリではアリアをゆっくり歌わせたテンポの変化に対しての不満らしきブーが指揮のロベルト・アバドに対してあったのでした。
ブーは自分では絶対にしませんが、ブーの理由は考えます。
パリも今回もちょっと納得しかねるブーでした。
演出チ-ムにはブーイング多し・・・
これは仕方ないかな?
個人的には楽しめましたが、頻繁に上演される公演ではないので、古典的なものを観たいという人も少なからずいるでしょう。

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尚、公演の途中、ジャコモのアリアの後、拍手のフライングがあり(>_<)
これには地元の観客が大激怒!
間髪を入れず、シッ!という声の他にも出て行け!
(はっきりと聞き取れませんでしたが、そのような内容だと思います)という叫び
これは地元の人達は普段から観光客に悩まされて防衛線をはっているな・・・
という様子が覗えました。
その後は公演の途中の拍手が長すぎてもシッ!という声
いつまでも拍手して進行の妨げをするんじゃないヨ!
と、指揮者の動きを見て観客に自制を促してました。
自分達の聴く権利を守る!
何より出演者の尊厳を守る!
出て行けと叫んだら、そちらの方がうるさいということを言う人もいるかもしれませんが、それは違うでしょう。
[猫]はこういった防衛策は大賛成(^-^)/
後で注意するということができるとは限りません。
毅然と対応する地元の観客に、この劇場は良い環境が保たれ続けるだろうと頼もしく思いました。

欧州ではほとんどフライングの拍手に悩まされることはありませんが、夏は特に観光客が多いので困ったものです。


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レイネ

この読替え演出では観客も様々な解釈が可能で、エレナとマルコムはレズのお友達同士だとか、エレナは精神分裂で妄想の世界に生きてる、とかいう意見・評もありました。わたしは、kameraroさんと同じく、上手くコメディーに仕立ててると思って楽しみました。その辺が理解できない人にはブーなんでしょうね。思春期の不安な女の子の頭の中を可視化して見せるというのは、なかなか面白い試みだし、成功してると思うのです。
前後の物語の流れを無視してもアリアはひたすら美しく歌い上げて、アジリタも美的頂点を目指して転がすような歌唱を期待した人には、残念だったろうと思います。
拍手のタイミングにも難しいものがありました。音楽の流れをブチ切らないためにもなるべく短く切り上げるのは必須ですし、すべきかしないほうがいいのか、観客同士牽制したり。第一幕の終わりがわかりにくく、ぱらぱらと拍手が漏れてその後皆がつられて締りがなくなってしまったのが残念。TVカメラも入っていたのでDVDにするならそこは上手く編集してもらいたいものです。
by レイネ (2012-08-21 03:27) 

kametaro07

レイネさま
>エレナとマルコムはレズのお友達同士だとか、エレナは精神分裂で妄想の世界に生きてる
なるほど・・・
レズというと重すぎるような気がしますが、思春期の女の子同士でいつも一緒にいる大の仲良しはよくありますよね。
そのくらいの感覚で鑑賞してました。
本文に書き忘れましたが、
コメディ仕立ては元の話の内容からは考えにくいのですが、音楽自体にはコメディ的軽い要素があって、それで全く違和感がないのだろうと思いながら鑑賞してました。
>アリアはひたすら美しく歌い上げて、アジリタも美的頂点を目指して転がすような歌唱
パスカル演出がほとんど合同リサイタルのようで、歌手はそういったことだけを念頭に歌に集中して自分のペースで歌ってました。
あまり合同リサイタルのような公演は好きではありませんが、これはこれでベルカントの歌の美しさを味わうに値するものではあったと思います。
今回はそのような公演とは明らかに異なり、歌い方も工夫があったと思うのですが、その辺が納得いかない人のブーだったことでしょう。
でもブーはすぐそばだったので気づきましたが、たくさんのブラヴァーにかき消されてました。
歌手の人達は少々大変かもしれませんが、新鮮な視点を見いだせる今回のような公演は好きです。
初日は1幕終了時、ブラックアウトするまで沈黙が続いたので、エレナの心の中のジャコモの存在の大きさが強調されて大変印象的な場面となりました。
出演者の心情を考えても、途中の拍手はほどほどにしてもらいたいですが、地元の観客の指揮者へのサポート体勢には感心しました。
by kametaro07 (2012-08-21 22:21) 

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