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アラベラ・・・Opéra Bastille・・・2012/7/10 [オペラ]

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Philippe Jordan Conductor
Marco Arturo Marelli Stage director and sets

Kurt Rydl Graf Waldner
Doris Soffel Adelaid
Renée Fleming Arabella
Genia Kühmeier Zdenka
Michael Volle Mandryka
Joseph Kaiser Matteo
Eric Huchet Graf Elemer
Edwin Crossley Mercer Graf Dominik
Thomas Dear Graf Lamoral
Iride Martinez Die Fiakermilli
Irène Friedli Eine Kartenaufschlägerin
Istvan Szecsi Welko
Bernard Bouillon Djura
Gérard Grobman Jankel
Ralf Rachbauer Ein Zimmerkellner
Slawomir Szychowiak, Daejin Bang, Shin Jae Kim Drei Spieler

Paris Opera Orchestra and Chorus

鑑賞しなくても良いかな?と思ったのはタイトル・ロールのフレミングが昨年のザルツのような状態が続いていたら悲しい・・・と懸念があったからでした。

それでも他の出演者が実力者ぞろいなので、行ってみることに・・・
席が平土間中央ブロックの最後列、端の補助席だったので、列の真ん中の人達がくるだろうと思って立っていたのですが、誰も来ず・・・・
そのうち、係の人がもう始まるからその辺の空いているところに座ってOKと言ってくれたので、5、6列前に座らせてもらえました。
結局、後ろの席の人たちは自主的に前進したということなのね^^;
中央のブロックこそ8割強埋まってますが、両サイドのブロックは後ろ半分は空席が目立ち、6割くらいの入りです。

日本ではこのキャストの中で一番有名なのはフレミングかもしれませんが、欧州ではもともと米国ほど評価は高くはないでしょう。
ティーレマンと一緒に公演を重ねることで、ドイツ語圏でこそ随分人気も出てきましたが、パリで今回のように公演数が多いと全公演一杯にするのは無理
正直言ってヨーロッパではもっと豊かな声でタイトル・ロールを歌える人が何人もいるでしょう。

日本は本場から遠く離れ、入ってくる情報は商業ベースに乗った歌手の人達のことばかりで、本場中心で活躍する人達の情報量は少ないのが現状です。
特にドイツもの、東欧ものなどを中心に活躍している人達は、本場の公演数が圧倒的に多いので活躍の場はヨーロッパ内に限られるというのも理由の一つでしょう。

それに本場のオペラと本場でないオペラの差は歴然、
本場では最初の一音から最後の一音までが作品というのは常識。
本場でないオペラはビジネスとして成り立つことが重要なので、その土地の楽しみ方になります。

国民性の差もありますから、楽しみ方は色々ですし、オペラの形も色々あって良いと思います。
しかし、特にドイツもの、東欧ものなどを中心に活躍している人達は、何か関係がないかぎり、本場以外で出演することは念頭にない人は少なからずいると思います。
指揮者も歌手も演奏者も良い作品を創るという意識の中で、お互いに聴きながら仕事しているので、
音楽に拍手やブラヴォーがかぶるのは冷水を浴びせかけられているようなもの・・・

彼らにとって、商業ベースに乗ることは意味をもたないでしょう。
最後まで本場で歌い続けるか、中には実績を積んで後進の指導にあたることを目標にしている人もいるかもしれません。
それが大学に招かれるとなれば、その方が有名歌手になるよりステータスが高いでしょう。

あちこちで公演を鑑賞してきた結論としては、世界的に有名かどうかということは、それ程意味のないものだと言わざるをえません。
人気もほとんどルックス
それに下り坂の有名人より、昇り坂の人達の方が良いということもしばしば・・・。


そこで今回、欧州の実力者の中に商業ベースの有名人が入った公演ですが、懸念したとおりになってしまいました。
もちろん3年前、バーデン・バーデンの『バラの騎士』ではそんなこともなく、違和感なく聴いていれたので、決して人気だけの人ではないことは理解してます。
素晴らしい時もあったことは間違いないでしょう。
もし、元に戻るなら、無理せず長期休業した方がよいのではないかと今回も思いました。
スケジュールを全うすることこそファンへの感謝という意識と責任感が強く、コンディションを元に戻しきれずに今の状態にいたっているのかもしれません。

昨年のザルツの時ほどは悪くはありませんでした。
しかし、アクセントの強い部分しか聞こえてこないので、フレージングもへったくりもなく、プッツン、プッツン・・・
途切れがちにしか聞こえず、高音はかすれてしまうことも・・・・
他の出演者達が非常に生き生きとしていたので物語にひき込まれましたが、アラベラが声を発する度にガクっと現実に戻されてしまいました。
それでも後半は良くなってきて、最後は声をふりしぼりながらなんとか決めてましたが・・・・。


始まってしばらくして、驚いたのは字幕が英語もあったこと、
いつもフランス語しかなかったので、最初は無視していたのですが、ふと気づくと両方の表示があるではありませんか!?
いつもやってくれればいいのに・・・
これはフレミングさまのおかげです。
米国からの追っかけファンが少なからずいるのは、休憩中に英語ではなく米語で話す声が聞こえたことで確認できました。

もう一つ始まってしばらく(・3・) アルェー?と思ったのは、ついこの前ここで『三つのオレンジへの恋』を聴いたばかりなのに、バスティーユってこんなに臨場感のない劇場だった?
と思うほど音楽も歌手の声も遠くに聴こえたことです。
きれいに声が飛んでくるのはズデンカの声だけ・・・

バイエルンあたりで聴いたあとでは仕方ない・・・とも思ったのですが、
リドルが登場して声を発すると、
な・なんだ、しっかり響くジャン・・・
この後、ガラリと舞台の雰囲気が変わりました。
リドルは考えてみるとアムスの『パルジファル』にキャスティングされてましたが、こちらの方で必要な人だったというわけですね。
リドル自身もクリングゾルより、こちらの方がハマリ役でしょう。
いかにも癖がありそうなお父さんです。

アデライーデ役のゾッフェルなどはリドル登場後からすごく生き生きと、声も伸びて存在感がでてきたようでした。
スカラの『ラインの黄金』でフリッカを歌った人です。
その時も悪くなかったですが、今から考えるとTVの収録があったので、緊張があったのかもしれません。
今回の方が演技も自然で役にハマッてました。

オペラ界のジャック・ニコルソン、
フォレが登場すると、ますます物語に引き込まれました。
この人はズンと密度の高い声でいかにも強者という魅力があるかと思えば、声の密度を低くして切なさ、さらには優しく暖かい包容力といった人の良さを醸し出します。
声の密度を低く、柔らかく歌ってもしっかり響いてきて、アラベラへの愛情が伝わってきます。
容姿も大柄で少々武骨、いかにも朴訥でマンドリーカそのもの。

ズデンカですが、キュートな声で好奇心旺盛な思春期の多感な少女といった雰囲気です。
キューマイアーのはずなのに、今まで聴いた声と雰囲気が違っていたのでキャスト・チェンジがあったと思って聴いていたのですが・・・
きれいなフレージングでとても心地よく響きます。
休憩中にキャスト表を確認してみたら、な・なんとやはりキューマイアーでした(@_@;)
今まで2回聴いたことがあって、ミカエラでは優しく純粋な声、エウリディーチェでは意志のある大人の女性の声、その時も声が違う、と思いましたが、今回もまた違いました。
劇場によって響き方が違うので印象が違うことはありますが、それぞれ役のイメージニピッタリの声なので、どうもそう言ったことではなさそうです。
いや~~~すごい!

フィアカーミリのマルティネスが細く可愛らしい声でコロラトゥーラを披露、
とても小柄な人ですが、一人ピンク色の衣装でムチを持ちながら歌うので目立ってました。

演出はブルーと白が印象的で洗練された美しさに満ちたものです。

カーテンコールは賞賛の声が飛び交ってました。

追っかけファンもいるので、フレミングにも賞賛の声が上がってましたが、ご本人が一番分かってらっしゃるでしょう。
顔を両手で覆い、ホッとしている様子には胸が痛くなりました。
一人ブーも聞こえましたが、欧州ではスカラ以外、歌手にはそれ程厳しくありません。
これはフレミングへというより、ブラボーを叫んでいる人に対して、しっかり聴いているのか、という抗議のブーでしょう。
しかし、ご本人は不安の中、一回一回の公演を全力で、緊張感をもって臨んでいるに違いありません。
もしかすると、引退はそう遠くないのかも?とも思え、ファンの人達の「よく頑張った」という気持ちが表れた賞賛なのだと納得しました。
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Sheva

ミヒャエル・フォッレのマンドリカなんてうらやましすぎます~私ってもしかしてゴリラ系が好みだったのかな?再認識~
聴きたいです~彼はザルツブルク・イースター音楽祭のティーレマンの振るドイツレクイエムに出るんですよ。同曲を前、ミュンヘンの日本の津波被害のチャリティコンサートでも歌ってましたけど。
しかしすごいキャストじゃないですか~リドル、ゾッフェル、キューマイヤー、カイザー。
ジョルダンは今回バイロイトにデビューするジョルダンかしら?
パリは英語通じましたか?
お疲れさまでした~~
by Sheva (2012-07-28 20:38) 

kametaro07

Shevaさま
>しかしすごいキャスト
そうなのです。
すごく自然で生き生きとした舞台で、これ以上はなかなか望めないでしょう。
それだけに違和感も生じてしまったわけです。

>バイロイトにデビューするジョルダンかしら?
そうです。
スイス人なので、ヨルダンと書いたほうが良いかもしれませんが、私もついジョルダンと書いてます。
お父様も有名な指揮者で、かつてリンデンでも活躍していたのでバレンボイムの弟子の一人でもあります。
『ワルキューレ』を聴いたことがありますけど、良かったですよ。
パリは英語で問題ないです。
by kametaro07 (2012-07-28 22:48) 

Kew Gardens

今回も充実した旅行でいらしたんですね。 3か国を巡って、ヴァラエティーに飛んだ演目をご覧になる気力と体力はすごいです! 

>欧州の実力者
このキャストが、フェスティバルでもない通常公演というのが驚きものですが、私も主役をみたら引いてます。 ライブ録音きいても???、でもシュトラウスはレパートリーでしたね。 

>引退はそう遠くないのかも
ROH 2016-2017シーズンでのバラの騎士がロンドンでのさよなら公演だという噂があります。 でも、4年も先までというのはかなり先にも思いますが、それまで自重して続けられるのでしょうか。 

全勝とはいかなくとも、満足度の高い旅行だったのではないでしょうか? お疲れ様でした。


by Kew Gardens (2012-07-29 00:25) 

Sheva

KGさま、kame さま、お知らせです。(ここでなんで…)N響の11月の公演、きょうから発売ですが、エヴァマリアウエストブレークとハルフヴァソンとアーケンがワルキューレ1幕歌います。土曜を購入しちゃいました。ぜひいかがでしょう!
by Sheva (2012-07-29 10:32) 

kametaro07

Kew Gardens さま
お帰りですか?
サイモンさまバイエルンで大活躍、さぞかし満喫なさったことでしょう。

今回はこの公演が一番( `・ω・) ウーム…でしたが、それも考えようによっては贅沢なことです。
例えが悪いかもしれませんが、前半などははなんだか素人さんの踊りの発表会のようで、プロに囲まれて主役はきれいな衣装を身に付けて舞台で存在感を示すというところでした^^;
少しでも良い状態に戻ってほしいものです。
by kametaro07 (2012-07-29 21:50) 

kametaro07

Shevaさま
お知らせありがとうございます。
まだ先のことなので、なんとも言えないところですが、おそらく行けると思い
ます。
ご夫婦で共演なのですね。
ご主人は聴いたことがないので聴いてみたいです。

by kametaro07 (2012-07-29 21:54) 

Kinox

kametaroさま、素人耳さまにご紹介いただき、初めてコメントさせていただきます。最新記事一覧にはずらっと羨ましくも素晴らしい公演ばかり、これからも欧州の公演情報を読ませていただくのが楽しみです。
わたしはメトにはよく行くのですが、特にフレミング好きではないというかどちらかというと極力避けている傾向にあるので、詳しくないんですが、アメリカでは確かに有名だし、熱狂的なファンも多いし、実際ハウスでフレミングが楽しみで地方からきたのよ、というお客さんに会うこともあるのですが、最近は結構厳しい評価も多くなってきてるようにも思えます。
近年珍しく生で聴いたのは去年のヘンデルだったんですけど、kametaroさまが「声を発する度にガクっと現実に戻されて」とちょっと似て、ここだけ早送りにできないもんかな、とちらっと思いました。
Kew Gardensさまの仰ったさよなら講演の噂はわたしも聞いていて、確かにそろそろ、そうなんだろうな、と思います。
by Kinox (2012-09-26 09:35) 

kametaro07

Kinoxさま
初めまして。
アメリカ在住でらっしゃるのですね。
メトによくいらっしゃるとのこと、イイですねー。

>特にフレミング好きではないというかどちらかというと極力避けている傾向にある
私もです。
それほど前からオペラに興味があったわけではないので、3年前にバーデンバーデンの『バラの騎士』で聴いたのが初めてですが、昨年のザルツのティーレマンのコンサートでの声が、張りなし艶なし潤いなしだったので、愕然としてしまいました。
一番良い時を知らないのですが、最近はアメリカでも結構厳しい評価も多くなっているであろうことは想像できます。
それでも応援する根強いファンの人も多いことが米語が飛び交っていたことや字幕に英語があったことで分かりましたが、おそらくファンを大切にする方なのでしょうね。
by kametaro07 (2012-09-26 18:26) 

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