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ドン・ジョヴァンニ・・・新国立劇場・・・2012/4/29 [オペラ]

【指 揮】エンリケ・マッツォーラ
【演 出】グリシャ・アサガロフ

【ドン・ジョヴァンニ】マリウシュ・クヴィエチェン
【騎士長】妻屋秀和
【レポレッロ】平野 和
【ドンナ・アンナ】アガ・ミコライ
【ドン・オッターヴィオ】ダニール・シュトーダ
【ドンナ・エルヴィーラ】ニコル・キャベル
【マゼット】久保和範
【ツェルリーナ】九嶋香奈枝

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

当分何も観たくないと言いつつ・・・
ご贔屓と言っても過言でないキーちゃん(キフィエチェン、一般的表記はクヴィエチェン)が来日する公演とあって、ずっと前にチケットを確保してないはずはないのでござる。
本当は3月のメトの愛妙がダムラウ、フローレスとの共演だったことに加えて、同時期、他に観たい公演もあって行きたかったのですが、その頃は大真面目にアップアップしながらお仕事していたので、休みが取れず・・・・無念。
ということで、[猫]にとっては2010年にミュンヘンで観たドンジョ以来のキーちゃんの公演。
本当によくぞ来日してくれました!
評判も上々のようで、[猫]としては、だから言ったっしょ!というところ
失礼・・・皆様とっくにご存知だったに違いありません。

演奏は少々速めながら、自然な流れでアリアはゆっくりと歌わせるところあり、
地獄落ちはバーンとアクセントを強めで盛り上げる
メリハリがあって、全体の印象としては痛快時代劇風といったところ
所々でガンガン行きましょうといった部分もありましたが、最後まで楽しめました。

痛快といえば、ミュンヘンのドンジョもそうでしたが、
今回は、現代的な演出で音楽的にアクセントを抑え目にした軽い痛快さとは一味も二味も違うものでした。
古典的な衣装を身につけると、速めのテンポでハギレよく歌いながらも、品格のある声が一段と冴え渡って聞こえました。
もちろんセレナードはゆっくりと、甘く、うっとり。

決して大柄ではないのに、大柄に見えるほど、演技のツボも心得たものです。
剣の立ち回りはスマート
2幕エルヴィーラのいる窓辺の下で歌いながら、レポレッロにこうするんだとジェスチャーで指示する様子には自然と観客から笑みがこぼれました。
これは、もちろんマネをするレポレッロ役の平野さんも上手だったこともあります。
地獄落ちは一人芝居状態ながら、声も演技も緊迫感あふれるものでした。

そんな中、ミュンヘンでのドンジョと最も違って見えたことは・・・
貴族の衣装での立ち振舞いを見ていると、孤高の人にも見えてきたことです。
公演を観た後、新国のサイトのインタビューを見たのですが、
その中で、ドンジョは心を病み、死だけが経験したことのないことであるから挑戦した、死をのぞんだというコメントがあって、なるほどと納得するところがありました。
一方で、それって自殺、心を病んでいるということは罪悪感に苛まれたということなのか?という疑問が出てきました。
今までは、ドンジョはあくまで自身が悪だとは全く認識してないからこそ悪なのだ
と思っていたのですが・・・・
実は深層心理で自分でも気がつかないうちに罪悪感に苛まれていたというのもありですね。
しかし、その辺は見る側の解釈でもあり、個人的にはどっちも可。
演出もいろいろ、演じる出演者もいろいろ、人生いろいろ。
そういえば、パリのドンジョは心が病んで孤独に苛まれているようでした(ただし自殺ではない)
スカラは最後に登場したことで、永遠たる悪の象徴のようなドンジョ。
ドンジョは今回で6回目の鑑賞、全て違う演出でしたが、いろいろだからこそ面白い!

インタビューによると、ドンジョを歌うのはあと5~7年と考えているそうですが、これからもまた違った魅力のドンジョを披露してくれそうです。


他の出演者の人たちも役になりきって好演してましたが、
特にアンナ役のミコライがたっぷりとした声量で、とても丁寧に歌っていたのが印象に残りました。

オッターヴィオ役のシュトゥーダがアンナのサポート役という役柄になりきっていたせいなのか???
ほとんど下僕のように、僕は目立たないようにします状態。
なんだかとってもいい人に見えました。

演出がカサノヴァをイメージしたということで、ベネチアが舞台ですが、
床が黒一色で水面のように反射するのが美しく、
現代的感覚で、象徴的に巨大人形が登場したりするのも面白い。
特に大きな読み替えがあるわけではなく、どうということはないと言えないこともない演出ですが、
視覚的にきれいで、構成もよくできていると思いました。


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コメント 14

Sheva

おはようございます。最後の日に参戦ですね。マリウシュの独り舞台だったでしょう?私もあのビデオインタビューを見ていたので最後の豹変ぶりが、そういう意図かと腑に落ちました。カサノヴァのイメージとは今知りました。ヒース・レジャーのカサノヴァを思い出します。他にクフィエチェンは何かご覧になりました?
by Sheva (2012-05-01 07:20) 

Kew Gardens

Kwiecien on stage! というパフォーマンスでしたね。 かっとびミューヘンはみていませんが、3回目のキーチャン=Don Gは、演出違えば、当然違うのねぇ~、です。 私もビデオインタビューみましたが、
>死だけが経験したことのないことであるから挑戦した
というのは、人生にあきあきしちゃったのねと勝手に思っていました。 とっかえひっかえアバンチュール楽しんでみたものの、結局のところ皆同じで、達成感もない。 受け手によっていろいろですね。

個人的にはMozartのオペラを見た気が全くしなくて不満が残りましたが、視覚的にはとても美しかったです。 舞台をVeneziaに移した意図は読み取れませんでしたが、別に違和感がありませんでしたし。 私の席は3Fでしたが、床は一面反射フィルムのようなものがはってありませんでしたか? 舞台奥の(リアプロジェクションでしょうか)映し出された風景が床にちょっとゆらゆら反射していて雰囲気が出ていたと思いました。
by Kew Gardens (2012-05-01 12:51) 

kametaro07

Shevaさま
>マリウシュの独り舞台だったでしょう?
舞台での存在感が圧倒的でした。

他にDOBでエンリーコ
http://kametaro07.blog.so-net.ne.jp/2009-03-13
パリでロジェ王
http://kametaro07.blog.so-net.ne.jp/2009-07-10
を観ました。

ドンジョはハマリ役ですが、他もよいです。
フィガロの伯爵やベルコーレ、マラテスタも観たいですね。
by kametaro07 (2012-05-01 18:14) 

Sheva

ありがとうございます。早速2つの記事を読ませていただきました。ロジェ王ご覧になられたなんてうらやましい!これはすごく見たいですう~ヨーロッパでしか見れない作品ですよね。こういうのこそヨーロッパで見なくてはいけない作品ですよね。マリウシュがロングインタビューでめちゃめちゃしゃべりまくって作品解説してました。それに裸だし…この時より絶対今の方が痩せていますね。
by Sheva (2012-05-01 19:33) 

kametaro07

Kew Gardensさま
>演出違えば、当然違うのねぇ~
そうなのですけど、演出が違っても、また演目が違ってさえ、何故かイメージがほとんど変わらない人もいたりしませんか^^;
中には演出が気に入らないと歌いたくないという人もいますし・・・。
キーちゃんもこだわりはあると思いますが、どんな演出でもフィットできる、
そういった点でキーンリーサイドと似ていると思うのですよね。

>結局のところ皆同じで、達成感もない
なるほど。
そう考えると心の病は罪悪感とは無縁ととらえることができますね。

>床は一面反射フィルムのようなものがはってありませんでしたか? 
私は4階サイドだったのですが、反射する素材がはってあったと思います。
背景は上から見ると下の部分しか見えないのですが、見えない部分が反射して見えました。
なかなか趣のある、よくできたセットでしたね。
by kametaro07 (2012-05-01 19:53) 

kametaro07

Shevaさま
このロジェ王はバイエルンのオネーギンと同じ、Warlikowskiの演出ですが、
途中はクラクラしてきますよ。
でも最後は(゚д゚)(。_。)
なんといってもカーテンコールが\(・o・)/!
あの時ほどの観客の盛り上がりは未だかつてありません。
昨年の5月にマドリッドでやっていたのですが、次はいつになるのか?

>マリウシュがロングインタビューでめちゃめちゃしゃべりまくって作品解説してました。
それって、はじめの頃は演出家本人も出演者もはっきりとした意図がよくわからないままやっていたとかいう話でしょうか?
たしかマリウシュは結構気に入ってやっていたいたのではなかったでしたっけ?

ご覧になる機会があるといいですね。
by kametaro07 (2012-05-01 21:22) 

Sheva

ワルリコウスキ(?)ですって!?どおりで…裸…カーテンコールいまだかつてないほど盛り上がったですって? ますますうらやましい!kametaro さまのマイナーオペラハンターは本当に貴重です。
by Sheva (2012-05-02 07:14) 

kametaro07

Shevaさま
カーテンコールはスタンディングで強烈なブラヴォーとブーの応酬(@_@;)
場内騒然で、思わず、意味もなくワーイと叫びそうになりました。

>マイナーオペラハンター
別にハントしているわけではないのですが^^:
気になる人が出演する場合は尚更、聴ける機会が少ない作品は聴いておきたくなりますね。

by kametaro07 (2012-05-02 19:21) 

Kew Gardens

>何故かイメージがほとんど変わらない人もいたりしませんか^^;
確かに、います! そういう人は避けたい・・・。

>どんな演出でもフィットできる、そういった点でキーンリーサイドと似ている
全く、同感!です。 なのでキーちゃんも私の好みと申しましょうか。 加えて声がLyrical、どちらかというと小柄(筋肉質?)で、しなやかな身のこなし等々。 キャリアパスという意味で、キーちゃんはKeenlysideを意識しているようなことをインタビューで話ていたような。 彼のAlmaviva公爵は想像できるのですが、Papagenoはどんなものでしょうか。 
by Kew Gardens (2012-05-02 21:12) 

kametaro07

Kew Gardensさま
>Papageno
歌ったことあるのかな?
と思って調べてみたら、
すんごくかわいい写真つきのバイオグラフィーをボリショイオペラのサイトでみつけちゃいました^^。
http://www.bolshoi.ru/en/persons/opera/837/
これによると、ワルシャワで歌ったことはあるようですが、他では歌ってないような・・・
ちょっと聴いてみたい気はしますが、パパゲーノより今歌っている役の方が似合いそうですし、需要もあるのではないでしょうか?
by kametaro07 (2012-05-02 22:39) 

Kew Gardens

Kametaroさま、

わざわざ調べてくださったんですね。 ありがとうございます! 
>すんごくかわいい写真つきの
ホント! METの若手養成プログラムに応募した時くらい、若い頃でしょうか? ちょっとサギ。

せっかく調べていただいたところ恐縮ですが、
>パパゲーノより今歌っている役の方が似合いそうですし
はい、まさにその通りです。 私の文章が拙かったので誤解を招いたと思います。 ごめんなさい。 私も想像できないというか、キーちゃんキャラじゃないと思っています。 そして、そこがKeenlysideとは違うな、と。 
by Kew Gardens (2012-05-03 13:25) 

kametaro07

Kew Gardensさま
なるほど。
キーちゃんはベルカントものも得意としていて、レパートリーが違うということはありますが、そういったことは別として・・・
キーンリーサイドってちょっと似合わないのでは?と思うような役でも挑戦して、演出に合わせて上手く表現しますね。
パパゲーノも意外ですが、来シーズン、ウィーンでリゴレットは注目!
by kametaro07 (2012-05-03 20:36) 

cachaca

本当に感じ方というのは人それぞれですねー。私は観てませんが、このオペラは好きなので、ちょうど他の3人観られた方々のブログを読んだところです。三人三様まったく違う意見なのでとても興味深く思いました。

Aさん(女性)は「世界最高のドン・ジョヴァンニ」とのポスターを信じて手放しのべた褒めで、他の役は何も書いてない。Bさん(男性)は演奏に対してブーイングしようと思ったほどだそうで、あまりにロマンティックな演奏というか、リタルダントを多用して、今時これがモーツァルトかと思った。ドンジョ役は終始怒りっ放しのような力の入った歌い方。特筆すべきがレポレッロ。女声陣はまぁまぁ。オッタヴィオがちょっとねぇ。Cさん(男性)はドンジョがほれぼれするほどよく、レポレッロが冴えないといい、オーケストラは速めのテンポで明晰なリズムとほめてました。それでも新国には魔物が住むのか、ここでは誰もが今ひとつ燃えないんだそう(^0^)

こんなに違うものかと、このバリトンのyoutubeを探したところ、METのとバイエルンがあったので観ました。可もなく不可もなくでしょうか(^^) 

by cachaca (2012-05-05 19:32) 

kametaro07

cachacaさま
Cさんのブログは私も読みました。
同じ公演といっても日によって出来不出来もあるかもしれませんが、仰るように人それぞれですね。
大体、新国は一線級の歌手さんが歌ってくれても、オケがネックになることが多いですが、この日は頑張っていたので、今まで新国で観た公演の中でも良いほうに入ります。
日本人キャストも多いと、海外で観る公演と比較しても仕方ないですし・・・・
充分に楽しめた公演でした。
贅沢を言わせてもらうなら、スカラでゆっくりとしたドンジョを聴いた後だと、速めのテンポは良さもありますが、どうしても歌が寸づまりの印象になってしまって、ゆっくりと歌うのを聴いてみたいとも思ってしまいます。
ただゆっくりとしたテンポはゆっくりと歌えるだけの人が揃わないとできませんから、難しそうです。


by kametaro07 (2012-05-05 22:52) 

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