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影のない女・・・Grosses Festspielhaus・・2011/8/11 [オペラ]

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シュスター、ティーレマン、シュヴァンネヴィルムス

Christian Thielemann, Conductor
Christof Loy, Stage Director

Stephen Gould, The Emperor
Anne Schwanewilms, The Empress
Michaela Schuster, The Nurse
Wolfgang Koch, Barak, the Dyer
Evelyn Herlitzius, His Wife
Markus Brück, The One-Eyed
Steven Humes, The One-Armed
Andreas Conrad, The Hunchback
Thomas Johannes Mayer, The Spirit Messenger
Rachel Frenkel, The Voice of the Falcon
Peter Sonn, The Apparition of a Youth
Christina Landshamer, A Guardian of the Threshold of the Temple
Maria Radner, A Voice from Above
Vienna Philharmonic
Concert Association of the Vienna State Opera Chorus
Salzburg Festival Children's Choir


音楽に国境はないので、どこの国の指揮者がどこの国の作曲家の曲を演奏するかということは普段あまり意識しません。
実際、自国と違う国の作曲家の作品をこの上なく美しく作り上げる指揮者の人達は何人もいます。
しかし、自国の作曲家に対して特別の愛情と敬意をもって研究し、表現していると感嘆せざるをえない指揮者もいます。
それは血の為す業?!
プラッソンのマスネ・・・
そしてティーレマンのシュトラウス・・・おそらくワグナーも(まだ実際に聴いてないので)

先日BSでも放映されたのでご覧になった方も多いでしょう。

演出はカール・ベームがこの作品を収録した時のことを元に作られているそうです。

手法としては映画「ブラック・スワン」に似てるように思われました。
「ブラック・スワン」は主人公が主役を得るために精神的に追い詰められ、現実と幻覚の錯乱状態に陥り、自傷行為と狂気の世界に迷い込んでしまうものです。

この公演は皇后役を歌う歌手が新人で緊張感と役作りに没頭するあまり、現実と幻覚の区別がつかなくなってしまう状態に・・・・
しかし「ブラック・スワン」と違うのはそれが成功へと繋がっていること。
あくまで[猫]の解釈ですけどね・・・・。
映像演出を意識した作りも散見され、おもしろい試みとは思いましたが、少々無理がある演出のような気もしないでもありません。

観客には(少なくとも[猫]には)どこまでが現実でどこからが幻想なのか?区別がつきません。
バラク夫妻役は実際に夫婦で子供ができないという悩みから夫婦関係が悪くなっている・・・というのは現実。
最初は録音風景なのでコンサート形式のように見えますが、
皇后「これはとても大切なこと、どうしてもやりとげたい。」
乳母「下の世界へ、私がお連れします」
乳母役は新人歌手を鍛える役です。
歌手の気持ちと役の気持ちが重なって徐々に幻覚の世界へ・・・・

この「影のない女」をはじめとして、神々、妖精、魔法など、現実でない話をもとに作られているオペラは数多くありますが、こういった現実離れした話は無限の創造性を秘めてるでしょう。

そう、あなたは今、気づかないうちに・・・座敷童子にとりつかれているのですよ!
八百万の神々は木にも家にも川にも宿っているではありませんか!
ほらTVからは・・・・サダコ・・・・これはちと違うか?・・・・

いつの時代か、何を身に着けているか、場所はどこか、等は問題ではありません。
神話、伝説、童話、そしてオペラの話も身の回りに潜んでいると考えることは自然なこと・・・・・・ですが・・・・
この演出は???となりますので、なるべく考えず、元の話も幻想的、演出も幻想・・・
ホイだったら・・・勝手にこっちも幻想しよっと・・・・
そうだ!ご一緒に幻想の世界へ!がコンセプトに違いない!・・・・と勝手な解釈しときました。

理詰めで観ると辻褄が合わないことばかり・・・・
当たり前ですよ・・・・
この「影のない女」は幻想、幻覚ですから・・・
カイコバートの所業かな?

カイコバートは背後のディレクターボックス内にいる人。
いえいえ・・・・
[猫]はティーレマンだった気がする・・・・・・・・。
こ・これは[猫]の幻想^^;

歌手さんたちは収録中の歌手を演じたり、幻想の中に出たり入ったりするわけだから演じていてわけわからなくなりそう・・・・
でもそれも歌手さん自身が取り付かれているんじゃないの?とも見えたり・・・・
こ・これも[猫]の幻想?

シュスター演じる乳母役、全ては彼女の思うツボだったのではないか?と思われる節もなきにしもあらず・・・・かなりの曲者です。
最後の場面はコンサート会場、賞賛を浴びる中、一人残り、我に返るように戸惑いの仕草を見せる皇后役の新人歌手、舞台端にいる乳母役と目あわせ・・・乳母役はほとんど表情を変えないのですが・・・・
最初からお見通しよ・・・という感が?!
追放が解雇という現実だったらそれだけが想定外だったかな?
歌いまわし、表情、演技、こういったひと癖ある役は抜群に上手い!

バラク妻、ヘリルツィウスの感情の起伏の表現の激しさはヒステリックに響くときもあってそれが真に迫ってます。
バラク役のコッホは声に誠実さがあって、このちょっとヒステリックな妻の夫として人柄の良さを感じるキャラがこの妻にこの夫あり。

皇帝役のグールドは初日の録音日よりこの日の出来の方が良かったと思います。
ただ最初は録音している場面で歌うので歌は良いのですが、演技は譜面台の前で歌うので皇后への愛が希薄でした。
しかし・・・ですよ。
2幕2場、皇后へ疑念を抱く場面では完全に取りつかれてました。
皇后への愛から裏切られたと思い込んでの怒り・・・凄い迫力・・・ヘルデンです。

一番役作りが難しいのでは?と思われるのが皇后役のシュヴァンネヴィルムス。
初日の収録日はあまり調子良くなかったですが、グールド同様この日の方が出来が良かったです。
緊張したような表情だったり、戸惑った表情だったり・・・常に舞台のどこかに姿があって全てを見つめています。
3幕には完全に皇后になりきってコンサートで我に返る。
周りの観客の拍手がスローモーションなのが映画を意識した作りです。

観る人によって捉え方はいろいろありそうです。
疑問は皇帝役と現実の恋愛関係だったか?幻覚だったか?など他にも突っ込みだしたらきりがない演出ですが、それも観客一人一人の解釈、想像しだい・・・・。

全てはティーレマン指揮、ウィーンフィルが紡ぎだす豊かな音楽に陶酔しきった幻想空間の出来事でした。

ティーレマンに大ブラヴォー・・・
歌手は女性3人に賞賛が多かったです。

BS放送がありましたが、これは映像に向いている演出ではないかもしれません。
単なるこじつけといえばこじつけ^^;でしょ?


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シュヴァンネヴィルムス、グールド、ヘルリツィウス
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グールド、 ヘルリツィウス、 コッホ

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コッホ、T・J・マイア、ヘルリツィウス、ティーレマン











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ところで新国でもおなじみのT・J・マイアがほんのチョイ役で出演してますが・・・
この方ヴォータンも歌うお方ですヨ・・・・
いつもザルツでは脇を歌ってますが、それだけザルツのキャストって豪華なのですね。
今後、アムス、ジュネーヴ、パリでヴォータンを歌うそうです。
2013年に再来日予定だそうで、ご本人から出演演目も聞きましたが、公式発表はまだですし、変更の可能性もあるので伏せておきましょう。

尚、この日もブログ仲間の数名の方とお目にかかれて嬉しかったです。

今回は急遽来ることに決めた旅行でしたが、複数の方にお会いできたことでとても楽しく充実したものとなりました。
お会いできた皆々様、ありがとうございました。




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コメント 14

ひろと

生舞台が観れてよかったですね。
なるほど演出はこう見るみるのですか。私のは浅はかでした。
by ひろと (2011-08-19 09:29) 

kametaro07

ひろとさま
あくまで自己流の見方ですので^^;
TV放送ですとどうしても舞台全体を見続けることはできませんし、理解するのが難しい演出かもしれませんが、人それぞれ、さまざまな見方で楽しんで良い公演だと思います。
by kametaro07 (2011-08-19 23:37) 

sheva

ハロー!お疲れ様でした。私もカイコバットはティーレマンだと思います。つまりベーム。
by sheva (2011-08-20 13:00) 

kametaro07

shevaさま
ハロー!
>つまりベーム
さすが!
おかげさまで視界が広がりました。
by kametaro07 (2011-08-20 20:33) 

Sheva

スティーヴン・グールドすばらしかったのに、ブラボーなかったんですよね。14日は。なんででしょうか。ドイツ人ではないから? 彼の歌はまじすばらしかったのに…。映像だと声量が平らにされてしまう問題がありますよね。
ローエングリンはぼちぼち見てますけど。まああとで。
影のない女は帰りの飛行機で2回聴いて帰ってきて映像を見て、合計何回聴いたんだよと思いつつ、もう哀しくて虚しくてせつなくなりました。なりませんか?ザルツ・ロス。失われてしまう瞬間。
by Sheva (2011-08-20 23:04) 

kametaro07

Shevaさま
お帰りなさい!
>グールド
もしかするとディクションの問題かもしれませんね。
とっても役に入り込んで熱唱でしたけど、ドイツ語圏の人はディクションにこだわる人も多いようですから。
それとも皇帝役にはちょっと重いと思っている人が多いのかも?

>ザルツ・ロス
私は行けただけでも幸せでしたし、帰ってからすぐTV放送まであってザルツ・ロスに襲われることなく過ごしてます。
それだけ充実したザルツの休日だったのですね!

ただ時差がなかなか取れなくて^^;
TV放送を観るのにはちょうど良かったのですが、
やらなくてはいけないことは山積みなのに手がつきません。


by kametaro07 (2011-08-20 23:47) 

Sheva

ディクションの問題…!?さすがkametaro さま!それは私にはわかりません。
重さの問題ですが、私も初めてスティーヴンの皇帝を聞いたときは重い!って思いました。もっと軽やかに高い声を出してほしいと思いました。でも声質ですしね。そこはしょうがない。生の声を聞いたときはやっぱこの人スゴイ!と思いました。見事な歌唱で、男声陣の中では飛びぬけていると思いました。ティーレマンが鳴らしまくるオケを突き破っていたのは男では彼だけだったでしょう?
それにしてもスティーヴンがなんで暴れているのかがどうも解せなかったんですよね。
by Sheva (2011-08-21 00:43) 

galahad

実際の舞台をご覧になれてうらやまし~。 この演出、はじめて見るものだとわかりにくいかもしれませんが、ファンタジーを現実にうまくもってきていてすばらしいと思いました。
歌手陣の迫力がすごいし、舞台ではほとんどないノーカット版だったのには驚き。 実際のベームの録音よりお得だったということで、さすがティーレマン。
by galahad (2011-08-21 10:42) 

kametaro07

Shevaさま
私自身はもちろんディクションの良し悪しはわかりませんが、昨年のザルツでテオリンが何を言ってるか分からないと不満をもらしていたマダムがいたので、もしかすると・・と思ったのです。
主要キャストでスティーヴンだけがネイティヴではないですよね。

>スティーヴンがなんで暴れているのか
2幕2場のことですよね。
あれは舞台後方だったか横だったか皇后がじっと見つめてたので、彼女の幻覚だったように思うのですが・・・?
1幕ではしっかり歌ってましたが、自分の収録を終えるとトットと帰る演出でしたから、皇后への愛の深さを伝えるにはあれくらい怒りを露わにした方が説得力がある気がしました。
完全に取りつかれてるわ、この人・・・と思ってみてました^^;
仰るように、オケが分厚くなっても声の響かせ方はさすがヘルデンでしたね。
by kametaro07 (2011-08-21 14:37) 

kametaro07

galahadさま
>ファンタジーを現実にうまくもってきていてすばらしい
私もこういった演出は大いにありだと思います。
ただTV放送だと観れる範囲が限られるので分かりにくい演出ですね。

>実際のベームの録音よりお得だったということで
ベームの録音ははカット版なのですね。知りませんでした。
確かに得した気分になりますね^^。
by kametaro07 (2011-08-21 14:48) 

hbrmrs

こんにちは。私も帰ってきましたっす。
いや、さすがkametaroさん、見事な解釈です!
つじつまが合わなくても全てが幻想、幻覚・・なるほど~。
ティーレマンがカイコバート・・なるほど~。

そうです。オペラの演出なるものは、インスピレーションを得て何かを感じられればそれでいいのです。

ティーレマンのシュトラウス、最高でしたね。

後ほど(後日)、マクロプロスやコジの記事にもコメントさせていただきます!
by hbrmrs (2011-08-22 20:22) 

kametaro07

hbrmrsさま
お帰りなさーい!
さぞかし充実したザルツの休日を過ごされたことと思います。
この演出は一応読み替えストーリーはあるようですが、鑑賞していて出演者の人達が取りつかれているとしか見えませんでした^^;
というか読み替えストーリーを考えるより自分自身が幻想している方が自然で楽だったってことで^^;

>ティーレマンのシュトラウス、最高でしたね。
ハイ!

旅行記を楽しみにしてます!
by kametaro07 (2011-08-22 20:50) 

それいけ、ばいきんまん!

kametaro さま

こんにちは。
ザルツではお声がけありがとうございました。
お話できて楽しかったです。
休暇を楽しまれたご様子ですね。

3回聴いた範囲では、
グールドは11日が特に調子がよかったように聴こえました。
プレミエのTV中継は表情が良く分かり理解が追加できましたが、
ステージ全体の情報が散乱気味なので、
テレビでは理解に限界がかなりあるプロダクションだと思います。
演技の意味を考えると音楽が疎かになってきたので、
私は8割くらい音楽に集中してしまいました。
ティーレマンとVPOはどの回でもブレが少なかったです。
完成してましたね。
楽員とのアイコンタクトは頻繁で”Prima!”キューをさり気無く送ってました。
日によってコンサートミストレスや楽員が入れ替わりましたが、
コンマスのキュッヒルは3回とも一貫してました。

約20年前にこの音楽祭でショルティー指揮VPOの「影の無い女」を観た友人曰く、
今回のほうが歌手はよく声が出ていて、
オケの迫力も大きい、と言っておりました。

マクベスはチケット入手は断念してドライブに行きましたが、
ムーティー指揮VPO公演はズーヘで入れました。
額面の半額でした。

1日ノンビリくつろげるのは田舎のバイロイトですが、
ザルツは有名音楽家公演のデパートのお買い物のようにワサワサ!気分になります。
ザルツはオペラの休憩が20~25分位と日本並みのあわただしさでした。

ではまた。


by それいけ、ばいきんまん! (2011-08-23 20:48) 

kametaro07

それいけ、ばいきんまん!さま
お帰りなさいませ!
こちらこそお目にかかれて嬉しかったです。
お声がけする時、ハンドル・ネームでお声がけして人違いだったらどうしよう・・・と思ってしまって、曖昧で怪しい人になってましたよね^^;
失礼いたしました。

>私は8割くらい音楽に集中してしまいました。
私も同様でした。
音楽空間に浸るのが一番!
3回もあの空間にいらっしゃったとは羨ましいかぎりです。

>楽員とのアイコンタクトは頻繁で”Prima!”キューをさり気無く送ってました。
さすが、目のつけどころが違います^^。
ティーレマンとVPOの信頼関係は揺ぎ無いものがありますね。

>ザルツは有名音楽家公演のデパート
本当に!ついついあれもこれも^^。

ムーティ&VPO、そしてバイロイトまで満喫なさって充実のご滞在、何よりでした!

by kametaro07 (2011-08-23 22:33) 

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