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ドン・ジョヴァンニ・・Bayerische Staatsoper・・2010/7/3 [オペラ]

画像 1277.jpg
エスポジート、キフィエチェン、ケント・ナガノ、ハルテロス
Don Giovanni / Wolfgang Amadeus Mozart

Musikalische Leitung Kent Nagano
Inszenierung Stephan Kimmig
Bühne Katja Haß
Kostüme Anja Rabes
Video Benjamin Krieg
Licht Reinhard Traub
Produktionsdramaturgie Miron Hakenbeck
Chöre Andrés Máspero

Don Giovanni Mariusz Kwiecien
Der Komtur Phillip Ens
Donna Anna Anja Harteros
Don Ottavio Pavol Breslik
Donna Elvira Maija Kovalevska
Leporello Alex Esposito
Zerlina Laura Tatulescu
Masetto Levente Molnár

ハチャメチャな演出。。。でもケント・ナガノ指揮の演奏は目からうろこ。
これが現代のモーツァルトかも・・・と、とっても楽しめました。
映画「アマデウス」でのモーツァルトのヒャッヒャッヒャッという高笑いが聞こえてくるよう・・・というか[猫]自身がヒャッヒャッヒャッと高笑いしたくなるような公演でした。

演出はもう説明のしようがないほどワケわからない。。。演出家がそれが狙いとしか思えない代物。
おまけに登場人物がやたら脱ごうとするし。。。脱がせようとするし。。。ちょいと破廉恥でもある。。。

セットはコンテナーが回り舞台に2段積み重ねられたもので全部で6個くらいあったと思います。
ひとつひとつのコンテナーの中に場面ごとのセットが仕掛けてあり、外側には世界各国の文字が・・・「おいしい密柑を召し上がれ」なんて書いてあるものも。。。

序曲、まず舞台中央に現れたのが全裸の老人。。。序曲にあわせて肩と腕をカクカクと動かす。。。
初っ端から???ですが。。。さらにワケわからないののが。。。その爺さんがコンテナーの中に姿を消す時、演奏が終わってないのに拍手する観客がいたこと。。。ハイ?????
この爺さんはどうもこの演出のキーパーソンらしく。。。各場面でさまざまな格好をして出てきます。
最初の爺さんのパフォーマンスの間、舞台が回り、背後に極めて悪そうなヤツが左から現れ、右に消えていく・・・ドン・ジョヴァンニのキーちゃん(キフィエチェン)・・・タバコ吸っちゃって、半端なく悪そうなのです・・・これが。。。
現代に置き換えられた演出ですが、騎士長はピストルで殺され、パーンという音が入ります。
1幕後半、エルヴィラ、ドンナ・アンナ、オッターヴィオが仮面で変装する場面はスキーウェアにゴーグルという格好で?と思っていたら、舞台が回ってコンテナーの中がスキー場のヒュッテみたい。。。コンテナーの上で一人、雪のように紙ふぶきを散らしている。。。コンテナーの上にはもう一人、爺さんが頭と腰の後ろに大きな羽飾りをつけて座っている。。。ドンジョヴァンニのキーちゃんはキンキラキンの全身金色のスーツに金色のかつら。。。
以上はハチャメチャのほんの一部ですが、一幕終了後は強烈なブーイングの嵐、嵐、嵐。
[猫]の真後ろで強烈なブーをする人がいたから振り向いてみたら、すごく品の良いオバチャマ。。。「お気に召さないようですね。」と声をかけたら、「なんで全裸の人がでてくるの?全く意味が分からない!」とプンプン。。。[猫]「同感です。」
[猫]は「ワルキューレ」でも書いたようにオペラに全裸など必要ないと思っているのですが、「ワルキューレ」では全くブーイングはなし。
以前ROHで「リゴレット」を観たときも全裸の男女が出てきましたが、ここでもブーイングは全くありませんでした。
これはイギリス、フランスがオペラで全裸があることに許容範囲が広いということなのか?
それとも意味がないというところで今回はブーイングだったのか?
おそらく後者でしょうね。
[猫]は爺さんにはせめてパンツくらい・・・風邪引いたらどうするんだ[むかっ(怒り)]と思うのです。
もうひとつ舞台左上にスクリーンがあって、これまたワケわからない映像が映し出されるのですが、[猫]は席が前の方だったので、これを見るためには見上げなくてはならず、ほとんど無視してました。
これがなくても充分ゴチャゴチャなので^^;いらぬスクリーンでした。

一方ケント・ナガノ指揮の演奏は極めてあっさり・・・テンポの変化はほとんどなく、アクセントも必要最小限。
アリアでさえもサラッと流れるように歌わせるので、誰を際立たせるわけでもなく、出演者全員、皆同じ大きさのドングリみたい。
ご贔屓さんのアリアを目当てに来た人にはちょっと物足りなさが残るかもしれない歌わせ方でしたが、これが全体的な流れをとっても爽快なものにしていて、軽快な楽しさを生み出していたのです。
演出がオーソドックスなものだと物足りないでしょうが、この破天荒な演出には快い品の良さでバランスを取っているように思えました。

サラッと歌うと言っても、ブレスさえも目立たなく流れるように歌うところもあって、こういう歌い方も難しいのじゃないかとも思う部分もあり、ドングリといっても出演者それぞれ、役のカラーははっきりと観客に伝わる歌唱と演技で、大きさは同じでも色の違うドングリ。
重唱も聴き応えがあり、全員プロフェッショナルでした。

一人、エルヴィラ役コヴァレフスカは声の印象が優しいので、[猫]のイメージのエルヴィラとはちょっと違ったのですが、歌唱そのものはなかなか良かったです。
もう少し気が強い声がエルヴィラのイメージなのですが、優しそうでかわいらしいエルヴィラでこういうタイプのほうが騙されやすいかもしれないとも思えました。

ドンナ・アンナ役のハルテロスはドン・ジョヴァンニが犯人だと気付いたときの演技、その後のとまどいと悔しさの演技など、とても上手。
歌も物腰も品があって美しい。

オッターヴィオのブレスリクは「ルクレチア・ボルジア」で聴いて以来2度目ですが、髪型も変えて、良い意味で別人。画像 1279.jpg
こちらもすごく品良く歌いあげるのですが、二幕、ドンナ・アンナに求愛する場面ではシャツのボタンを全部はずしてドンナ・アンナにからみつく。。。歌は品良くてもやっていることは。。。ちょいと破廉恥。。。これはこの公演の演出の特徴のひとつで、オッターヴィオ以外も。。。

写真はブレスリク




ツェルリーナ役のタトゥレスクはかわいらしく無邪気、少々軽率なツェルリーナに見た目も声もピッタリ。
こちらもドン・ジョバンニに殴り倒されたマゼットをいたわるのに、シャツのボタンを全部はずして、倒れてるマゼットに馬乗りになって「見ていらっしゃい、いとしい人」を歌う。。。ちょいと破廉恥。。。
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マゼット役のモルナールは大柄で見た目も単純そう、歌も朴訥な印象でこちらもイメージがピッタリ・・・。

写真はモルナールとタトゥレスク







ドングリでも役柄から当然目立つのはドン・ジョヴァンニ役のキーちゃん(キフィエチェン)とレポレッロ役のエスポジート。

ドン・ジョヴァンニのキーちゃんは金ぴかのドングリです。
実際に金ぴかの衣装も着て登場するのですが、場面ごとにやたら違う衣装で登場します。
しかし何と言ってもその演技と歌唱は現在のドン・ジョヴァンニを歌う人たちの中でもトップクラスに間違いありません。
1、声に品格がある。
2、女性を誘う時は人が変わったように甘く歌える。
3、肝が据わった悪を演じきれる・・・最後騎士長が現れたとき、キーちゃんはほとんど動かず、じっと睨みつける・・・そう!ドン・ジョヴァンニは決して動揺してはならない!
も~~~キーちゃんカッコイイ!!!
レポレッロと入れ替わる際にコンテナーの上で本当に衣装を交換するので、キーちゃんはまたパリの「ロジェ王」の時のようにパンツ一丁にならなくちゃいけないのか・・・ と思ったら、今回パンツ一丁になったのはレポレッロ。

ドン・ジョバンニにアゴでこき使われて情けなーいレポレッロを演じたエスポジート。
その動き方で目立ったドングリでした。
オペラ歌手はこんなドタバタ喜劇役者みたいなこともできなくちゃいけない・・・もー大変!という大活躍。
ドン・ジョヴァンニの衣装を着たレポレッロとばれてしまって、衣装を脱ぎながら「お許しを、皆様」を歌うのですが、スボンを脱ぐのに片足になってフラフラ倒れそうになってるにもかかわらず、歌唱はビクともしない。
その後パンツ一丁になってドタバタ演技をしなくてはいけなくても、最後の場面で散々食べまくって口の中にそうとう食べ物が入っていても・・・歌はバッチリ。
コルベリが「人を笑わすには自分自身は極めて真面目にやらなくてはいけない」と言ってましたが、正にそれを実践していて歌唱は安定感抜群!

墓地の場面はコンテナーの中に牛の大きな肉塊が肉屋の冷凍庫みたいに吊り下がっていたり、晩餐の場面はドン・ジョヴァンニとレポレッロが二人でキッチンに立って料理したり・・・最後まで???でしたが・・・。
そこに現れた騎士長は聖職者の格好で、他に死んだ人達であろう人が何人もぞろぞろ・・・・全員で手をつないでドン・ジョヴァンニを地獄に引きずりこもうとする演出は妙にカワイイ^^。
騎士長のエンスも立派な歌唱でした。

終了後はまたまたブーイングでしたが、カーテンコールはブラヴォーが飛び交ってました。
一番はケント・ナガノに対して。
ケント・ナガノは最初に登場した時からブラヴォーでしたが、この劇場の音楽監督として観客からの信頼が厚いのも納得の公演でした。
画像 1281.jpg

コヴァレフスカ、キフィエチェン、ハルテロス、ブレスリク









画像 1282.jpg


モルナール、エンス、タトゥレスク、エスポジート








画像 1276.jpg


















キーちゃんに名前の正しい発音を聞いてみたいと思って出待ち^^。
まず最初に出てきたのはブレスリク。
人がワッと集まったそのすぐ後、スタッフのようにさりげなくスゥーと通り過ぎようとする人・・・・でも[猫]は気付いてしまいましたゴメンナサイ・・・エスポジート。
[猫]の目の前に来た時、イイですか?とペンをさしだしたら快くサインしてくれました。
すごく知的で端正な顔立ち・・・舞台でのドタバタが想像できない。。。[猫]がサインをもらっちゃったから他にも人がよってきちゃって、ブレスリクのすぐ後に出てきたのは絶対に確信犯できっと急ぎの用があったのでしょうけど・・・。
その後、ブレスリク、タトゥレスク、ハルテロスもサインしてもらいました。皆素敵な人達です。
さていよいよキーちゃん登場。
「残念ながらドイツ語は話せないんだ。」といいながら英語で話したり、ポーランド語で話したり・・・。
名前の発音はもしかすると今までもさんざん質問を受けているかも?とも思ったのですが、質問してみました。
「キフィエチェン」ととってもゆっくり発音してくれました。
[猫]「Fの発音ですね?」
キーちゃん「その通り。でもキフェチェンじゃなくてキフィエチェンだからね。」
するとすぐそばにいた人が「ファーストネームは?」
キーちゃん「マリューシュ」
マリューシュ・キフィエチェン!積年の・・・といってもここ1,2年ですが^^;モヤモヤがすっきりしてウレシイ!
キーちゃんにお礼を言って帰ろうとしたら、すぐ後ろにいた人が「とってもいい質問だったわ」と言ってくれたので益々ご機嫌で帰ってきた[猫]でした。

ジャパン・アーツのサイトでははじめクフィエチェンと書いてあったのが、いつの間にかクヴィエチェンに。。。
こういったカタカナ表記はドュセをデセイと書いたり、色々ですけど・・・。

キフィエチェンと分かってもこれからも[猫]はキーちゃんと呼ばせてもらいます。。。ご本人には了承もらってませんが。。。そこまで気が回らなかった。。。回ったとしても他にたくさんファンがいると独り占めする時間が長いと悪いですしね^^;
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コメント 8

sora

こんばんは~。
たくさんの楽しそうなレポートをいつも有難うございます。
やっぱりグルベさんも聴かなくては!と思っております。

ドンジョといえばエクサンプロヴァンスのもARTEに上がっていますね。
ご覧になりましたか?
飛ばし見しましたが、全裸の老人がいない分ミュンヘンよりは大人しめかもしれません?(^^)
ブーも飛んでいましたが、日本人の声とおぼしきブラボーがあったり。(違うかな?)
でも昨年のキフィエチェン(笑)出演のロジェ王のブーVSぶらぼーの凄さには全然及ばなかったです。面白かったですよね~。(私は最初の少しとカーテンコールぐらいしかちゃんと見てません。)
by sora (2010-07-21 22:28) 

galahad

きゃ~、キーちゃんカッコイイ! 最後がまともなお衣装で良かったです。(あの金ピカスーツはやだわ) キーちゃんの小回りのきく演技があればこそと思うけど、やっぱり日本では上演不可能な演出なのですねぇ。 裸の老人もダメ、エロエロ演出ももちろんダメ。 
お名前はよくぞ訊いてきてくださいました! すっきりしましたね。 以前METのインタビューではルネ・フレミングが「クヴィエチェン」と言っていたのでアメリカではそうなのかな?と思いました。 私も来日公演の時に、ステファンにコーツァンかコカーンか気になるのできけたらきいてみようと思います。(なーんて待ってたら来なかったりして)
でもキーちゃんドイツ語話さないんだ…、ちょっとショック。
by galahad (2010-07-21 22:51) 

kametaro07

soraさま
こんばんわ^^。
>やっぱりグルベさんも聴かなくては!と思っております。
ぜひぜひ!
日本公演でも絶好調だといといいですね。

>ドンジョといえばエクサンプロヴァンスのもARTEに上がっていますね。
全然知りませんでした^^。
ARTEは全くチェックしたことがないんです^^;
簡単に観れるのでしょうか?

>ロジェ王のブーVSぶらぼーの凄さには
あれは凄かったですね~~~。
あまりの活気に「ワ~~イ!」とか独り言言ってました^^;変わり者です。
「ロジェ王」の時はブラヴォーも飛んでましたが、今回は出演者がカーテンコールに出てくるまでほとんどブー一のみ。。。
でも個人的には爺さんにパンツはかせて、スクリーンがなければ全然OK。
モーツァルトがハチャメチャな人だったようですから・・・演出がハチャメチャなほうが、モーツァルトらしい・・・なーんて思ったりして・・・。
「ロジェ王」もこの「ドンジョ」もワケ分からないところがおもしろい!
また観たら違ったことが見えてくるかも?と妙に惹かれるものがあるんです。
ヨーロッパの珍妙な演出に毒されてきてます^^;
by kametaro07 (2010-07-22 00:19) 

kametaro07

galahad さま
キーちゃんは金ぴかスーツも似合ってましたよ^^。
意外と背は高くなく、フローレスと同じくらいか、少し低いかもしれないのですが、舞台では大きく見えて、何着ても様になります。

>やっぱり日本では上演不可能な演出なのですねぇ。
ハイ。。。。。
セットも大掛かりですし・・・「ロベルト・デヴェリュー」だったら、その辺から椅子とテーブル持ってくるだけでOKなので・・・。

>ステファンにコーツァンかコカーンか気になるのできけたらきいてみようと
ちゃんと来日してくれますように・・・。

>でもキーちゃんドイツ語話さないんだ…、ちょっとショック。
英語よりドイツ語のほうがお得意ですか?凄いなー。
私は今やドイツ語は風前の灯。。。
ちゃんと勉強しなくちゃとも思うのですが・・・その前に日本語が。。。
尋ねるの意味で使う「きく」は「訊く」ですね。
どんどん日本語が危うくなってきて困ってます^^;
by kametaro07 (2010-07-22 00:47) 

sora

ARTEは以下のサイトにいけばいいですよ。
http://liveweb.arte.tv/fr/cat/Classique/

Don Giovanni au festival d'Aix-en-Provence
Le 5 juillet 2010
Classique 5

っていうのをクリックすれば多分見れます。
接続が遅くて上手く見れない時もありますえけど、多分1月ぐらいは無料で見れるのではないかと思います。どこにこのサイトの仕組みが書いてあるのか私には分からなくて(^^)>>

mediciでも今朝やっていたグラインドボーンのドンジョがもうすぐ見れるようになりそうですね。ドンジョばっかり。

他にも魅力的なのがいっぱいありますよ。
by sora (2010-07-24 13:58) 

kametaro07

soraさま
リンクありがとうございます。
仰るように接続遅いようです。
特に我が家の接続自体があまり良くないことも重なってだと思いますが・・・。
mediciはグラインドボーンのドンジョが見れるようになりましたね。
今見始めましたが、現代に置き換えられた演出でミュンヘンと同じ回り舞台ですが、ずっと普通のようです^^。
騎士長殺害場面は生々しくてちょっと・・・ですが。
以前ターフェル、パーペが出演したヴェルビエの、これまた「ドンジョ」を見たことがありますが、やはりmediciでしたね。
ARTEも何回か試してみます。
by kametaro07 (2010-07-25 22:13) 

T.T

ケント・ナガノのこの話。もともと、辞任せざるを得なくなっている瀬戸際の公演だったのです。
ヨーロッパ系の指揮者が、アメリカ大陸のどこかで大きなポストを務め上げても。アメリカ圏の指揮者がヨーロッパ圏の大劇場・著名オーケストラのポストを円満に契約更新しないですね。
’文化’の軋轢に巻き込まれてしまって、結局’契約更新しない’と言わざるを得なくなったケント・ナガノ氏。残念です。
by T.T (2010-07-30 14:44) 

kametaro07

T.T さま
コメントありがとうございます。
>辞任せざるを得なくなっている瀬戸際の公演だったのです
私もこの公演の前後、ケント・ナガノ氏が2013年以降の契約をしないというニュースは見ていたのですが、その理由についてまでは分かりませんでした。
>’文化’の軋轢に巻き込まれてしまって、結局’契約更新しない’と言わざるを得なくなった
ミュンヘンというところはティーレマンのミュンヘン・フィル退任劇といい、何かいろいろありそうなところですね。
今回のケント・ナガノ氏へのブラヴォーは、観客の辞めないでほしい・・・という気持ちの表れもあったのでしょう。

by kametaro07 (2010-07-30 18:18) 

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