SSブログ

ワルキューレ・・Bayerische Staatsoper・・2012/3/25 [オペラ]

BLOG6740.JPG
Musikalische Leitung Kent Nagano
Inszenierung Andreas Kriegenburg

Siegmund Klaus Florian Vogt
Hunding Ain Anger
Wotan Thomas J. Mayer
Sieglinde Anja Kampe
Brünnhilde Katarina Dalayman
Fricka Sophie Koch
Helmwige Erika Wueschner
Gerhilde Danielle Halbwachs
Ortlinde Golda Schultz
Waltraute Heike Grötzinger
Grimgerde Okka von der Damerau
Siegrune Roswitha C. Müller
Roßweiße Alexandra Petersamer
Schwertleite Anaïk Morel

この公演こそ最大の目的。
来た甲斐のある大変素晴らしい公演でした。

ナガノらしい大袈裟な表現のない、引き締まった演奏は淀みなく流れ、緊張感が緩むことはなく、物語を語りつづけました。

歌手はダライマン、アンガー以外はドイツ語圏出身。
フランス人のコッシュも名前からしてドイツ系でしょうから、ドイツ語を話すのではないでしょうか?
またダライマン、アンガーも流暢にドイツ語を話します。
言葉の勢いと演技はまさに楽劇。
主要登場人物全員、以前聴いたことがある人たちばかりでしたが、それぞれイメージを変え、この公演に溶け込んでいました。
歌についてはもちろん、容姿も見栄えのする人たちばかりで、こうあって欲しいという観客の抱くイメージとピッタリ重なって、観客は感動したのでしょう。
少なくとも[猫]はそうでした。
ナガノの引き締まった演奏が、歌手の歌や演技を、より鮮やかに浮かび上がらせる最大の要因だったことは言うまでもありません。

オリジナルの話では、ジークムントとジークリンデの年齢は10代の少年少女だと聞いたことがあります。
もちろんオペラの公演で、そんな年齢の歌手が歌うことは不可能なので、おじさん、おばさんが歌うわけですが・・・
この演出では、なるべくオリジナルの年齢設定に近づけようと、メイク、衣装を決めているように見えました。
カンペ&フォークトはもちろんのこと、ダライマンが本当にかわいい少女なのはズッコケるほど、ビーーーックリ\(・o・)/! メイクの力ってすごい。
ブリュンヒルデは神だから年齢まではわかりませんが・・・・・。

演出は読み替えのないもので、シンプル。
一幕では妖精か精霊のように、ブルーグレーのワンピースをまとった少女を何人も登場させ、黒子のような役割を担わせていることが、素朴で純粋な透明感のある空間を作り上げてます。
また、神々はどこの家庭でもありそうな表現を使って、観客に身近な存在として伝えています。
2幕冒頭などはブリュンヒルデがヴォータンに槍と盾の構え方を教わっているところに、秘書が仕事を持ってきて、ブリュンヒルデは父親ともっと遊んでいたいというように父親の周りをウロウロ・・・・
フリッカのヴォータンへの接し方もどこかの家庭にありそうです。

物議となっているのが、3幕始まる前にダンス・・・スカラもそうでしたが、ダンサー登場は一種の傾向でしょうか。
馬のダンスだそうです。
これは気づかなかったんのですが、たまたまご一緒した方が教えてくださいました。
納得できるのですが、長いため、観客席はブーやブラヴォー、拍手で騒然となってしまい、ダンスが終わってナガノが構えているのにもかかわらず、なかなか静かにならないのが/(-_-)\
もちろん音が鳴るとすぐにシーンとなりましたが・・・。
このダンスは時間がもう少し短ければ自然だと思うのですが・・・・。

幕が上がると剣で戦う5,6人の集団。
一人、その戦いから逃れ、舞台中央でフードを取り、上を見上げて立ち尽くす。
どこから来たの?というところはパルジファルと一緒ですが、
雰囲気は全く違って、スポットライトに照らされる姿は輝かしい。
新種のヘルデンといわれるフォークトですが、10代の少年に近いイメージを作り出せるこの少年声は貴重です。
純粋な少年声でも芯があって、オケが厚く鳴ろうが、ビーンと響く強さが不思議くん(フォークト)の魅力。
今までにないヘルデン、そしておそらく、これからもないであろうヘルデン。
間違いなく、半分神の血が流れてます。
この純粋な少年が何故、死ななくてはいけないのか?
ストーリーを分かっていても、思わず、戦ってはいけない!逃げるのだ!と話を変えたくなって・・
<(ToT)>
ヴェルゼーヴェルゼー・・はそれほど大伸ばしはしないのですが、大袈裟な表現はしないナガノの意向でしょう。

カンペは初めて聴く人かと思うほど、リセウで観たクンドリとは完璧に別人。
髪をショートにして、赤いワンピースを着た姿はかわいらしい少女です。
見た目だけでなく、歌も全くイメージを変え、少女らしい。
イメージを変えるのはプロだから当たり前とはいえ、ここまで違うかと感心するほどです。
子供が宿っていることを知った時の表現はマイヤーさまに限りなく迫っていて、
むしろ声が若い分、マイヤーさまを超えてるとさえ思えた瞬間もありました。

アイン・アンガーは前日グレーミンを歌ってましたが、この日もご活躍。
非常に目鼻立ちのはっきりした大柄な人で、オペラ界の阿部寛。
グレーミンよりずっとハマリ役です。


一幕終了のカーテンコールでは早くも拍手喝采、ブラヴォーー、床を踏み鳴らすほどの賞賛の嵐
BLOG6739.JPG

二幕が始まると、ブリュンヒルデとヴォータンが立っていて、先に書いたように、槍や盾の持ち方を教えてるわけですが、なんとも心温まる光景で、二人の間の愛情が表現されてます。
ダライマンがかわいいのにもビックリでしたが、T・J・マイヤーがこれまたご本人とは分からないほどのメーク。
この二人はパリの「ワルキューレ」でも聴いていますが、全く違う役作りをしていました。
ヴォータンのジレンマ、怒りはパリでは抑えがちに表現されてましたが、今回は言葉の勢いも演技も激しく、ストレート。
演出上の違いということもあるかもしれませんが、パリと地元ドイツでは気合の入り方が違うようにも思えました。
その激しさに若さを覗かせるようなところもありましたが、迫力はこの上ないものがあります。

何度も書いてしまいますが・・・
ダライマンは小柄で丸顔なのが、ほーーーーーんとにかわいい、写真でお分かりいただけるかと。
歌も文句なし。

3幕のクライマックスは舞台に何もなくなり、二人だけで繰り広げられるガチンコ勝負。
最後燃え盛る炎に包まれるブリュンヒルデのそばを離れ難く、見守り続けるヴォータンの姿は印象的でした。

フリッカ役のコッシュがこれまた上手かったー!
オクタヴィアンやシャルロッテでも声が前にきれいに伸びて、上手いなーという人ですが、ワグナー歌いになっても良いのじゃないかと思えるほど。
でもそれももったいないでしょう。
甘えるようにヴォータンに絡んだり、思いっきり上から目線でつめ寄ったり・・・ほーんと真に迫ってるのなんのって。
とってもスマートできれいな人なので、こんなふうに迫られたら拒否できませんヨ・・・殿方のみなさま。
見たら、迫られたいって思うに違いありません。

カーテンコールは大変なブラヴィーでした。
BLOG6741.JPG
BLOG6742.JPG
BLOG6743.JPG
BLOG6744.JPG

デマチ・・・・
不思議くん(フォークト)に
「日本ではたくさんの人があなたのローエングリンを待ってます。」
と声をかけたら・・・・
「Ich auch.」
と言ってくれました!
もちろん何があるかはわかりませんが、
海水を飲んでしまうような時期でもなし・・・
歯をぬくこともなく、元気で来日していただけることを楽しみにしましょう。

代役として歌ったマイヤーには
ハードスケジュールお疲れさまでしたと声をかけえたかったのですが、
おそらくバッチリメークを落とすのに時間がかかったのでしょう。
次の日早朝出発のため、断念。

(o・・o)/

画像 596.jpg
4月5日追記
パリのワルキューレの写真です。
20010年6月のダライマン(中央)と
T・J・マイヤー

ダライマンは小さくなりましたよね。
nice!(0)  コメント(6)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 6

galahad

おお〜写真ばっちりですね!
kametaroさんが何度も書かれている様子から、ダライマンよほど可愛かったんでしょうね。
BSOのビデオでちょこっと見ましたが、ノートゥングを抜いた時にあんなにうれしそうな顔をするジークムントってはじめて見たような気がします。声は不思議だけど、少年っぽくていいですよね。
ラジオで聴いた演奏も良かったと思います。
ローエングリンのことデマチで言ってくださったんですね!
たしかに、何があるかはわかりませんけどちょっと希望は持てるかな?
楽しみにしてます。
by galahad (2012-04-04 20:59) 

kametaro07

galahadさま
ベルリン・スカラ・リングも良いですが、バイエルン・リングも良いですヨ。
ローエングリンのことは来日するかどうか聞くつもりはなかったのですが、ニコっと笑っての即答は予測してなかったので、ドギマギしてViel Erfolg としか言えませんでした・・・・・
もう少し気の利いたこと言えれば良かったのに・・・・・(vv;
ドイツ語はずっと勉強してないし、使わないから忘却です。
by kametaro07 (2012-04-04 23:27) 

hbrmrs

kametaroさんの鑑賞記をとても楽しみにしていました!
私のblog鑑賞記では、個別の歌手の感想を省略してしまいましたが、きっとkametaroさんの方でレポを書いてくれるだろうと思っていました。よっぽど「その他の歌手については、kametaroさんの方でお読みください。」って記事に書こうかと思ったくらいですよ(笑)。

ダライマン、おっしゃるとおり可愛く仕上がっていましたが、この人、以前は恰幅が良かったので、間違いなくダイエットに成功しました(笑)。

ソフィー・コッホ(コッシュ)は、とても良かったと思いました。私は個人的に高く評価している歌手です。フリッカを歌うにあたって、かなり自らのスケールをアップさせた感がありました。

kametaroさんは、今後の続き(ジークフリート、黄昏)を御覧になる予定ですか??私は予定が無いので、レポお願いしたいなあ(笑)。
by hbrmrs (2012-04-05 06:31) 

Kew Gardens

連日のドイツならでの"読替”オペラに疲れ、またかもと恐れていましたが、あっけないくらいストレートでト書きに忠実(ですよね?)なワグナー楽劇に拍子抜け。 3幕のダンスは長すぎですが、見事だと思いました。 空に飛び立つ前の、いきり立った鼻息の興奮した馬の様子に始まり、たてがみやしっぽをなびかせて天空を縦横無尽に駆けめぐるところまで、しっかり表現されていて、Metの不気味にギーギー音を立てるマシーンよりずっとよかったです。 2列前のタキシードを召したおじさまは、お気に召さなかったようで、盛大に"ブー”していましたが、ちょっと対抗したくなって"Brave!"と小声でいってみた弱気な私ですが。

出演者は皆素晴らしくて、観客の歓声もそれに呼応したものでしたが、最大の功労者はやはりナガノでしたよね。 ピットに立つやせた背中も大きくみえましたし、舞台の歌手にキューを出す無駄のない明快な手の動き、大作の総司令官にふさわしいと思いました。 

初めて生で聞いた不思議くんの声にはびっくり!  単なるボーイソプラノだったら、あんなびんびんした響きと音のスピード感がないですよね。  劇場で実物を聞いてみないとわからないものでした。 イタ物とか役の幅をひろげないでいいですから、貴重な存在として今後も活躍していただきたいです。 

それにしても、ステージドアでの不思議君の話し声が、いわゆる落着いた大人声で、歌声との違いに2度びっくり。 苦悩君=Kaufmannとは全くの逆パターンですね! 

by Kew Gardens (2012-04-05 17:34) 

kametaro07

hbrmrsさま
ダライマンについて、思わず、パリのワルキューレの写真を見直してしまいました。
仰るとおり、大きさが違います^^。

>ソフィー・コッホ(コッシュ)
いつもいいですよね。私も好きです。

>今後の続き(ジークフリート、黄昏)
今のところ予定なしですが・・・・
他にいらっしゃる予定の方はいるはず。
レポを期待しましょう。

それより・・・
近々、他の公演で羨ましがらせるかも?・・・ハッハッハッ
悪しからず
性格悪くてスミマセン/(^o^)\
かも?ですから。
by kametaro07 (2012-04-05 21:28) 

kametaro07

Kew Gardensさま
そうでした。
オネーギンの前のマクベスがワケの分からない読み替えと仰ってましたね。
あのダンスをすぐに馬と見破ったのはさすがです。
私は前もってダンスはいらない、早く始めろという騒ぎがあったということは聞いていたので、どうでもよいから早く終わらないかなーぐらいで見てました^^;
仰るようにほとんど読み替えなしのストレートな演出。
2幕が岩山でなく、ヴォータンの執務室のようなセット、3幕も岩山という雰囲気ではありませんでしたが、全く違和感はありませんでした。

>最大の功労者はやはりナガノでしたよね。
同感です。

>ステージドアでの不思議君の話し声が、いわゆる落着いた大人声
本当に、どうして歌うとあの声がでるのか?
不思議ですよねー。
by kametaro07 (2012-04-05 22:04) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。