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ローエングリン・・・バイエルン国立歌劇場来日公演・・・NHKホール・・・2011/9/25 [オペラ]

指揮:ケント・ナガノ
演出:リチャード・ジョーンズ

ハインリッヒ王:クリスティン・ジークムントソン
ローエングリン:ヨハン・ボータ
エルザ・フォン・ブラバント:エミリー・マギー
フリードリヒ・フォン・テルラムント伯爵:エフゲニー・ニキーチン
オルトルート:ワルトラウト・マイヤー
王の伝令:マーティン・ガントナー

バイエルン国立管弦楽団/バイエルン国立歌劇場合唱団


バイエルンはグルベローヴァの活躍の本拠地といっても良いところで、[猫]にとっては比較的馴染みのある劇場です。

今回の来日公演は「ロベルト・デヴェリュー」は本場で観ているので、他の2公演のみ鑑賞。

今まで何回か本場で聴いたバイエルンのオケは、派手さはないものの切れ味があり、常に整然としながらも流麗、安定感抜群という印象があります。
今まで一度として違和感を覚えたことはなく、いつも安心して音楽に浸れる満足感の高いオケです。

ケント・ナガノで聴いたのは突拍子もない演出のドンジョだけですが、必要最小限にアクセントを抑えた演奏は上品かつ痛快ともいえる心地よさ、歌手全員にもしっかり指示が行き渡り、皆同じ大きさのドングリ状態。
ケント・ナガノの指示が隅々まで行き届いていること、その指示にピッタリと合わせることのできるオケと歌手。
実に小気味良い公演でした。
他の指揮者であっても反応が素晴らしく、なんら不安を感じることなく堅実に仕事をするオケはケント・ナガノが作り上げてきたものでしょう。

今回の来日公演では100名近くの団員が来日拒否をしたということが報道で話題になっていましたが、それよりも「ローエングリン」の会場がNHKホールということの方が[猫]が抱いた懸念材料でした。
本場の音響空間とは全く異なります。
本場で聴くほどのキッチリ感は乏しかったのはいたしかたなし・・・・
しかし、それはほとんど問題なく、安心して音楽空間に浸ることができました。

ケント・ナガノ指揮の演奏は大袈裟な表現はありません。
余分な贅肉はなし、しかし骨太な「ローエングリン」で満足感の高い演奏でした。

演出についてはほとんど無視して鑑賞してましたが、セットの前に壁が降りて舞台前方を使っての展開になると、共産主義的な雰囲気を漂わせ、東西に分かれていた歴史を暗示しているようにも思えました。
休憩が35分と長いのですが、10分前から幕が開き、出演者達が始まる前から演技をしているのはなかなかおもしろい趣向です。

尚、2階建てセットにもかかわらず、大柄なボータが出演することなったことで、来日前にブログ仲間と以下のようなクイズをしてました。

1.セットは2階建てのままだが、ボータは2階に行かない
2.セットが平屋建てに変更される
3.ボータが2階へ行ったがために2階の床がぬけてボタッと落ちる
4.ボータが階段でボタっと転げ落ちる。
5・意外にも1階と2階を問題なく行き来する。

[猫]は2番と予想してましたが、見事にハズレ。。。
答えは5番、セットを補強したかも?です。
でも2階にいったのは1度だけでした。
プレミエ公演出演のカウフマンはベビーベッドを2階から一階に持ってきて火をつけたとのことですが、ベビーベッドは一階の奥に置かれ、手前に持ってきて火をつける演出に変更。
やはりボータに負担のかかる演技は避けたのでしょう。
というか2階から物を運ぶのは足元がお腹で見えないので無理!
ボータが家の中を歩くとギシギシ音がしたりするほか、演技についても突っ込みどころが随所に・・・・
テルラムントとの決闘の場面、ボータは緩慢に剣をかまえてポーズを取るだけ、その剣に磁石で引き付けられるようにニキーチンがピョコピョコ飛びつく^^;
2幕では幕が開く前からボータが舞台で何か作業をしていたのですが、やがてゴロリとトドのように横たわり、舞台はそのまま進行^^;

そんなこんなも問題なし!
ボータに演技など最初から期待してないし・・・
でも登場した時からその姿は大きさからしてタダモノじゃない!
ガリバーとまではいきませんが、別世界からきた人です!
ローエングリンにピッタリじゃありませんか!
歌声は文句なくカッコイイ!
ただ重箱の隅をつつかせてもらって・・・唯一気になる些細なことを挙げると・・・
名乗りの歌の冒頭部、語尾の子音が強いような・・・?

マギーはチューリッヒで「西部の娘」で聴いたことがあります。
ミニーでは役に入りきった熱い歌唱で魅了してましたが、そのときほど声が響いてきませんでした。
劇場の大きさの違いによるものかとも思えましたが、3幕では響いてきたので、緊張があったか?調子のせいか?
特に非があるというわけではないのですが・・・
マイヤーさまの声が良く響きわたるせいで割をくったのかもしれません。

近年は好不調の波があるということを耳にするマイヤーさまですが、[猫]が聴く時はいつも好調[手(チョキ)]
ゾクっとする悪女ぶり、やはり格が違います。

テルラムントのニキーチンも実力を発揮してくれて良かったです。
ただ声が若いことはいたしかたなく・・・
オルトルートがマイヤーさまならテルラムントはやはりシュトルックマン・・・・・
なんで歯を抜くかなー・・・・・・・・・

伝令役のガントナーが淡々と良い声を響かせて妙に存在感があり、
王のジークムントソンは年齢的にもちょうど良い味わいがありました。

合唱が1幕では舞台奥の上方で歌うことが多かったせいか控えめにしか響いてきませんでしたが、後半は迫力が出てきました。
しかし少々緩い・・・・
メンバーの中に日本人らしくみえる人が結構いて、その為か?ホールの音響のせいか?
でもそれもマイナス要因ではなし。

カーテンコールは大ブラヴィー!
特にマイヤーさまとボータには盛大な賞賛が送られていました。

尚、NHKホールに入ると吹き抜けのホールの2階で4人のラッパ隊が演奏して観客をお出迎え。
皆お揃いの制服を身につけ、七三分けの赤毛のカツラを被ってます。
「ローエングリン」の世界へようこそ、といったなかなか粋な趣向でした。
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Kew Gardens

こんばんは

バイエルンは、1演目だけの鑑賞でしたが、私にとっては、今年の来日オペラ鑑賞の締めくくりにふさわしいものでした。 ただ、NHKホールというのは、私もやはり・・・でした。 ミューヘンのあの歌劇場だったら、素晴らし響きになるのでしょうね。 ワーグナー聞いてみたいなぁ。

バイエルンのオケとケント・ナガノの組合せは初めての体験でしたが、
>指示が隅々まで行き届いていること、その指示にピッタリと合わせることのできるオケと歌手。
を私も感じました。 29日に鑑賞した友人によると、合唱が入るところでは、ケント・ナガノはオケなんかほっといて、合唱に集中。 必死に合唱をまとめていたそうです。 初日の反省でしょうか。 私は、ずれまくった合唱に不満を持っちゃったほうなので、そうじゃなきゃね、と思ってしまいますが。 一方、オケは、整然と演奏していたそうです。 彼の音楽作りを知っているオケは、指揮者が不在でも、コンマスの指示で演奏していたのでしょうか。 

>特にマイヤーさまとボータには盛大な賞賛
ほんと、彼ら二人の素晴らしい歌唱にメロメロでした。 Kaufmannがキャンセルしなきゃ、Bothaのローエングリンは見られなかったわけですから、Many thanks to Kaufmannです。 

ボローニャ歌劇場はイタリア物、バイエルンはドイツ物と、それぞれがお得意な演目でよかった。 日本での公演は、ただでさえ、アウェイなのに、今年は、トラがメンバーに入ったりで、オケも合唱も緊急事態。 それでも演奏できるのは、やはり身体に染みついている音楽・経験があるからだろうなと思いました。 万が一、ボローニャとバイエルン、それぞれが一演目でも、ドイツ物、イタリア物を予定していたとなったら、どんなことになっていたやら。 

by Kew Gardens (2011-10-02 19:48) 

それいけ、ばいきんまん!

kametaroさま

こんばんは。
ローエングリーン最終公演に行きました。
ボータ、マイヤー、ニキィーティン、素晴らしい出来栄えでした。
ウイーン・マイスター、バイロイト・ワルキューレ、
いずれの素晴らしいボーターより更に一段階超えてました。
オケは、進むにつれてバイエルンらしくなっていきました。
音がそろい始めて濁りが減って美しい音楽に展開していきました。
満足です。
今後東京では、
このような外来歌劇場公演での幸せな経験はできなくなるのかも、
という思いが時々よぎりながらの鑑賞でした。

アリアドネとグル様アリアコンサートにいらっしゃるのでしたら、
感想UPを楽しみにしております。

by それいけ、ばいきんまん! (2011-10-02 21:21) 

kametaro07

Kew Gardensさま
本場ではなんといっても新制作リング!
お互い観にいく機会があるといいですね。
>ずれまくった合唱
これが私の席からはそれほどひどくはなかったのです。
PA使用疑惑のある音響なので、席によって聞こえ方が随分違うのではないでしょうか。
>バイエルン、それぞれが一演目でも、ドイツ物、イタリア物を予定していたとなったら、
バイエルンは「ロベルト・デヴェリュー」がイタリア物ですが、なんといってもグルベさまの公演です。
グルベさまの公演は演出も共演者も指揮者もグルベさまがOKを出した人と聞いたことがあります。
グルベさまプロデュースといっても良いと思うのですが、日本公演でも評判は良いようですね。
by kametaro07 (2011-10-03 16:46) 

kametaro07

それいけ、ばいきんまん!さま
>いずれの素晴らしいボーターより更に一段階超えてました。
ボータが絶好調でよかったですね!
代役を引き受けてくれたことに感謝です。

>このような外来歌劇場公演での幸せな経験はできなくなるのかも、
本当にそういった懸念はありますね。
今後発表になる来日公演のキャストは現状の日本に来ることを承諾した人となるでしょうが、来ない人はいるでしょう。

>アリアドネとグル様アリアコンサート
私自身、鑑賞するのを凄く楽しみにしてます。


by kametaro07 (2011-10-03 16:59) 

Ree

kameratoさま

本当にボータとマイヤー様、素晴らしかったですよね。
日本であんなに素敵なオルトルートとローエングリンが聴けて幸せでした。

ボータは今まで、カラフ、ラダメス、ドン・カルロと実演を聴いたことがあったのですが、演技は下手だし(笑)、その時は歌唱も印象に残らず、苦手なテノールだったのですが、今回のローエングリンを聴いて、「今どうしても聴きたいテノール」に一挙に昇格してしまいました。

2013年のザルツのイースター音楽祭、ティーレマンの振るパルジファルのタイトルロールは、確かボータが予定されています。
これ、何とかして聴きに行きたいです。

でも、やはりあの体格は少し心配です・・・
kameratoさまがチェックされたように、2階への昇降は1回だけ、勿論カウフマンがやったようにゆりかごを持って上がるなんて無理でしたけど、その1回のみの階段の上り下りも危なっかしくてひやひやしました。

これ以上太りすぎず、かつ、良い声を維持してワグナーのレパートリーを増やしていってほしいところです。
by Ree (2011-10-03 17:55) 

kametaro07

Reeさま
ボータに演技を要求する必要はないと思えるほど素晴らしかったですね。
仰るようにこれ以上太らないでほしいものです。

>2013年のザルツのイースター音楽祭、ティーレマンの振るパルジファル
タイトルロールがボータ!オケはSKD!
なんとも魅力的です。
しかしイースターの頃に休めるか?
まだ先のことではありますが、私の場合かなり難しそうです。
ぜひいらっしゃってください!

by kametaro07 (2011-10-04 17:13) 

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