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Opera baseの統計 [雑感]

歌劇場、指揮者、歌手などのスケジュールを調べるのに便利なOpera base・・・
数ヶ月前に気づいて、書いておこうと以前から思っていたのですが、2009・10シーズンの統計が発表されてます。

統計によると、

国別オペラ公演数   右の( )内は人口
1 ドイツ 7892 (81.758m)
2 アメリカ 1935 (308.746m)
3 オーストリア 1426 (8.356m)
4 フランス 1261 (65.822m)
5 イタリア 1206 (60.419m)


25 日本 103 (127.360m)
なんとドイツの公演数は全世界の公演の3分の1

人口(100万人)当たりの公演数
1 オーストリア 170.7 (1426 / 8.356m)
2 エストニア 114.9 (154 / 1.340m)
3 スイス103.4 (805 / 7.786m)
4 ドイツ 96.5 (7892 / 81.758m)
5 チェコ 51.8 (553 / 10.675m)


39 日本 0.8 (103 / 127.360m)

都市別公演数
1 ウィーン 617 (2.00m)
2 ベルリン 521 (3.44m)
3 ロンドン 492 (8.28m)
4 モスクワ 427 (10.56m)
5 ハンブルグ 379 (1.77m)


79 東京 81


この他作曲家、現代作曲家、女性作曲家、演目別などの統計も載ってます。


ドイツの公演数が多いのは想像できることですが、全世界の3分の1に達するとは思いませんでした。
質的に言えば大したことない公演も多いかもしれませんが、指揮者、演奏家、歌手達はベルリン、ミュンヘン、ドレスデンなど世界的な歌劇場に出演することを目指して、地方の歌劇場で下積みするというところでしょうか。

この公演数の多さはドイツが独自の進化をして、演出が多種多様になってしまうのは当然、必然。
また行き過ぎる演出に批判が出てくるのも当然、必然。

コンサート等も考えると、ドイツに指揮者、演奏者、歌手など音楽家達が大勢集結しているということでもあります。

歴史的にみて、ドイツはもともとザクセン、バイエルン、プロイセンなどの集合国家であるため、各州、各都市にたくさんの歌劇場が残ってます。
その辺は都市国家だったイタリアと状況が似てますが、この二つの国におけるオペラの位置づけは大きく異なるものとなってしまいましたね。

ドイツもイタリアも公の補助で成り立っていますが、ドイツの場合、ほとんどは州の補助でしょう。
公の補助というのは結局住民の税金なので、民意なくして長期に続いていくわけはありません。
公的補助のおかげで、ドイツの歌劇場はウィーン、チューリッヒ、パリ、などに比較すると半額で楽しめる(バイエルンは高い)。
つまり公演に行けば払った税金は戻ってくる、ということで住民は納得しているのでしょう。
地方の歌劇場はほとんど専属指揮者、専属歌手で行われることが多く、オラガ町のオペラチーム、といった愛着で劇場に通うのかもしれません。
それでも徐々に集客数は減ってきているようですから今後補助が縮小し、劇場も淘汰されてしまう可能性はあるかもしれません。
しかし・・・・ミュンヘンのフェストシュピーレの野外コンサートに行ったときのことです。、
楽章の間では拍手をしてはいけないのに観光客から拍手が出始めてしまったのですが、それを諌めるのは地元の観客。
みんな良く音楽を知っているのです。
こうしたクラシック好きの国民性がこれからもオペラを支えていくことでしょう。

イタリアについては補助が縮小されないことを願いますが、それもイタリア国民が決定すること。
イタリアオペラの伝統はイタリア国民によって守られるに違いないと思ってますが・・・・。

[猫]はリンデンの「パルジファル」がオペラにハマッたきっかけであり、ドイツオペラの方がイタリアオペラより好みなのでドイツに行くのが好きですが・・・・。

ドイツの歌劇場の特徴として多くの役が専属歌手(アンサンブル)によって歌われ、ほんの数名のゲストが加わって公演が行われるということがあります。
もともと経費節減のための専属歌手制度なのでしょうが、この劇場のシステムは指揮者とオケ、歌手の意志の疎通が重要なドイツオペラに適したシステムに思えます。
[猫]がハマッた「パルジファル」はクンドリー以外は皆リンデンのアンサンブル(パーペも未だにリンデンのアンサンブル)でした。
リンデンに限らず、この専属歌手の存在が質の高いドイツオペラを維持するのに大きく貢献しているように思います。

もちろん、専属歌手以外でもドイツ国内の公演が多いのでバイエルン、ドレスデン、ベルリンで歌う頃には皆お互い旧知の仲・・・になっているようにも思えます。
これは指揮者と演奏者にも言えるのではないかと思っていて、エッティンガーがバイエルンで振っても、ヴァイグレがドレスデンで振っても、音楽監督?とも思えるほどオケの反応が素晴らしい!

伝統的なものでしょうが、指揮者の権威、時に演出家の権威が強く、出演者はそのコンセプトにあわせてチームとして公演を作り上げるということが見受けられます。
その為そのコンセプトでは歌えないという歌手も出てきて、キャスト・チェンジの理由になることもしばしば。
それは歌手の人達もそれぞれのイメージ、主義があるので当然。
でもコンセプトが統一された公演は思いがけない新鮮さ、衝撃、おもしろさを味わえて感激!であります。
それは音楽に新しい美しさを見出すことが出来たり、歌手が違った面を見せてくれたり・・・・
観客の反応も活気に満ち、出演者達もやり通した充実感で皆いい表情を見せてくれます。

ドイツは一人一人が良いパフォーマンスをするということより、チームとして良い公演を作ろうという姿勢が強いように思えます。
伝統的なオペラの深さを追求しつつも、それだけではこれだけ多くの公演に観客を呼び続けるのは不可能、チームで積極的に新しい表現も追求することが当然になっているのかもしれません。

ドイツの演出が変だといっても[猫]は幸い今までそれほど酷い演出にはであってなく、分からないからといって頭にくることもない。
公演というのはその国、土地の観客のためにあると思うので、分からなくても当たり前くらいの気楽な感覚で観てます。

[猫]のオペラの見方は演奏55%、歌40%、演出5%といったところで、変な演出は無視するだけのこと。

演奏が大切というのは歌手が主役のイタリア・オペラでも一緒で、歌手が主役であるからこそ、演奏は縁の下の力持ちで歌手を引き立てるものでなくてはならないという意味で重要だと思ってます。
オペラは総合芸術、歌手一人では如何ともしがたいところがあり、演奏のテンポが速すぎても遅すぎても本来の良さが出せない、あるいは息があわなくて美しく歌えない。
また同じように歌っても演奏のアクセントや繋ぎ、間のとりかたで歌の印象は随分違って聴こえると思います。


ドイツは年に一度くらい行きたいなー・・・・・
でも他も・・・・・・
歌手の人達はその活躍するホームとでも言える歌劇場で聴くのが一番・・・・
それにやはりキャストで興味がある組み合わせは聴きたいし・・・・・

しばらくじっとしますが・・・・そのうちまたウロウロせずにはいられないかも?
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コメント 6

keyaki

なかなか面白い統計ですね。ドイツがダントツだというのは分っていましたが、ここまで差があるとは.....
ドイツといってもイタオペの公演がダントツに多いわけですから....これってイタリアへの憧れ? オペラ歌手にとって、ドイツは食っていくために重要な国ですね。
by keyaki (2011-04-18 16:26) 

kametaro07

keyakiさま
>ドイツといってもイタオペの公演がダントツに多いわけですから
それは歴史的にみてもイタリアから始まったものですし、作品数が違いますよね。

>ドイツは食っていくために重要な国ですね。
歌手に限らず、演奏家、指揮者、全ての音楽家の人達にとって重要な国でしょう。
特に指揮者の人にはドイツは天国じゃないかと思うんですけど・・・・。
ただ公的補助の関係で政治家の口出しがあるという問題もあるようですが・・・・。
お金持ちの寄付による経営でもそのお金持ちの意向が入るという問題もあるのかな???

今後のイタリアもグリゴーロのようなクロスオーバーに活躍するスターによって、また活気を取り戻すことでしょう。
by kametaro07 (2011-04-18 20:00) 

cachaca

興味深い分析をありがとうございます。ドイツは専属歌手制度が多いんですか。この冬少しですが行ってみて、有名歌手に頼る一点豪華主義より(その一点が出ないことが少なくないのに)、チームとして作り上げていくほうが私には好ましく思えました。この統計で見てもウィーンの多さは際立ってますね。これでは質の低下に目をつぶるのもありだなと思います。次回はドレスデンを入れるつもりです。
by cachaca (2011-05-01 20:43) 

kametaro07

cachaca さま
分析というほどのことはなく、統計を見て今までドイツで鑑賞した印象を書いただけなのですが・・・・^^;
バイエルン、ベルリンのような一流歌手がゲストで出演する場合でも脇役が専属歌手で固められると指揮者はゲストとの意思疎通に専念できますから、まとまりやすいのではないでしょうか?
ウィーンも同様の制度だと思いますけど・・・
あそこは黙っていても集客率が90%以上ですから手を抜いちゃってるのかしら?
せっかく一流歌手さんたちを揃えても統一感がなかったり、息が合わず実力を発揮できなかったりするともったいないですよね。
もちろんドイツだって今まで良いと思われる公演を選んで見てますが、良くない公演もあると思いますけど・・・。
ドレスデンのオケは劇場の音響の美しさもあって大好きです。
オペラだけでなく、観光も楽しんでください。
by kametaro07 (2011-05-01 23:38) 

cachaca

人口当たりの公演数がダントツ多いというのはやはり地元民より観光客に依存してるんじゃないかと勘ぐりたくなります(^^)  でもそれでは2位のエストニアの説明がつかないような。。。いや、案外エストニアも観光客が多いんでしょうか??
ドレスデンの観光はフラウエン教会がいいでしょうか。
by cachaca (2011-05-02 16:31) 

kametaro07

cachaca さま
>地元民より観光客に依存してるんじゃないかと
それはあるでしょうね。フェスティヴァルも多いですし・・・。
エストニアは私もあれ?どうして?です。
ドレスデンはフラウエン教会だけでなく、ツヴィンガー宮殿、緑の丸天井など見所はありますが、ほとんどゼンパーオパー周辺にあるので1日で回れると思います。お時間があれば近郊のマイセンとか・・
エルベ川クルーズは冬はないかもしれませんね。
回数は少ないですが、フラウエン教会でコンサートが行われる時もあるようです。
by kametaro07 (2011-05-02 23:41) 

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