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ローエングリン・・・フランクフルト歌劇場・・2013/3/29 [オペラ]

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Musikalische Leitung  Bertrand de Billy
Regie  Jens-Daniel Herzog
Heinrich der Vogler  Falk Struckmann
Lohengrin  Michael König
Elsa von Brabant  Camilla Nylund
Friedrich von Telramund  Robert Hayward
Ortrud, seine Gemahlin  Michaela Schuster
Der Heerrufer  Daniel Schmutzhard

フランクフルトのローエングリンは貞子の親戚か?(・◇・)

虚像の世界によって我々は操られてないか?
善とは悪とは?
悪と決めつけたらとことん虐め抜く人々
一方で善と信じていた人が起こす凄惨な殺人

舞台には白い幕
それが紗幕で、序曲が始まるとやがて浮かび上がるのは観客席にに向けられた一点の光
さらに浮かんでくるのは幕の向こうで観客の方を向いて座っている人々
映画館の内部
紗幕は舞台の人々にとっては映画のスクリーン
時代は服装や髪型からして40年代

序曲は舞台の情景と重なって、ニューシネマパラダイスのようなノスタルジックな暖かさ。
ベルトラン・ド・ビリーは2年前のプレミエからの指揮者ですが、演奏は速めながら、その後も終始映画館の内部で展開する演出にはピッタリで、舞台で次々と起こることに集中させられるものでした。
オケピはかなり深く、おそらく一番深い位置に設定されていたと思うのですが、地から湧き上がるような力強い音楽がホール一杯に満ちる充足感が素晴らしい。
また合唱も素晴らしく、演奏と同様、しっかりと深く根付いた大木のような揺るぎなさを感じるものでした。

劇場のH/Pで、イギリスの雑誌で最優秀歌劇場に選ばれたことが載っていて、こういった賞はビジネスの一貫でしかないので、いつも当てにせず、傍観しているだけなのですが、あながち否定できないものでした。
特にこの日の観客は素晴らしく、
平戸間前方で聴いていると、後ろに多くの観客がいるにもかかわらず、人の気配を感じることなく、歌手の人達の声がダイレクトに飛んでくるのも迫力で、まるでほんの数人のプライベートな空間で鑑賞しているような贅沢感。
侮れじフランクフルト!

セットが終始映画館の内部というのはブラバント公国というよりも、ブラバント村のある日の出来事、といった趣で一癖も二癖もある演出
しかし、そこに息吹を吹き込むことができる凄腕のキャストぞろい!

特にシュスターがキャストチェンジで歌うことになったことは幸運この上ないこと
4月途中からはオリジナルキャストの一員ですが、この時期はザルツでクンドリを歌っていて、この日はちょうどその合間にあたる日でした。
始まる前に、短期間で演出を覚え、舞台に立ちますといった内容のアナウンス
しかし、その溶け込み方は何年もやっているように自然で、表情、演技たるや実に上手い!
正に千両役者!
さらにオルトルートを歌わせたら今最高の人ではないかと思わせるほど油がのりきっている歌いっぷり!
グーっと前に身を乗り出しながら、ヴォータン!力強き神よ!と歌ったときの迫力には思わずこちらの身がのけぞりそうになるほど。
現代に写楽が生きていたら、ぜひ大首絵にしてほしい人ナンバー1!

相方のテルラムント役ヘイワードも表情、演技が上手い!
最初は歌い方もクールで表情も冷たいインテリ風
ところがところが・・・
決闘の場面はロシアンルーレットで、恐ろしさにガタガタ震える姿は少々コメディっぽい演技を交え、これは悪い人ではない、普通の人と観客に思わせる。
コメディ風の演技と、臆病者といじめられるのが何とも言い難い、やるせなさ。
それでも惨めにいじめられた後、舞台の劇場の2階に姿を表したときには非常に不気味で冷血、恐い人に見え、とらえどころがない人間性を出しているのが非常によい。
歌も納得の出来で、正に公演のキーパーソンの活躍ぶり。

タイトルロールのケーニッヒは、調べるとドレスデン郊外の街の劇場のアンサンブルだったらしく、スケジュールはほとんどそこのもの
映画『魔弾の射手』は大抜擢というところだったのでは?
ローエングリンの登場がスカラに似てるところもあり、ですが、こちらの方がプレミエは早いので、マネしたとするとスカラの方。
声は高く響かせるところはピーンとした強さがありながら、常に暖かな優しさがあり、名乗りの歌の冒頭はふわっと羽毛に包み込まれるような心地よさ。
演技は堂々たるボータ派の流れを踏襲か?
2幕、エルザの心に疑念が芽生える場面ではローエングリンが苦しそうに跪くといった場面があり
3幕にいたっては、終盤は本当に気分が悪いのではないかと心配するほど汗だくで苦しそう・・・
実際、スタミナという点では不安を覗かせ、終盤は歌が途切れがちになって、名乗りの歌も最後が尻つぼみ・・
それが演出上、そういった歌い方をわざとしているというところもあって、テルラムントを殺してしまった罪の意識で自己嫌悪の塊・・・名乗りも最後は半泣き状態。
( `・ω・) ウーム…演技がボータ派かそうでないかは他の演目、公演でも確認したいところ。

エルザ役のニュルンドはこの前ルサルカで聴いたばかり
ただワグナーとなると声が細い印象
それでもそれが衣装や髪型のかわいらしさと重なってシャーリー・テンプルちゃんのようなお茶目な少女らしさになり ← 例え古すぎー(≧∇≦)分かる人どんだけー???
演出には合っていたように思えました。
疑いをかけられても必死で抵抗ヽ(`Д´)ノ
ローエングリンが何者かなのか、しっかりと持ち物チェック(・・ )( 。。)(・・ )( 。。)
妙に現実的なところが面白い。

ハインリッヒを演じたシュトルックマンは今回も説得力ある歌唱でご立派。
演出的にキャラが単純化されている面もあり、少々一人のど自慢大会的になってましたが、いるだけで公演が引き締まる存在感は相変わらずすごい。
前回はグルネマンツを聴いたのですが、バスが歌う役を歌うようになったのは声の変化を意識なさっているのでしょうか?

最後再びスクリーンを見つめ続ける舞台上の人々に・・・
TVやネットから情報を得ることが当たり前の現代が重なり、
はたして善悪、真偽は常に見えているのか?
虐め、カルト、残虐な事件・・・・
この世の中、夢、幻だったら・・・と思うようなことで溢れかえってないだろうか?
さまざまな現代社会の問題が頭をよぎった作品でした。

カーテンコールはブラボーで沸き返りましたが、中でもキャストチェンジで見事に演じ歌ったシュスターへ最大の賞賛が送られてました。

そういえば、来年4月ウィーンのプレミエ『ローエングリン』の指揮者はベルトラン・ド・ビリー!
演出が違えば、演奏も変わってくるでしょうが・・・
フォークトさまなので、もう少しテンポは遅めがよいなー・・・・
エルザは今回と同じニュルンド、
どんな演出になるのでしょうか。
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