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試練の中の真実・・Opernhaus Zürich ・・・2018/9/28 [オペラ]

 相変わらずの放置。単に怠惰なだけというのは否めませんが、帰ってからすぐに書く気がしないのは次の遠征計画を定めないと落ち着かないというところ。10月上旬には帰国したにもかかわらず、今回は次がなかなか決まらず四苦八苦(大袈裟<(_ _)>)、ようやく決めたのでボチボチ書くとします。5公演溜まってるので全て書くのに年を越してしまうのは間違いないのですが、なんとか次の旅行の前までには書きあげたいものです。

 秋の旅行は古楽&ワーグナー。ただ最初の二日をベルリンにするか、チューリッヒにするかが迷いどころでした。結局、直行便があるということと、その後ミュンヘンに移動することを考えてチューリッヒに入りましたが、ベルリンでは指揮のミンコフスキが怪我のため降板ということで、後ろ髪を引かれる理由は減少した気がしました。
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Musikalische Leitung Ottavio Dantone
Inszenierung Jan Philipp Gloger

Rosane Anna Devin
Rustena Liliana Nikiteanu
Melindo Christophe Dumaux
Damira Delphine Galou
Zelim Deniz Uzun
Mamud Richard Croft
Orchestra La Scintilla
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 ヴィヴァルディはヘンデルと共に歌唱技術を堪能できる作品が多いので聞き逃せません。ただそれほど上演機会は多くないせいか、あらすじを調べてもネット上では大まかなものしかありませんでした。
 君主マムードには第一夫人ルステナと第二夫人ダミラがいて二人同時期に出産。ダミラを愛しているマムードはダミラの子に後を継がせようと生まれてすぐ二人の子を入れ替えたことが悲劇の始まり。子供が長じ、いざ遺産相続となるとルステナの産んだ子ゼリムが不憫でならなくなったマムード。全てを明かしてゼリムに財産を譲るとしたからドッロドッロの顛末に。さらにメリンドの恋人ロザーヌは元ゼリムの恋人というのもドッロドッロ感を増す要素ですが、オリジナルの話は上手く折り合いをつけてハッピーエンドというのがいかにも古楽の作品であります。
 今回の公演は時代を現代に設定した演出で、ハッピーエンドなど、そうは問屋が卸すはずはありません。登場人物一人一人の個性が際立つ演出で分かりやすく、シニカルな面白さで楽しめましたが、最後はハッピーエンドではないと予想しつつも・・・ガーン!・・・でした。

 ロザーヌ役はオリジナルの話よりも更にしたたかな役柄設定で、なんと父親のマムードにまでアプローチするという大胆さ。いつもここチューリッヒで活躍しているフックスがご出産のため降板したのは残念でしたが、代役のデヴィンが実に上手く演じ歌っていて好印象。したたかでありながら最後はオリジナルの話どおりにメリンドへの愛を貫くのですが、その結末がガーン・・・でした。
 ゼリム役はチューリッヒの若手アンサンブル。バイエルンの若手育成プログラム出身で『炎の天使』に出演していた人でした。その時のことはほんのチョイ役だったとあって覚えてないのですが、物憂げでまろやかな歌声で好演。役作りが非常に上手く、愛人の子、さらには恋人も去ってしまったということで暗く寂し気なニュアンスに溢れて適役でした。
 メリンド役のデュモーは見事なアジリタ三昧を披露。ゼリムが後を継ぐとなった後のブチギレ状態は強烈で、声質といい雰囲気といい、悪役だけでなく、ブチギレ役も独特の存在感を示せる人です。 
 ダミラはメイドで愛人という設定。いつまでたっても結婚してくれないマムードに対して不満を爆発させてかなり激しく演技をしても様式感を逸脱しない歌唱だったのがガルー。
 諸悪の根源とでもいったマムードは品は良いけど優柔不断で少々情けないオッサン。正妻のルスティナはおっとりと上品な雰囲気で実子ではないと分かった後でもメリンドに対しても実子であるセリムに対しても愛情溢れる人。それぞれベテランとあってそつなく演じたのがクロフトとニキテアヌ。

 ダントーネ指揮チューリッヒの古楽オケ、ラ・シンティッラの演奏は演出や歌手に添ったテンポの変化や間合いで完成度が高く、結末に愕然としながらも楽しめた公演でした。
 
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