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ポッペアの戴冠・・STAATSOPER UNTER DEN LINDEN・・・2018/7/12 [オペラ]

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MUSIKALISCHE LEITUNG Diego Fasolis
INSZENIERUNG Eva-Maria Höckmayr

FORTUNA, DAMIGELLA Narine Yeghiyan
VIRTÙ Artina Kapreljan (Solistin des Kinderchores)
AMORE, VALLETTO Lucia Cirillo
AMORE Noah Schurz (Solist des Kinderchores)
NERONE Max Emanuel Cencic
OTTAVIA Katharina Kammerloher
POPPEA Roberta Mameli
OTTONE Xavier Sabata
SENECA Andrea Mastroni
DRUSILLA Evelin Novak
LIBERTO, LUCANO Gyula Orendt
ERSTER SOLDAT, KONSUL Andrés Moreno García
ZWEITER SOLDAT Benjamin Popson
TRIBUN David Oštrek
NUTRICE Jochen Kowalski
ARNALTA Mark Milhofer
AKADEMIE FÜR ALTE MUSIK BERLIN
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 昨年10月に新装オープンしたベルリン国立歌劇場ですが、なんだかんだ遠征の度に訪れているので早くも六公演目の鑑賞。今回は古楽ですが、古楽を聴くのにも適したサイズの劇場です。

 幕が上がると派手な衣装を身に着けた出演者たちが一列に勢ぞろい。その様は何とも言えない高揚感がありましたが、舞台にセットといえるようなものは何もなし。舞台は床がそのまま湾曲して背後の壁に繋がっているもので、端の方に金色のレオタードとハイヒールを身に着けたマネキンが横たわっているのみ。一言でいうとコスプレ演出のようではありましたが、歌手は結構大変で、歌わないときでも常に舞台上で演技をしているという状況でした。結局出演者の演技が全てなので演技が下手な人がいたら印象も変ってしまうのでしょうが、出演者の好演もあって、登場人物一人一人の個性が分かりやすく際立ち、ユーモアを交えながら現代にも通じる人間模様を描き出していたのが秀逸な演出でした。

 なんといってもポッペアを歌ったマメリ。来日機会も結構あって日本でも人気があるようですが、[猫]は初めて。なるほど人気があるのも納得の美声。リサイタルやコンサート形式での出演が多く、演出つきのオペラの出演機会はあまり多くないようですが、非常に舞台センスも良い人で、ネローネとの愛情表現などは歌いながらもエロティックなからみで体当たりの演技。それでも様式感のある歌は安定感抜群で、もっと演出つきのオペラの出演機会を増やしてほしいと思うほど。野心溢れる挑発的なポッペアでしたが、オッターヴィアの追放に成功するやいなや、オッターヴィアの末路に我が身の末路を見出したかのように不安に苛まれる様子が彼女のその後の運命をも暗示したエンディングになってました。
 ポッペアが不安に苛まれる一方で、乳母役はこれで我が世の春とばかり浮かれ、落ちぶれていくであろうオッターヴィアの乳母に対して嫌味たっぷりに接しているのがさもありなんの面白さでした。

 ネローネ役のツェンチッチは高貴な雰囲気がありながらも自分勝手な皇帝を好演。ネローネについての伝承の一つであるバイセクシャルな面を盛り込みながらの演出は、ポッペアが自分のものとなったとたん、あっさりと彼女ではなく彼氏に興味を移してしまう振る舞いがクールすぎる皇帝でした。何よりマメリとの声の相性が良く、二人の重唱は極上。
 オットーネ役のサバタの優しい声はポッペアを憎み切れず、殺害を企ててもできないという役にぴったり。
 スカラの『タメルラーノ』で代役としてイレーネを歌ったチリッロが今回も様式感のある歌唱を披露。茶目っ気のある演技もさりげなくこなし、途中宙づりで舞台を横切ったのが可愛くて笑えました。
 セネカ役のマストローニの品格ある低い声が作品に重厚な味わいをもたらしてましたが、自害の場面で血潮が飛びすぎてしまって、オケピの中でチェンバロ奏者があわてて楽器を拭いていたのはちょっとしたアクシデントだったかもしれません。
 アモーレ、フォルトゥーナ、ヴィルトゥーナが子役とのダブルキャストだったのも何もない舞台では洒落たアイデアで、まだ小学生くらいの年齢だと思うのですが、見事な歌いっぷりでした。

 ベルリン古楽アカデミーの演奏は典雅な音で緊張感を保ち堅実。指揮のファソリスがスカラで『タメルラーノ』を振ったときと同様、終演後に譜面を高く掲げた姿が印象的。

 愛と策略が渦巻く人間ドラマは聴き応えも見応えもある秀作でした。
 
 この公演は11月のバロックフェストで再演予定です。



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