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マイスタージンガー・・・Bayreuther Festspielhaus・・・2017/8/15 [オペラ]

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Musikalische Leitung Philippe Jordan
Regie Barrie Kosky

Hans Sachs, Schuster Michael Volle
Veit Pogner, Goldschmied Günther Groissböck
Kunz Vogelgesang, Kürschner Tansel Akzeybek
Konrad Nachtigal, Spengler Armin Kolarczyk
Sixtus Beckmesser, Stadtschreiber Johannes Martin Kränzle
Fritz Kothner, Bäcker Daniel Schmutzhard
Balthasar Zorn, Zinngießer Paul Kaufmann
Ulrich Eisslinger, Würzkrämer Christopher Kaplan
Augustin Moser, Schneider Stefan Heibach
Hermann Ortel, Seifensieder Raimund Nolte
Hans Schwarz, Strumpfwirker Andreas Hörl
Hans Foltz, Kupferschmied Timo Riihonen
Walther von Stolzing Klaus Florian Vogt
David, Sachsens Lehrbube Daniel Behle
Eva, Pogners Tochter Anne Schwanewilms
Magdalene, Evas Amme Wiebke Lehmkuhl
Ein Nachtwächter Karl-Heinz Lehner

 この日だけバイロイトへ。この夏の旅行で最も楽しみにしていた『マイスタージンガー』です。天気は良かったのですが、2幕途中で外は大嵐になってしまい木に雷が落ちたとのこと。それでも休憩時にはほとんど風雨はおさまっていたので助かりました。

 席は平土間後方、以前『ワルキューレ』では音が頭上に届かずに少々不満だったのですが、その時とそれほど変わらない位置での鑑賞。これがコスキー演出の舞台セットは両サイドと奥が常に壁で囲まれたせいか、ふわっとした音に包まれての鑑賞となりました。それでも演出によっては少々物足りないと感じることがあるかもしれませんが、今回の演出にはすごく合っていて、ジョルダン(ヨルダン)指揮のやさしく彩り豊かな演奏に包みこまれた作品は、甘酸っぱい香りのする夢見心地の『マイスタージンガー』といった雰囲気の秀作になってました。
 
 何故甘酸っぱい香りがするかといえば、ドイツの歴史、あるいはワーグナーの個人史を語る上で影の部分である反ユダヤ主義が表現されている点で、ユダヤ人という設定のベックメッサーが苛められることといったら見ていて胸が痛くなるほど。それをコスキーは決してこの作品の喜劇性と本質を損なうことなく、最後はドイツ芸術、ワーグナー芸術を讃えていたことに感動しました。
 2幕終盤、民衆から苛められて膝をかかえてしゃがみこむベックメッサーの頭にユダヤ人の頭の風船を重ねて巨大に膨らませたのは、同じユダヤ人であるコスキーの「オラ達はどんな目に合っても負けない!」という意地の現れかと思ってしまいました。しかし、その風船がしゅ~~~んとしぼんでいく様子に大戦時の受難を思い起こし、これまた胸が痛くなってしまったのでした。

 冒頭はワーグナーとゆかりの人々が集うヴァーンフリート荘、ワーグナーがザックス、コジマがエファ、リストがポーグナー、ユダヤ人指揮者レヴィがベックメッサー、ヴァルターが若き日のワーグナーといった具合で始まった舞台。3幕はニュルンベルク裁判のセットの中で民衆が集う歌合戦。大詰めでヴァルターが称号を拒否した直後、大勢いた人々が一斉にいなくなり、ワーグナー(ザックス)一人が残されるという展開。その有様はそれまでの全てがワーグナー(ザックス)の回想と幻想が交錯したもので、裁判という場で全てを告白したかのようにも思えたのでした。残されたワーグナー(ザックス)の様子は観客が感じた胸の痛みと同様の、あるいはそれ以上の痛みを覚えているかのごとく、最後の演説は苦悩に満ちて始まりました。それは全てを事実と認めたワーグナー(ザックス)が、それでも音楽のマイスターとして残した作品は芸術として認めてほしいと観客に訴えているかのようで、その後舞台後方から現れたオーケストラを指揮する誇り高いワーグナー(ザックス)の姿に感動する中、舞台は幕を閉じたのでした。

 夢見心地の『マイスタージンガー』と書きましたが、コスキーは制作するにあたって夢のお告げのごとく毎夜夢の中でワーグナーと話し合っていたのではないかと思うほどです。
 作品にはワーグナーの人生やコジマへの愛情、ゆかりの人々の人間関係がさりげなく描写され、見るたびに何か発見できそうな内容の緻密さがあるのもリピーターの多いバイロイトに相応しく、魅力満載の作品です。

 非常に凝った演出で、さぞかしリハーサルも大変だったかと想像できるのですが、これがコーラスの人達も含めて登場する人達のチームワークが良く、歌手の人達それぞれの細かな演技や歌は複雑な内面まで表現する素晴らしさでした。
 フォレのザックスはワーグナーが乗り移ったのかと思うほど。
 普通とは異なる複雑な演技を要求されるベックメッサーも自然体で活き活きとこなしてしまうのがクレンツレの上手さ。
 ヴァルターのフォークトはトゥルクで超サイヤ人、もとい、パルジファルを歌った疲れも見せず好演。ただカーテンコールで他の人達は何回も出てきたのに一度きりだったのはやはりお疲れぎみだったかもしれません。
 バーデンバーデンの『ラインの黄金』で譜面を見ながらローゲを歌っていたベーレは水を得た魚のごとく、ダフィットが完璧なハマリ役でした。


 このチケットを取るにあたり、発売初日にアクセスして45分ほどで入れたのですが、すでに『マイスタージンガー』だけはこの日を含めてほとんど売り切れ状態でした。しばらく粘っていると戻ってきたのでなんとか入手できましたが、来年もこの演目は入手困難であることは避けられそうにありません。




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