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皇帝ティートの慈悲・・・Drottningholms Slottsteater ・・・2013/8/19 [オペラ]

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  ドロットニングホルム宮殿
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 世界遺産であるドロットニングホルム宮廷劇場は一度は訪れたいと思いながらも公演数が少なく機会がありませんでしたが、7月末にスカラで『仮面舞踏会』を聴くと・・・
いつ行くの?今でしょう!と後押しされたごとく行く気になったのでした。

 『仮面舞踏会』のモデルとなったグスタフ3世のお気に入りだったこの劇場はグスタフ3世の母后ウルリカ王妃によって1766年に建設されました。
 公演の前日に下見を兼ねて観光に行ったのですが、内部は時間が決められたガイドツアーにより見学可能です。(英語ガイドあり)
建設当時は財政的に豊かではなかったため、木造建築で大理石模様の壁紙を張って豪華さをだしたとのこと、
オーディトリアムに隣接したホール(公演の幕間に飲み物などを提供する場所)のみ改修が行われてますが、他は全て建設当時のまま保存されているそうです。
舞台は奥行が広く、床は観客席側に向かって緩やかなスロープ上になっていて、床はダンスやバレエシーンでも滑ることなく踊りやすいように少し波打ってます。
400席ほどの観客席は階段状にベンチシートが並んでいるもので、縦に長いのですが、小さな劇場なので、一番後ろでも充分に楽しめるでしょう。
ただし最後方数列は壁にデコレーションがなく、白塗りされているだけ・・・・
これももちろん建設当時からで、宮殿の使用人も一緒に楽しめる庶民席だったそうです。
舞台セットは横にスライドする仕掛けが幾重にも施されてますが、仕掛けがある地下や舞台裏は見学ツアーでは見せてもらえませんでした。
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 ドロットニングホルム宮廷劇場
Conductor • Mark Tatlow
Director • Sigrid T'Hooft
Costumes • Anna Ardelius

Titus • Richard Croft
Vitellia • Annemarie Kremer
Sextus • Katija Dragojevic
Annius • Luciana Mancini
Servilia • Elena Galitskaya
Publius • Markus Schwartz

The Drottningholm Theatre Orchestra
Members of the Swedish Radio Choir

 夜の公演だったのですが、前日下見を兼ねて見学に行った時に、公演前に食事ができる場所があるのかも確かめておきました。
インフォメーションのある場所に軽い食事も取れるレストランがあって、メニューは少ないのですが、夜の公演がある時は始まる30分前まで空いてます。

 30分前くらいに劇場周辺に行くと、モーツァルトの時代の衣装にカツラをつけた人達がウロウロ、現代とモーツァルトの時代が目の前で混在するかのようでした。

 オケのメンバーは指揮者も含めて全員モーツァルトのようなカツラと衣装。
奏でる古楽器の音色は素朴で優雅なり~~~~
建設当時の状態が保たれ、グスタフ3世やその当時の人々が聴いたであろう音を聴けるのは貴重な体験。
指揮者のタトローはこの劇場専属のようで、自らチェンバロを奏でながらの指揮。
演奏は当時を忠実に再現するがごとく優雅なり~~~~

 客席の照明はロウソク型の電球のついたシャンデリアと壁面にある照明だけでうす暗く、公演が始まってもその明かりが消えることはなく、ロウソクのような揺らめきはないものの、十分に当時の雰囲気は伝わってきて優雅なり~~~

 麩のように横にスライドする紙芝居様式のセットは、勢いよく2本の柱が両サイドから出てきてピタっと止まると勢いでプルプル・・・プルルン!と身震いするのがご愛嬌。
豪華な衣装を身につけた歌手さんたちは身振り手振り、一つ一つの動作が大げさにポーズを取るように演技するので、まるでお人形のよう。
マリオネット劇場のような、おっとりとおおらかな愛らしさで溢れていて、優雅なり~~~~。

 以前ガルニエで観た『イポリトとアリシ』でブログ仲間の方から当時の様式を再現する公演Historically Informed Performance(HIP)について教えていただきましたが、この公演も正にそういった公演で、演出家のSigrid T'HooftはHIPの専門家です。
この公演は『イポリトとアリシ』のように上から人物が吊り下げられて登場したり、下からのせり上がりもないので、更に素朴な印象でした。

 ただ2幕途中でちょっとしたアクシデントあり・・・・
途中で突然背広姿の人が舞台に現れて
!”#$%&’(@:*?・・・・・・(’◇’)
スウェーデン語のみで何かを言い、舞台にいるティート役のクロフトの方へ向かうと・・・
クロフトは豆鉄砲をくらった鳩の表情で固まってジーーーっとその人を見てましたが、さもありなん。
スウェーデン語だけではチンプンカンプン。

 となりの人に尋ねたところ、「私も最初冗談かと思ったのだけど、メカニカルトラブルですって。TV収録をやっているせいかもしれないわ」
確かにTV収録の関係かと思われたのは、再開されると2幕冒頭からやり直したこと。
公演が始まる前に、タイトルロールのクロフトが調子が悪いが歌うというアナウンスがあったのですが、このアクシデントはクロフトにとっては少々辛い状況になってしまったかもしれません。
それでもベテランですから、万全ではなかったものの無難に仕上げて立派な皇帝でした。

 歌手で目立っていたのは二人のメゾ
セスト役、地元スウェーデン出身のドラゴジェヴィッチは背が高く舞台榮えする人です。
清楚でリリカルな声で丁寧に歌っているのが聴いていて心地よく、来年はアン・デア・ウィーンでアーノンクール先生、スカラでバレンボイム先生のもと、コジでドラベッラを歌うということで楽しみです。
そしてドラゴジェヴィッチのスケジュールを見て気づいたのが・・・・
バッちゃんの勇み足に終わってしまったスカラのフィガロでケルビーノを歌っていたのでした(゚o゚;
あの公演は歌手さんたち全員身動き取れないドングリのようになってしまったので、残念ながら印象に残ってませんm(__)m
一方のアンニオ役のマンチーニは愛嬌のあるスピントがかった声で、姿も小柄で可愛らしい雰囲気。
セストとの声質の違いが互に引き立て合っていたのですが、登場するとその愛らしい雰囲気が公演のスパイス的存在でした。

 観客は地元の人達も少なくないようですが、当然ながら[猫]のような観光客もいるわけで・・・・
特に後方の庶民席はツアーやホテルを通して販売される席で、中断したときはスウェーデン語の説明だけだったこともあって何がなんだか分からなかったのでしょう。
中断が5分ほどすると、早く始めろとばかり手拍子が始まってしまいました。
オケは音合わせをしなくてはいけないので、オケのメンバーが静かにするよう促すことで手拍子は収まったのですが、この庶民席の手拍子連中は最後の演奏が続いたままの舞台替えでもやらかしてくれて、幕に反応して拍手・・・・
幸い比較的早く幕が上がったので良かったとはいえ、
さらにカーテンコールでやらかしてくれて・・・・・口笛ピーピー
演奏無視の拍手もピーピーも明らかに後方数列の庶民席だけ。
当時の宮廷の使用人の人達はピーピーはやらなかったでしょう。

 かくして全面的に優雅なり~~~~とはいきませんでしたが、
当時の雰囲気を楽しめる劇場として、また来たくなるところでした。

 夜の公演でストックホルムの市内まで帰るのに不安がありましたが、終了後は中央駅までの専用バスがあるというのでそれを利用して帰りました。

 それにしても・・・
その土地の習慣や場所の雰囲気にはお構いなしで自分たちの流儀を通してしまうのは、なんなのでしょう???
団体になってしまうと周りが見えなくなってしまいがちではあるのでしょうが・・・・・( 」´0`)」

 尚、ドロットニングホルム劇場のチケットはネット購入できるのはスウェーデン国内のクレジットのみ。
海外からの購入はeメールを送らなくてはいけません。
今回この返事が遅く、ホテルに取ってもらおうと連絡したところ値段は300SEKという返信がありました。
その直後、劇場から返信がきて、650SEKと435SEKの席があるけどどちらがよいかという問い合わせがあったのです。
結局なるべく前の方で観たかったので650SEKの席にしたのですが、このやりとりで300SEKの席は観光客用に販売されるということが分かったのでした。


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ゆみゆみ


御無沙汰致しております。
久しぶりに拝見しましたら、何とマッチャンのお国へいらしたのですね^^。
私が参りました数年前も9月1日なのに一桁の気温で震え上がりました。
あの町は、マッチャンのように大きな人が歩くようにできているのか、とても広く感じられませんでしたか?
私は足が疲れて、歩いても歩いても目的地に着かないという印象しか残っていません。
残念ながら私が行ったのはラジオ局のホールでしたので、この劇場へはいけませんでした。
マッチャンに出て欲しいと思うのですが、お話を伺う限り、雰囲気が合わないですね・・・。
ついでにこちらで書かせていただきますが、イソコスキーをお聞きになられたとか。羨ましい限りです。
私は彼女が大好きです。メトの「ドンジョ」で、マッチャンとの競演があるはずでしたが、キャンセルされてしまいました。
マッチャンとは雰囲気が合わないので嫌われたかな?と思っています^^。
最近は名前を殆どお見かけしなかったので案じていました。良かったです。
あの綺麗な声が健在なのですね。

昨日「ファルスタッフ」に行ってきました。金曜日だからでしょうか?
空席が目立ちました。感想を拝見するのを楽しみにしています。
by ゆみゆみ (2013-09-07 22:07) 

kametaro07

ゆみゆみさま
>マッチャンのお国
はい。
初めてだったのですが、もう少しこざっぱりした街かと想像していたのですが、結構ゴチャゴチャとしたところだという印象です。
もっとも便利な場所ということで駅近辺のホテルにしてしまったせいもあります。
それほどゆっくりとした滞在ではなかったためか、広いという印象は持ちませんでした。

劇場のH/Pによると、マッちゃんは昨年ここでモーツァルトを歌ったそうなので、いらっしゃったのかと思ってました。
http://www.dtm.se/program/petermattei
地元なので、オペラ公演は難しくてもリサイタルなどは今後もあるかもしれませんよ。

イソコスキは可憐な声で素敵ですねー。
でも、もう超ベテランということで、公演を選ばないと調子を整えるのも難しくなりつつあるのかも?

by kametaro07 (2013-09-07 23:22) 

hbrmrs

世界で一番歴史を感じさせてくれる劇場ですねー。
いわゆるロココ風の典雅さというよりは、幽玄的な雰囲気です。

私も行ったのですが、残念ながらオペラが見られず(やってなくて)、ラモーのバレエでした。雰囲気だけ味わったという感じです。モーツァルトのオペラを見られたなんて、超羨ましいです。

劇場の隣の宮殿もご見学されましたか?

ところで、ここまでどうやって行かれました?
私は電車とバスを乗り継いで行きましたが、船で行く方法もあるみたいで、それはそれで面白そうです。
by hbrmrs (2013-09-08 08:36) 

レイネ

まあ、なんと羨ましいこと!憧れのドロットニングホルムで、バロック・ジェスチャーの大家シグリッド・トホーフト女史によるHIP演出のモーツァルトとは!さぞかし、ロココの雰囲気満点だったことでしょう。
しかも、アンヌマリー・クレーマーも出演してたのですね!オランダ人ソプラノで、割と好きなタイプなので応援してるんです。それにしても彼女はわたしが知ってるだけでも、アグリッピーナからサロメ、ルサルカ、連帯の娘のマリーと幅広いレパートリーを持ってますが、ヴィテリアも歌うのね。
ただ、マンチーニのアンニオ役が可愛らしかったと伺っても、どうもピンときません。kametaroさんもご覧になったと思うウィーンの『セルセ』でアマストレ役だったときの印象と、ラルペッジャータの南米ものCDやコンサートツアーに参加している彼女の声が非常に独特で、ふてぶてしさを感じさせるほど力が入って泥臭いほど民謡的な歌い方が苦手なせいもあって。彼女も役どころが広いということですね。
by レイネ (2013-09-08 09:06) 

kametaro07

hbrmrs さま
 前日に下見を兼ねて行ったときに宮殿や庭園、中国離宮なども見学しましたが、このときは往復とも船を利用して、公演の日は電車とバスで行きました。
船は1時間程かかるので電車とバスの方が早いですが、船からならではの角度で宮殿を臨むのもよいものです。

by kametaro07 (2013-09-08 19:04) 

kametaro07

レイネさま
 T'Hooftはトホーフトと読むのですね。
もしかすると昔の演出の資料が残っていて、その演出を使っているのかと思ってネットで調べてみたのです。
バロック・ジェスチャーの大家で有名な方だとは知らずに観たのですが、行ってよかったです。
なんだか癖になりそうなくらい気に入ってしまいました。

>アンヌマリー・クレーマー
彼女もちょっと気の強いヴィテリアといった雰囲気で好演してました。
随分いろいろな役を歌うのですね。

>マンチーニ
私がウィーンで観たのは『湖上の美人』で『セルセ』は観たことがないのです。
私は初めて聴く人だと思いますが、ロココの雰囲気に溢れていたからでしょうか?ふてぶてしさとか泥臭さといった面はなかったです。
可愛らしさは愛嬌といった方がよいかもしれません。
ただ垢抜けない感じはなきにしもあらず・・・でした。

TV収録していたので、そのうち放映されるのではないでしょうか?

by kametaro07 (2013-09-08 19:55) 

galahad

わー、すてきなティト見てらしたんですね! 私はドラゴジェヴィッチが好きです。彼女のセスト見てみたい〜。でもツェルリーナ、ケルビーノ、ドラベッラ、セスト…、モーツァルトばっかりだ。
2幕やり直しって、出演者たいへんでしたね。
by galahad (2013-09-08 20:19) 

レイネ

コメントが上手く送信できなかったので、もう一度トライ。

トホーフト女史の演出ですから、初演当時の台本やト書き、舞台衣装その他の資料を収集・分析して作り出したものであることは間違いないと思います。
そして、ストックホルム大学では、この夏「皇帝ティトーとモーツアルトの美学」と題した学会が開かれてたんですね!ああ、参加したかった!

3年前の夏、ユトレヒト古楽祭で、バロック・ジェスチャーに関するシンポジウムが開かれ、初日だけ参加したんですが、トホーフト女史のレクチャーが断然面白かったです。実際に女史が担当したHIP演出のことを事細かに語ってくれて。
↓にその記事リンク張ります。
http://didoregina.exblog.jp/15035119/

>なんだか癖になりそうなくらい気に入ってしまいました。

こういう演出、ハマる人ははまっちゃうんですよね。どんどん別の作品も観たくなる。同好の士が増えてうれしいです。
2006年ザルツブルク音楽祭でのモーツアルト『アポロとヒュアキント』(ジョン・デュー演出)やヘンゲルブルック演出の『牧人の王』も、HIPっぽくて楽しい舞台です。

>TV収録していたので、そのうち放映されるのではないでしょうか?

そうなることを祈ります。でも、目を光らせてないと見逃しちゃうんですよね、こういうマイナーなのの放映は。


by レイネ (2013-09-08 20:39) 

kametaro07

galahadさま
 素敵でした。
2幕最初から始めたのは少々驚きましたが、まるでビデオを再生しているように舞台が進んでいったのはさすがでしたし、一部分でも2回楽しめたのは得したかも・・・です。

by kametaro07 (2013-09-10 19:52) 

kametaro07

レイネさま
リンクありがとうございます。
あとでゆっくり拝読させていただきます。

>この夏「皇帝ティトーとモーツアルトの美学」と題した学会
これはまさにこのドロットニングホルムの演出に向けた研究成果の発表のようですね。
ここでも毎年今回のようなHIPとはかぎらないのでしょうか?
そう思うと、改めて良いときに見に行ったものだと我ながら勘のよさに自己満足してしまいます。

スウェーデンは物価が高いので(公演のチケット代はリーズナブルだと思うのですが)毎年というのは無理そうですが、チェックは怠らないようにしたいと思います。
欧州内は他にも小規模で趣のある劇場がありそうですから、そういったところで積極的にHIPをやってほしいものです。

by kametaro07 (2013-09-10 20:09) 

レイネ

来年2月のヘンデル・フェスティヴァル@カールスルーエでは、ヘンデルの『リッカルド・プリモ』(リチャード1世)がベンジャマン・ラザール演出で、バロックの雰囲気満点の本物の蝋燭による照明で上演されます。乞うご期待!バロック・オペラおよびCTファン期待の若手実力派フランコ・ファジョーリが主演です!遠征日程に加えられますよう。
http://www.staatstheater.karlsruhe.de/aktuell/news_id/17/

by レイネ (2013-09-13 18:11) 

kametaro07

レイネさま
情報ありがとうございます。
蝋燭で上演できる場所は限られますし、滅多にない機会でぜひとも行きたいところですが、2月は残念ながら無理なのです。
カールスルーエの『ラダミスト』は再演があったのでは?
『リッカルド・プリモ』も再演を期待したいところです。

ファジョーリ他CT勢揃いの『アルタセルセ』@ヴェルサイユと同時期にやる『プラテー』@パリコミックに興味津々で、この頃の方がなんとかなるかもしれないのですが、それもどうなるか???です。

by kametaro07 (2013-09-13 22:00) 

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