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タンホイザー・・・Opernhaus Zurich・・・2011/2/17 [オペラ]

タンホイザー.jpg
ムフ、ザイフェルト、メッツマッハー、シュテンメ、フォレ、カサロヴァ

Conductor Ingo Metzmacher
Producer/production Harry Kupfer
Set design Hans Schavernoch
Costumes Yan Tax
Lighting Jürgen Hoffmann
Video design Timo Schlüssel

Alfred Muff (Hermann, Landgraf von Thüringen), Robert Dean Smith (Tannhäuser), Michael Volle (Wolfram von Eschenbach), Christoph Strehl (Walther von der Vogelweide), Valeriy Murga (Biterolf), Michael Laurenz (Heinrich der Schreiber), Reinhard Mayr (Reinmar von Zweter); Nina Stemme (Elisabeth, Nichte des Landgrafen), Vesselina Kasarova (Venus), Camille Butcher (Ein junger Hirt)

暴走・・・・。

今回の旅行はグルベローヴァとデヴィーアが「アンナ・ボレーナ」をダブルキャストで歌うということでバルセロナまで行く決心をしたので、最初はこの公演を観ずにバルセロナへ行こうと思ってました。
ザイフェルトにフォレというだけで聴き応えがあり、カサロヴァがワグナーの主要キャストを初めて歌うのが興味深いところではありましたが、冬場で交通の乱れの可能性があることを考えると、次の日バルセロナまで行けなかったら本末転倒になってしまいます。

しかし、デヴィーアが降板してしまって、せっかく行くのに何かもうひとつ見ないと気がすまなくなってしまい、おまけによくよくキャストを見たら・・・・シュテンメ!・・・観るしかないでしょ。

ということで天気は大丈夫に違いないと楽観的に考え・・・・
幸い何事もなく観てきました。

指揮はザルツの「ディオニュソス」を振ったメッツマッハー。
現代音楽で評価の高い人ですが、ワグナーも良かったです。
テンポの変化、強弱、緩急を巧みに使い分け、劇的に導きました。
しかし、あ~~~あ、不覚にも3幕になってから意識がもったいなくも飛び飛びになってしまった~~~~^^;
日本から到着してすぐオペラハウスに来たのですが、飛行機の中ではウトウトした程度。
着いた日に5時間の公演はキツイ・・・
でも厚みのあるコーラスと重なって、ゆっくりと豊かに広がる救済のラストシーンは感動的でした。

演出は現代的、セットに扉が並んだ白いプラスティックパネルが使用され、場面ごとに回転して形を変えたり、映像が映し出されたりします。
一幕のヴェーヌスベルクの場は退廃の極み、ダンサー達の衣装も踊りもかなりエロティック。
背後には聖職者達が何人かいて最初は立っているだけなのですが、そのうちダンサー達の間に他の男達同様に寄り添ってしまいます。
最初はこの後の展開にも不安を覚えましたが、ヴェールブルグ脱出後は時代が現代に置き換えられただけで話の内容は置き換えられてないので、安心して観ていられました。
タンホイザー2.JPG

セットに使用されたパネルが背後に写ってます。
透明にみえますが、ライトの加減でしょうか?
実際には白く濁った半透明のパネルでした。




ワグナーの主要な役を初めて歌うとカサロヴァのオフィシャル・サイトに書いてあったのですが、やはりベルカントやバロックで活躍してきた人ですから、ワグナー?違うんじゃない?と思うのは当然でしょう。
あくまで個人的な感想ですが、実際に聴いてみるとそれほどの違和感はありません。
一幕はヴェーヌスが不調だとどうしようもなくなってしまいますが、魔女のようにタンホイザーにからんでいく声は迫力のある響きで、ザイフェルトとの掛け合いは緊張感のあるものでした。
カサロヴァのチェネレントラを新国で聴いたときに、高度なコロラトゥーラを要求されるところではとてもゆっくり歌っていたことを思い出したのですが、その後はそういったレパートリーは歌ってないようです。
もしかすると、カサロヴァ自身コロラトゥーラが上手く回らなくなったと感じていて、レパートリーを変えていこうという意図で、今回ワグナーへ一歩踏み出してみたというところかもしれません。

休憩中に上品なご年配のマダムが一人でいらっしゃったので、カサロヴァのディクション等について伺ってみると・・・
マダム「悪くはないけど・・・なんと言っていいか・・・ちょっと慣れてないようなところはあるのよね。ワグナーが合うかどうかはなんとも言えないところね。」
[猫]「今回は男性はみんなネイティヴですけど、女性は違いますよね。」
マダム「シュテンメはもう長いことチューリッヒに住んでいるから全く問題ないのよ。彼女は真のワグナー歌手だわ。そう思わない?」
[猫]「ハイ。ミラノのワルキューレでも聴きましたけど、それはそれは素晴らしかったです。」
マダム「あの公演はテノールがあまり良くなかったんじゃない?」
[猫]「ニュージーランド人のサイモン・オニールでしたが、私は悪くなかったと思いました。私にはディクションの良し悪しはよく分かりませんし・・・・。」
マダム「ディクションについてはね。おそらくフランス人がもっとも不得意だと思うの。フランス人のワグナー歌手なんて聞いたことないもの。」
そういえばそうですが・・・^^;
やはりネイティヴの人達にはドイツ語のディクションの良し悪しはワグナー歌手としての良し悪しの大きな要因なのでしょう。
カサロヴァが今後ワグナーを増やしていくかどうかはご本人しだいですが、今回のヴェーヌスがOKでも他の役というのはまだ考えにくいところです。

他の主要登場人物については言うことなしの素晴らしさで、3幕が意識トビトビになってしまったのもユッタリと流れる音楽の中、皆破綻なく歌い上げるので気持ちよくなってきてしまったのも原因かと^^;
ふと気づくとヴェーヌスがまた舞台にいる・・・エリザベートが死んじゃった・・・・いつのまにかタンホイザーが横になっている・・・知らない間にタンホイザーがガラスケースに収まってました・・・というトビトビ状態^^;

ザイフェルトは悩める流離いのギタリスト。
タンホイザーはいつもエレキギターを片手に放浪するのですが、大柄なザイフェルトが持っていると、なんだかおもちゃを持っているようで妙にかわいい・・・。
タンホイザーなんてただのダメ男ってところではあるのですが、大柄で演技がちょっと不器用に見えるザイフェルトはダメ男タンホイザーにピッタリ^^;
リンデンでのトリスタン同様、内面の葛藤、苦悩を朗々と歌わせたら右にでるものなしかもしれませんね。
好調でご本人も納得の出来だったのでしょう。
最後はカーテンコールでは大ブラヴォーを受け、その他大勢の人達の間に入って皆と握手してまわり、ご機嫌でした。
3幕意識がトビトビだったのがなんとも悔しい・・・・。

シュテンメも好調で、タンホイザーへの一途で純粋な思い、せつなさが溢れて素敵です。
3幕、背後のパネルには駅の構内が映し出され、トレンチコートに身を包み、ベンチで座りながらタンホイザーの帰りを待つ。
列車の到着をしめすように人々が背後のパネルのたくさんの扉からでてきます。
タンホイザーの姿を必死で探すエリザベートの姿がなんとも物悲しい・・・・。
シュテンメが歌う場面は全部意識があってよかった^^。

オペラ界のジャック・ニコルソンだと思っているフォレですが、今まで2回、ドン・ジョヴァンニと「ルル」のシェーン博士で聴いたことがあり、ちょっと癖がある個性の強い役柄でとても上手いという印象でした。
今回は友を案じるとっても良い人。
エリザベートへの思いが伝わる3幕の歌声は素晴らしく、役柄が変わっても人を魅了します。
3幕もこのあたりまでは覚えてるんですけど、その後のタンホイザーとのやりとりあたりから意識が・・・トビ・・・トビ・・・・ワシ・・・タカ・・・・ハト・・・・めちゃくちゃ飛びまくり・・・。

最近ウィリアム・テルのジェスレル役とバラの騎士のオックス男爵役で聴いたムフも堅実な出来。
この人も役柄に合わせて別人になる人です。
ここチューリッヒを主な活躍の場としている人なので、観客からの指示も厚く、カーテンコールではブラヴォー。

カサロヴァも同じくらいブラヴォーです。

シュテンメ、ザイフェルト、フォレには大変なブラヴォーの嵐。

指揮のメッツマッハーにももちろんブラヴォーで活気に満ちたカーテンコールとなりました。

これは今年一、ニをを争う良い公演じゃないか?
意識が飛んだのがなんとも・・・・トホホ

しかし、この後またまた素晴らしい公演と遭遇することとなってしまって、この公演の印象が薄れてしまったような・・・・
オペラ旅行はなるべく良い公演をたくさん観たいと思って計画してしまいます。
観たほうが観ないより良いにきまってますが、もっと時間を開けたほうがもっと余韻を楽しめるのに・・・・仕方なしかな・・・・ 。                                                                           
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コメント 6

galahad

おかえりなさい! さっそくレポありがとうございます。
「タンホイザー」ザイフェルトが絶好調だったようでよかったです。 ご本人が喜ぶくらいなんてめったにないことですよ~。
カサロヴァのヴェーヌスなどという珍しい体験もうらやましい!
ちょっと意識がとんじゃったのは残念でしたね。 着いた日に鑑賞予定を入れるのはいろいろ(飛行機到着遅延とか寝ちゃうとか)考えると勇気が要ることです…。

by galahad (2011-02-24 21:51) 

kametaro07

galahadさま
写真でもお分かりいただけるように出演者全員がご機嫌だったのですが、特にザイフェルトは後ろにいるコーラスの人たちの中に自ら入っていって握手を求めてましたから、かなり満足だったのでしょう。
>着いた日に鑑賞予定を入れるのは・・・・
そうなんですよね。
今回は前の日に出発できなかったのですが、なるべく避けた方が良いですね。
by kametaro07 (2011-02-24 23:46) 

ゆみゆみ

お帰りなさいませ。雪何ともなかったですか?良かったです。
バルセロナが凄く良かったのですね?!
コメント楽しみにしています。
何故海外か?と自問自答いたします。
日本でも良い公演に巡り会えるのですが、多くの公演が海外でも有り
自分が好きな歌い手さんでその公演に参加できた時の感激は言葉にならないものがありますね。
でも、カメタロウさんは今年はウッシッシ・・・。
居ながらにして、感激できる  ご予定ですもの^^。

お帰りになって早々ですが、各オペラハウスの新しいシーズン
のチェックよろしくお願いいたしますね^^。
by ゆみゆみ (2011-02-25 16:10) 

kametaro07

ゆみゆみさま
>バルセロナが凄く良かったのですね?!
はい^^。
雪には全くご縁なく、チューリッヒは寒かったですが、バルセロナはそれ程でもなかったので楽でした。

>各オペラハウスの新しいシーズン
私は行きたくなると困るのであまり見ないようにしたいと思ってましたが・・・・
やはりチェックすると思います。
ところでガランチャはバーデンバーデンのドンジョから降りてしまったそうです。
スカラのオープニングのドンジョは歌うと良いのですが・・・
ちょっと不安なニュースでスミマセン。
by kametaro07 (2011-02-25 19:18) 

ゆみゆみ

少々の事では驚かない^^。私でスゥ。
ガランチャとは本当に縁の無い私ですから、あり得るかもしれません。
マッチャンさえでてくれれば、もうなんでも宜しゅうござんす!
by ゆみゆみ (2011-02-27 20:26) 

kametaro07

ゆみゆみさま
そうでした。
マッちゃんだけ要注意!
ラジャー。

by kametaro07 (2011-02-27 22:15) 

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