セビリアの理髪師

IL BARBIERE DI SIVIGLIA / Gioachino Rossini

conductor: Maurizio Benini
Production: Bartlett Sher
Figaro: Peter Mattei
Almaviva: Juan Diego Flórez
Rosina: Joyce DiDonato
Bartolo: John Del Carlo
Basilio: John Relyea

METライブビューイングのアンコール上映ももうすぐ終わり。
４演目セット券を購入したのですが、最後に選んだのはＭＥＴ　ＰＬＡＹＥＲで既に見た「セビリアの理髪師」。
どうしても大画面で見たかったのです。

「セビリアの理髪師」は今年７月にロンドンで素晴らしい公演http://kametaro07.blog.so-net.ne.jp/2009-07-13を鑑賞することができましたが、こちらは３年前の公演。

演出はさすがに大きなMET使用、オーケストラボックスの前方周囲にも舞台を作り、動きのある楽しいものです。
登場人物の個性もより強調され、ロンドンの演出より出演者達の演技も大振りです。

その為、全体の印象として比較するとロンドンはかわいらしく軽快、METはおおらかで大袈裟なおもしろさがあります。

フローレスはロンドンの演出に比べるとずっと楽しそうに演技をしているように見え、カツラがはずれるというアクシデントもさりげなく笑いに変えてます。
ただ動きが少ない分、歌唱はロンドンの方がゆるぎないものだったような気がします。これは３年たってさらに歌唱に磨きがかかったということもあるかもしれません。
最後のアリアの後のブラボーと拍手はこのMETでも長いものですが、ロンドンではこの倍ぐらい続いたような？
もしかするとこのライブビューイングは短く編集してるかもしれませんが・・・・？

ディドナートの歌唱技術はこのライブビューイングでも素晴らしさが伝わりますが、ロンドンで聴いた時の方がまろやかでこちらも更に磨きがかかったという印象が残っています。
それにロンドンの黄緑色のワンピースとリボンがついたショッキングピンクのハイヒール姿の方が似合っていてカワイイ！！！
でもこのハイヒールのせいで転んで骨折するというアクシデントになってしまったので、衣装さんには今後ハイヒールには滑り止めを靴裏にしっかり張っておくようお願いしたいものです。

フィガロはロンドンのスパニョーリが自然な軽快さでスマートな印象だったのに比べると、マッちゃん（マッテイ）はライブビューイングの中でも司会者が言ってましたが、強くセクシー、豪快でおおらかです。
やっぱりマッちゃんは実際に聴きたい！！！
全体のおおらかな印象もマッちゃんとバルトロ役のデル・カルロ、この２人の大柄な登場人物の印象から来るということもあると思います。
「マクベス」で大柄だと思っていたルチッチよりレリエーの方が大きくて驚いたのですが、マッちゃんとデル・カルロはさらに大きい！！！こうなるとフローレスって相当小柄なの？ということになってしまいますが、それでも１７０ｃｍ以上はあるという記憶がありますが・・・・？

バルトロ役のデル・カルロ、大きな体で汗だくの名演です。
歌唱がもしかして一杯一杯？と思った部分もありましたが、それもご愛嬌。
ロンドンの小柄でちょっと姑息な感じがしたコルベリのバルトロも味がありましたが、大柄でどこかマヌケな感じのバルトロも憎めず、イイ味があります。

バジリオ役のレリエー、METライブビューイングの常連ですね。
ロンドンのフルラネットはその恐おもしろさ！最高！のバジリオ・フランケンシュタイン・ヴァージョンでしたから、この大御所と比べてはいけないでしょう。
レリエーも充分に存在感のある歌唱で、怪しく、トボケていてイイカゲンなバジリオです。

無言の召使いの演技もこの演出のスパイスです。

ベニーニ指揮の演奏、このおおらかさを感じる演出に合っていて、なおかつロッシーニの軽快さを損なうものではなく良かったと思います。
同じＭＥＴライブビューイングのチェネレントラもベニーニ指揮でしたが、このちょっとおおらかさを感じるようなロッシーニはベニーニお得意でしょうか？

またまた比べながらの感想となってしまいましたが、どっちも素晴らしい公演に間違いはありません。
ただ演出は劇場の規模もあって、ＭＥＴの方が見ごたえあるものだと思いました。

コメント 23

初めまして！三郎と申します。

私は大学でオペラを含め様々な舞台芸術について学んでおり、現在は世界初のオペラ体操を広めるべく札幌で活動しています。
オペラの記事が沢山あって大変感心したと同時に勉強になりました！
by 三郎 (2009-10-06 23:51) 

トウトウご覧いただけましたか？
ディドナート：【ロンドンで聴いた時の方がまろやか】推測ですが、マッチャンやフロ様の勢い（単なる歌ののりだけでなく全てにおいて）につられ、こんなのもアリかな？では無いでしょうか？私は、シカゴで彼女を見ています。本当はフロ様のはずでしたが、キャンセル。次の方も風邪でダウン。大学院生のような若いお兄さんが歌う事になりました。このときの彼女は、年上の女性らしく、若くて可愛い彼を思う感じをよく出していました。
彼女はこういうところまで、気配りできる歌手だと関心。

マッチャンが豪快で大らか。本当にそんな感じです。スウェーデンという広大な土地育ちだからでしょうか？でも、歌唱に関しては、案外言葉に反応した抑揚が付いて、その両方でハッ・オッとさせられ、いつの間にやら虜に。
カルロさんに、マッチャンが引っ張られる所は、何度見ても笑えます。

カルロさんは、「マイスタージンガー」に出たり「こうもり」で来日も。
本当に良い人オーラがいっぱいです。

この、ビューイングのメンバーは、全員が、力があるのに真面目で且つあわせようとする意識が強いのかな？だから、同じ方向を向いてこのオペラを作ったという感じがいたします。
私が見た２３日は連休にも拘らず、ガラガラ。周りに迷惑がかからないので
ゲラゲラ笑えました。
気分はすっきりです。
by ゆみゆみ (2009-10-07 13:24) 

三郎さま
はじめまして。
私はただのオペラ好きでド・シロウトです。
＞勉強になりました！
なんて言われると恐縮してしまいます。
トンチンカンなところもありますから、お気付きのことがありましたらドシドシご指摘下さい。
よろしくお願いします！
by kametaro07 (2009-10-07 15:13) 

ゆみゆみさま
＞シカゴで彼女を見ています。
これってフロ様、魚の骨事件ですね。喉に魚の骨が刺さって全公演キャンセルになってしまったのでしたね。代わりがジョン・オスボーンだったのが、彼も風邪で歌えなくなってしまったと聞いたことがあります。
＞彼女はこういうところまで、気配りできる歌手だと関心。
ロンドンでも骨折しながら最後まで舞台に出続けたのですから、周りに迷惑がかからないように気を配ったのでしょう。本当にエライ！！！
＞私が見た２３日は連休にも拘らず、ガラガラ
私は４日の３時でしたが、日曜のせいかアンコール上映で行った４日間のうち、一番人がいました。
次のマクベスも結構入っていく人がいました。
最後の駆け込みでしょう。
by kametaro07 (2009-10-07 15:31) 

自慢しますが（笑）、これ生で観ました。ニューヨークでは風邪をひいて熱を出し、とても体調が悪かったのですが、「死んでもいい」と思って行きました。これ以降にセビリアは封印しても良いと思ったほど、素晴らしかったです。実際、今回パリで丁度シラクーザの歌うセビリアがあったのですが、パスしました。他の演目だったら聴きに行ったと思います。（笑）
by alice (2009-10-07 21:18) 

アリーチェさん！！の仰るお気持ち私も良くわかります。
私は【秋版】　でした。【春版」をご覧になれたなんて、本当にお幸せです。
他のブログの方も仰っていますが、
フロ様の堅い声と歌唱が少し崩れて、そこにマッチャンの大崩れ、ディドナートのしゃっきり感。出過ぎず、甘すぎないレリエとカルロさん。
家政婦役の女性も私のときなど記憶の隅にも残っていません。【春版】の方は、存在感が◎。
これがみごとにMIXされて、本当に良くできた作品だな～。と思います。

実際にお聞きになって、レリエは如何でしたか？この場でお尋ねして申し訳ありません。話のついでに・・・。
カメタロウさんお許しを＾＾。
by ゆみゆみ (2009-10-08 12:53) 

aliceさま
実際にご覧になったらさぞかし素晴らしいと思います。
この公演なら多少体調が悪くても見に行く甲斐ありますね。
封印しても良いというお気持ちもわかりますが、今後も勝るとも劣らない公演もあるかもしれませんよ・・・ロンドンも良かったですから。

by kametaro07 (2009-10-08 22:48) 

ゆみゆみさま
私の許可をとる必要ありませんので、どうぞご遠慮なく＾＾

by kametaro07 (2009-10-08 22:51) 

ゆみゆみさん

お返事が遅れ、失礼しました。

レリエは7年前にパリでエスカミリオを聴いたのが初めてでした。プログラムには確か父上も低音の歌手だったと紹介されていました。
まだ、荒げずりなところはありましたが、将来は有望だなと思い、その後の成長を見守ってきたという訳です。

最近のメトでの活躍ぶりは嬉しい限りです。演技も大事なバジリオ役もばっちり！！これだけ楽しめるセヴィリアはなかなかないと思いました。

札幌のオペラ愛好会でもこのメトのセヴィリアは今まで見た中で最高！！の褒め言葉をいただきました。（＾＾）Ｖ
by alice (2009-10-11 16:21) 

パチパチ＾＾。でございます。
私もジョン様は、「マイスタージンガー」の時を告げる人で聞きました。
なんて凄い新人、と思ったら、その後ドンドン出てきて新人ではないのだと知りました。
レリエ（ジョン様）は今「フィガロ」を歌っています。ラジオでは周りが頼りなく聞こえます。

カメタロウさん！！昨日ウィーンからお便りが来ました。
1演目を除いて取れていました。駄目だったのは「夢遊病」です。でもご親切に1ヶ月前に売り出す席は空きがあるからお電話してくださいと書いてありました。ところが、座席位置が書かれていません。
どんな席が来るのでしょうね？

by ゆみゆみ (2009-10-11 18:13) 

ゆみゆみさま
ウィーンはご希望の席を書いてオーダーなさったのですよね。
書いてないということは希望通り取れているのではないでしょうか？
私は１ヶ月前ネットで席が指定できるようなシステムになってからしか購入したことがないんです。
全部で何公演ご覧になるのですか？夢遊病はデセイ、フローレスですね！！ＭＥＴの夢遊病は演出が？？？でしたがウィーンは良さそう・・・イイナーー。
by kametaro07 (2009-10-11 23:12) 

私は途中で「チェコ」へ行こうと思うので、6回でしょうか。
同行の方の1演目が取れませんでした。その方は私より10日ほど残られるので、物凄い数です。うらやまし～～～い！

気が付けばトリノ」の2演目セット券予約受付でした。
日程を見ましたら、来年の７・8月なのですね？
今朝からネットの前でウロウロ。
セットで購入しても、比較的お安いのですが、単券で買えばもっとお安い。でも今週の土曜日は、仕事が有るので出遅れるし・・・。
てな訳で、今も悩んでおります。カメタロウさんは如何されましたか？
by ゆみゆみ (2009-10-12 15:36) 

ゆみゆみさま
チェコにいらっしゃるのも素晴らしいじゃないですか。
行ったことないので羨ましいです。
長めのご旅行になるのですね。

トリノは来年７月ですよね。
カメタロウはそこまで先のことは全く分からず、安い単券狙いしかできません。
ゆみゆみさんは夢倶楽部会員でらっしゃるのですか？
私は会員でないので２５日にならないと購入できません。
by kametaro07 (2009-10-12 16:59) 

マドカキップさんの、「フィガロ」でお名前を拝見。こちらの何処で話題にしていただいたかわから無くなったので、今、書き込みさせていただきます。

ジョン様好きの私。録音して聞いています。
私が11月に聞く日にジョン様はお出ましではなくがっかりだったので、誰が出ても良いわいな～。と記憶もしていなかったのですが、状況がチト変わって参りました。 Ludovic Tézier ハンサムです。マドカキップさんはOropesa
を誉めていらした。何だか1日残って得した気分です。

ゆみゆみは、モーツアルトなら何度聞いても飽きません。
4月に「ドンジョ」を聞きにメトへ行った時は、興奮して朝5:00に目覚め公演のあとは寝付けないので、ほぼ丸1日、10日間にわたって「ドンジョ」を聞き続けました。ギネスに載りますかしら？

ハイ！！夢倶楽部会員でございます。枚数に制限が無ければ、遅い時間からの参戦でも、可能性は有るのですが。恐らく枚数制限がありますよね。
by ゆみゆみ (2009-10-12 18:10) 

ゆみゆみさま
テジエはハンサムなだけでなく実力のある有名な人です。
私はまだ聴いたことがなく、パリでテジエが出演するので「ウェルテル」をサブスクライブしたのです。行けるかわかりませんが・・・。
それに指揮はルイージですよね。１日残る甲斐があるというものです。
＞ギネスに載りますかしら？
ギネスは申請制度ですから・・・・申請してみます？？？
by kametaro07 (2009-10-12 20:21) 

カメタロウさんは、
LUIGI　ALVA　　ヘルマンプライ　　ベルガンザ　　をお聞きになった事がおありでしょうか？
お知り合いの方からこの3人の「セビリア」のCDをお借りしました。
「プライは、マッチャンに似ていないか」というのがテーマでお借りしました。

そういえば少し似ています。ALVA　　もフローレスに似ている気もいたします。だって、バリトンですし、テノールなのですから、似ているはずではあります。ヘルマンプライは、もう歌っていないのでしょうね？

ひょっとして、何処かで聞かれた事がおありでしたら、生の声はどのように聞こえるのかと興味を持ちました。
このCDは、アバドの指揮です。
音を聞く限り、スタジオ録音なのか演技しながら歌っているようではありません。テンポはゆっくりです。
逆に、メトの舞台では、マッチャン他皆さん方あのテンポで、動きながら良く歌ったな～と感動的になります。

時代の流れを表したCDと映像で、大変興味を持ちます。



by ゆみゆみ (2009-10-27 23:00) 

ゆみゆみさま
ベルガンザってこの前見た映画ライモンディの「ドン・ジョバンニ」でツェルリーナを歌っていた人ですよね。
アルバ、ブライ、ベルガンサ３人とも既に引退してるのではないでしょうか。
私もそこそこ長生きしてますからすごく若い時から興味を持っていれば聴く機会はあったかもしれませんが＾＾；・・・・残念ながら生で聴いたことはありません。
アバド指揮のこの「セビリアの理髪師」は映画ですよね。
そのうち再上映の機会があることを期待します。
by kametaro07 (2009-10-28 00:28) 

プライと聞いて、横入りしてよいでしょうか？
私はプライが好きでしたが、生まれたのが少々遅くてオペラを観る事はかないませんでした。晩年のリサイタルは何度か行っています。　マッテイと声の質がかなり似ていたと思います。　明るいハイバリトン。　役柄と録音された年代によってはマッテイが歌ってるんじゃないかと思うくらい似ているのもありますよ。（私が聴いてのことですので、アテにならないと思いますが）　あと、お茶目でおおらかなキャラがかぶってるような。
年をとってからのプライの声はマッテイよりやわらかく、あたたかかったです。　プライはもう亡くなって１１年たちます。　ベルガンサは数年前までリサイタルで来日してました。アルバは出身もフローレスと同じペルーですよね。　さすがに歌っていないと思いますが、ご健在のようです。ああ、なつかしい・・・。　どうも失礼いたしました。
by galahad (2009-10-28 21:23) 

galahadさま
横入りいつでもOKブログですからご遠慮なく＾＾。
プライは７０歳になる前に亡くなってしまったのですね。
galahadさんだけでなく、ゆみゆみさんのお知り合いの方も似ていると仰ってるようですから、やはり似ているのでしょう。
調べたらアルバは８２歳、ベルガンサは７４歳・・・さすがに引退してるでしょうね。

by kametaro07 (2009-10-29 00:23) 

プライが亡くなって11年もたつのですか？
チラシでプライの写真を何度も見た記憶が・・・。
リートを日本で歌われた事がありましたか。

今回私がお借りしたのはCDです。フィガロが「ら～～」と陰で歌って
登場するシーンなど「マッチャン？？」と思います。
でも、よくよく聞くとブレスの位置や舌の回りが違うのです。
ファンの方から、「似ている」といわれると光栄です。

先日カメタロウさんが教えてくださった映画だと思われる上映表を入手いたしました。
「フィガロ」では、プライ・ディースカウ・カナワ・フレーニ　　　ベーム指揮。
行くしかないと思える夢のような組み合わせです。
この時代の方の歌い方は、私が音楽を聴き始めた頃の音楽なので、本当に懐かしいと同時に、私にとっては落ち着く表現です。
でもテンポは、少し遅めです。

私自身長い時間を生きてきたんだ（少し大袈裟ですが）と感じさせられます。

by ゆみゆみ (2009-11-01 09:18) 

ゆみゆみさま
オペラ映画フェスティバル～モーツァルト四大オペラ～での上映の「フィガロ」ですね。「コシ」は見ようと思ってましたが、こちらも見ることにします。
アバド指揮の「セビリアの理髪師」は１９７２年制作の映画もあります。
やはりプライ、アルバ、ベルガンサですからこの映画からのＣＤかもしれませんね。
by kametaro07 (2009-11-02 22:11) 

プライはもちろん日本でもリートを歌ってくれましたよ。　プライのご子息もバリトン歌手で、来日したことがあるんですが私は聴いていません。　フロリアン・プライという方です。マッティと似ているかしら？
＞オペラ映画フェスティバルのフィガロ
懐かしい～！　ベームのフィガロ。　これすごく楽しいですよ、kametaroさんもぜひごらんになってね。
by galahad (2009-11-03 17:03) 

galahadさま
プライのご子息もマッちゃんに似てるのか？ちょっと気になりますが、今のところお父さんほど活躍の場は多くないようですね。
映画「フィガロ」見逃さないように気をつけます！
by kametaro07 (2009-11-03 21:15)